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First day

『さぁ、選考会初日が終了しました。この選考会でハンターズ・ロアへの出場資格を得られるのは3名! この選考会に参加した人数は500名! もうすでに50名までしか残っておりません。聶さん、この選考会で様々なハンターが戦ってきました。その中でも目を見張るハンターはいらっしゃいましたでしょうか?』

「そうですね……まず――」





「ねぇねぇ! 氷歌ちゃんの推しの子ぉ、あんたまだ全然本気出してないでしょ~?」

「いや、そんな事ないんですけど」

「嘘仰いな! お姉さんには分かるよ~分かってるんだから~」

「はぁ……そうなんですか?」


お姉さん?

どう見ても中学生ぐらいにしか見えんが……


「今、私を見て小さいなとか思った?」

「え、えぇ、そんな事ないですよ~」


今ものすっごい殺気を感じたぞ⁈


「夏乃子ちゃんこう見えて二十歳なんですよ」


う、嘘だろ⁈ 俺と歳が変わらないじゃないか⁈


「こう見えてとはなんですかぁあ!」

「はしゃがないはしゃがない」

「むぅ……私はこれからが成長期なんだからね」

「分かってますって。 だから落ち着こうねぇ」

「は~い!」

「良い子ですねぇ~」

「あ、そうだそうだ! 自己紹介がまだだったね! あたしは夏乃子! 親しみを籠めてカノちゃんって呼んでもいいからね」

「私は千癒と言います」

「あ、あぁ、俺は市原 迅人と言います」


朝はてんてこ舞いだったのに、今はちゃんと手綱を引いている千癒さん。


俺はまたあの赤毛の女の子と茶色い髪の毛の女の子に絡まれていた。

いや、どちらかというと夏乃子さんという女の子だけかな?

千癒さんはなぜか保護者に近い雰囲気がする……会った時とは大違いだ。


話を聞いてみたら、選考会に出ているのはこの夏乃子さんだけらしく、千癒さんは夏乃子さんのお守だそうだ。

あ、ちなみに選考会1日目は終わり、明日、明後日で終わる予定だ。

今日は終わったのでその辺で飯を食べて帰ろうとしたところに、この二人に出くわしたって訳だ。


「それでさ~、はーくんは氷歌ちゃんとはどの様な関係なわけ~?」


えっ、いきなりはーくん⁈


「た、ただの幼馴染ですけど」

「うわっ⁈ 幼馴染というポジション! これはやばいよ千癒ちゃん!」

「大げさじゃない夏乃子ちゃん?」

「あの氷歌ちゃんに春がやってきた兆しではないですかあああ!」


土門さんといい、この子といい、幼馴染というだけでここまで盛り上がれるとか最早病気だろう……


「騒がしいわね」

「「「ひぃっ⁈」」」


声が聞こえた瞬間、一瞬で場が凍えるような寒さが3人を襲う。

先程まで騒がしかったのが嘘の様に静かになった。


「ひょ、氷歌⁈」

「ひょ、氷歌ちゃん⁈」

「ひょ、氷歌さん⁈」

「一日目も終わって、なかなか顔を見せないから私から来てあげたわ」

「す、すいません」


氷歌の睨みに堪えられず、謝る俺……だって怖いんだもん。


「それと夏乃子……さっき会った時言ったわよね……騒いだらただじゃおかないって」

「言ってたよ~な、言ってなかったよ~な?」

「氷歌さんの前でそんな事したらどうなるか分かってるでしょ? 素直に謝った方がいいよ夏乃子ちゃん」

「くぅ⁈ 氷歌ちゃんがいると強気になりおって!」

「は~はっはっはぁ! それのどこが悪いのかしら? いつも私に迷惑をかけているんだから、これぐらいかわいいもんでしょう~が!」

「くっ⁈ あ、あとで覚えて――」

「その機会はないわ……さようなら」

「ひょ、氷歌ちゃ――」


カキィィィィィィン⁈


「う、嘘だろ⁈」


氷歌の奴、マジで氷漬けにしやがった⁈

夏乃子さんは言葉通り、氷漬けになってしまった!


「この状態だと30分ぐらいですかね?」

「そのぐらいあれば十分でしょ。 さ、行きましょう」

「はーい。氷歌さんご飯食べに行きます?」

「えぇ、千癒も一緒に行きましょう」

「やった~!」

「夏乃子が迷惑をかけたから、私が奢ってあげる」

「氷歌さんに奢られるご飯はいつも美味しくて~! 私太っちゃいますぅ」

「あら、何言ってるの? 千癒はもっと食べなきゃダメよ。成長期なんだから」

「えへへ~! 氷歌さんにそう言われたら仕方がありませんね~! いっぱいごちそうになりますね」

「えぇ。好きなだけ食べてね」


な、なんだこれは?

今氷歌は夏乃子さんを氷漬けにしたとこなのに、呑気にご飯の話をしている。

俺がおかしいのか? いやいや、普通は氷漬けにされたら心配すうるのが普通だろ?


「お、おい、氷歌⁈」

「なぁに、迅人?」

「なぁに? じゃないだろ! お前、夏乃子さんを氷漬けにしておいてご飯食べにいくつもりかよ⁈」

「えぇ、そうよ」

「おいおいおい! それが何か問題でもある?みたいな顔で俺を見るなよ! このままじゃ凍死しちまうぞ夏乃子さん⁈」

「大丈夫ですよ迅人さん」

「え、千癒さんもなんでそんな平然としているんですか⁈」

「それはですね~夏乃子さんですから」

「はい?」


俺が間違っているのであろうか? 千癒さんの笑顔を見たら俺が間違っているかのような錯覚に陥りそうになる……いや、俺は間違ってはいない! 間違ってはいな――


「大丈夫よ」

「な、何を根拠に言って――」

「その子は炎帝よ」

「――るんだよ! うん? 今何て言った?」


俺の聞き間違いであろうか? 今氷歌がとんでもないワードを言ったような?


「氷歌さんの言う通りですよ。 このぐらいの凍り具合なら30分で解凍しちゃいますよ夏乃子ちゃん」

「解凍?」

「えぇ、だって夏乃子ちゃんは炎帝ですから。ふふふ」

「えっ? 間抜けな顔で氷漬けにされているこの子が?」

「そうよ。 さぁ、早くしないと、夏乃子が元に戻っちゃうから移動しましょう」

「は~い。 氷歌さ~ん何食べますぅ?」

「千癒が食べたいものでいいわよ」

「やった~! じゃぁ焼き肉が――」


俺はそのまま歩いていく2人の背中を見つめていた……

この氷漬けにされている女の子があの炎帝だという現実を受け止められずにいた。


「あ、今俺にウィンクした」


俺はそのウィンクを見て、すぐに2人の後を追いかけた。

心配してたんじゃないのかって?

普通の人が氷漬けにされてウィンクするはずないじゃん。


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