meal
俺は氷歌たちと一緒に高級焼き肉店に来ていた。
2人は見るからに常連みたいで、スタッフの対応がまぁ見事で、二人の事を熟知しているのかってぐらいに動きに無駄がなかった。
俺は二人の後を追っていくと、客で騒がしい場所に通される訳でもなく、聞いたところVIPのみにしか案内されないエレベーターに乗り、最上階へと案内され、そこにはとんでもない景色が待っていた。
「ほ、本当にこんなとこで焼き肉を食べるのかよ……」
「そうよ。 なに突っ立てるの? 早く座りなさい」
「迅人さん早く座って食べましょう」
「は、は、は……」
これが普通なのであろうか? あ、あぁ、これがSクラスなのであろうと心の底から思うしかなかった。
どんどん肉の他に中華や、洋風と様々な料理が来る。
どれも見るからに高そうな物ばかりだ。
「迅人」
「うん?」
俺が料理を見ていると氷歌が声をかけてきた。
「今日はお疲れ様。 あなたの戦いを見ていて多少危なっかしい所はあったけど、50人の中に食い込んだことを評価するわ」
「あ、ありがとうございます」
「今日の迅人さんすごかったですね。 逆に不思議に思ったこともありますけど」
「そうね……千癒は迅人がなぜ今になって出てきたのかが不思議に思うわよね」
「はい。 けれど、話し辛かったら結構ですので」
「いいわ。千癒には話とかないといけないわね。いつもお世話になっているし、迅人もこの先千癒に助けてもらうわけだから」
話がどんどん先へと進んでいる……俺だけを残して。
そもそも、この子は氷歌の友達かなんかだろうか?
氷歌がここまで信頼を寄せているのは凄い事だ……一体彼女は何者なん――
「迅人……千癒をジロジロと見過ぎ」
「あ、すいません」
「いいえ、大丈夫ですよ。今迅人さんが考えている事を思えば普通の事ですから」
「あ、へ? あ、いやすいません」
「千癒は私と同じSクラスハンターよ」
「ははは、そうですか。ははは、は、は……はぁ⁈」
俺はあまりのパワーワードに千癒さんを2度見する。
「そ、そんなに見られると恥ずかしいです」
「あ、すいません⁈」
「私と同じと言ったけど、もう1つ私と同じなのがあるの?」
「へ、残酷な性格でいらしゃるんですか?」
「あんた殺されたいわけ?」
「じょ、冗談であります」
やばい、気が動転していて本当の事を言ってしまった。
「今のは冗談ではなく素の言葉が出たでしょ」
「は、はぁ? そ、そんな事ないし⁈ それよりもさっきの話の続きを聞かせてください」
「……あんた後で覚えてなさいよ。 はぁ……千癒はね……」
「千癒さんは……?」
「私と同じ『帝』を持つ者よ」
俺は思考が一気に停止し……しかけたが、なんとか踏み止まった。
まぁ、さっき氷漬けにされていた夏乃子さんも炎帝だって聞かされていたし、氷歌の知り合いならもしかして千癒さんもすごい人なんじゃないかとも思っていたから、なんとか踏み止まれた。
「改めて自己紹介をさせていただきます。私は術勢 千癒と言います。『帝』は救帝をいただいております。よろしくお願いしますね、迅人さん」
「は、はい! よ、よろしくお願いします」
「千癒はまだ17歳になったばかりよ。手を出したら殺すわよ」
「手を出せねぇよ……怖すぎて」
「千癒は飛び級で高校・大学を15歳で卒業している子でね。とても賢い子なの」
「はあっ⁈ 15で⁈ マジかよ……俺は高校すら卒業してないっつーのに……」
「氷歌さんから聞きましたよ~迅人さんの事。5年間ゲート内で頑張っていたと」
俺は氷歌見ると、当初の予定通りに話す様、頷き合図をくれる。
「そ、そうなんですよ。 いや~俺って方向音痴な上に、ツイてないみたいで、モンスターから逃げている内に、奥へ奥へ行ってしまい、帰るに帰れなくなってしまって……」
「大変でしたね……でもそのおかげであれほど強くなって帰ってきたわけなんですね」
「い、いやぁ、俺なんかまだまだですよ~」
「そう、まだまだね。今日もいくつか危なっかしい所があったから、後で反省会をしないとね」
「は、はい……すいませんでした」
「そうかなぁ? でもまだ本気を出していないところを見たら、そう思うのも無理はないかなぁ? でも氷歌さんは厳しいけど、それほど言われていないから良い方だと思いますよ」
「そ、そうなのかな?」
「そうですよ。だって以前氷歌さんが指揮していた訓練生なんて、氷歌さんの怒涛の如く言われまくって自信を失いかけていましたから」
「仕方がないじゃない。本当にダメダメだったんだから」
「そうですねぇ……でも氷歌さんが指摘してくれたおかげで、何人者の優秀なハンターが誕生しているんですから、結果オーライですよね」
「そうよ。言われた事を糧にして進む子と、言われて腐る子とでは、生存率が全然違ってくる。それだけハンターの世界は甘くないって事。一つの判断ミスで自分、そして仲間を失うんだから、私の言葉なんてたかが知れてるわ」
時々思うが、氷歌は本当に俺と同い年なのか疑いたくなる時がある。
氷歌の言葉を聞き、確かにそうだと思う俺……あの時も俺の判断が間違っていたせいで始を危険な目に合わせてしまった。
この言葉は俺の心のページに書き込まれたのであった。
ドオ―――ン⁈
「氷歌ちゃん酷いよ―――! 氷漬けにしといて先に行っちゃうなんてぇ!!」
突如ドアが勢いよく開くと共に、入ってきたのは先ほど氷歌に氷漬けにされていた夏乃子さん。
うわぁ……マジで氷漬けにされていたのに生きていたよ……さすが炎帝だと俺は思った。




