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don't worry

土門さんは取り巻き達の手によって控室に担ぎ込まれていった。

俺は心配になり、少し時間をおいてから土門さんがいる控室に入る。


「大丈夫そうですか?」


俺は声をかけ、意識を失っている土門さんのもとに歩み寄る。

土門さんは取り巻き達に介抱されていた。

取り巻きの一人が俺に気付く。


「て、てめぇ、どの面下げて兄貴に――」

「やめろ……」

「あ、兄貴! 目を覚ましたんすね!」


取り巻き達が俺に突っかかって来そうになるが、意識を取り戻した土門さんが止める。


「大丈夫ですか?」


俺が心配していると、土門さんは起き上がる。

若干ふらついたが、すぐに立ち直る。


「あぁ……多少は痛むが、これならどうって事ねぇよ」

「それならよかったです」

「……」


土門さんからの返答がない。

俺を見つめる土門さん……土門さんは大丈夫と言ってるが、俺は心配になりもう一度声を掛けようとしたが、その前に取り巻き達が土門さんを囲み背中をさすり始める。


「あ、兄貴……やっぱどこか悪いんじゃないですか? 救護班の方に診て――」

「大丈夫だ……痛みとかそんなんじゃねぇんだ……迅人よ……お前の一撃を食らって、お前がただの腰巾着じゃないと分かった。散々酷い事を言った事を許して欲しい」


土門さんはそう言うと、頭を下げ謝罪をしてくれる。


「いやいや、土門さん頭を上げてくださいよ! 俺は何も思っていませんから! それに、元はと言えば俺が氷歌から推薦を貰って選考会に参加したのが発端ですから」

「いや、元はと言えば俺のくだらない嫉妬が原因だ! この通り、許して欲しい」

「土門さん……」

「「「「「「「「「「兄貴ぃ……」」」」」」」」」」

「わかりました。 許しますから頭を上げてください」


俺がそう言っても、土門さんは一向に頭を上げない。

やっぱまだダメージが残っているんじゃ?


「土門さん、やっぱ救護の方に診てもらった方がいいんじゃ――」

「違うんだ! 俺は……俺は……」

「いや、さっき土門さんの謝罪を受け入れましたよ。他に何かあるんですか?」


俺がそう聞くと、土門さんの表情が険しくなる。

俺は心配になる。


「土門さん、俺で良ければ相談に乗りますよ」

「あ、兄貴、俺達も力になりますから――」

「そうっすよ! こんな俺達でも、兄貴の力になりますから!」

「迅人……お前達……」


みんなが心配してくれている事に対し、土門さんは感動し泣き始める。


「実はな……」

「なんですか?」


重苦しい空気の中、土門さんが打ち明ける。


「実はな……迅人のワンパンを貰い、意識を失いかける瞬間、俺は……」

「どうしたんです?」

「俺は……天を見上げた……迅人のワンパンを食らい、こいつ良いパンチ打つやんけ! 俺は意識を失う直前そう考えていた……そんな矢先に見てしまったんだ……」

「な、何を見たんですか?」

「観覧者用の部屋で俺達の戦いを見ていた氷歌ちゃんを……」

「はい?」



今のは聞き間違いか? うん、そうに違いない。

「氷歌ちゃんが俺の試合を見ていたんだ」

「聞き違いじゃなかった……」


話が段々と怪しくなってきたぞ?


「あの頃と同じ……モンスターと一緒に氷漬けにされたあの時と寸分違わない表情で俺を見ていたんだ」

「ど、土門さん?」


や、やっぱおかしな方へと向かってるぞ⁈ あんなに険しかった土門さんの表情が徐々に赤みを帯びていっているんだけど……


「そしてな……迅人に向けて言った様々な……酷い言葉を聞かれた……もう終わりだと思った……だが、あの氷歌ちゃんの凍てつく様な眼差しで見られた俺は……俺は……」

「あ、兄貴……」


取り巻き達がの声のトーンが低い……土門さんを心配しているのが伺える。

だが俺だけは違った……気のせいであってほしい……けど、この人……土門さんは――


「もぅ死んでもいいと思ったんだぁ」

「「「「「「「「「「兄貴いいいいいいいいいい!!」」」」」」」」」」


恍惚とした表情を浮かべていた……その言葉を皮切りに、取り巻き達は一斉に土門さんに抱き付く。


「兄貴ぃぃぃい! 今の話マジっすか⁈ 夢じゃないんすねっ⁈」

「ああっ! 夢じゃねぇえ! あれは夢なんかじゃねぇえ!」

「マジっすか⁈ めっちゃ羨ましいっす!!」


取り巻き達も賛同しだし、先程までお通夜だった雰囲気が一変、みんな一気にテンションMAXになり出す。

何この展開……いまだかつて見た事ねぇわ……


「お前達ぃぃぃい! 分かってくれるかああああ⁈」

「分かります兄貴ぃぃい!」

「俺達も氷歌ちゃんの凍てつく眼差しで射殺されてぇぇえっす!!」

「あ、あの時の氷歌ちゃんの凍てつく眼差しを思い出したら……あはは」

「あ、兄貴ぃぃぃい! 羨ましいっす!!」


土門さんを中心に取り巻き達が土門さんを泣きながら抱き合っていた。

泣くというか嬉し泣きであろうか?

俺はその光景を見て、静かに控室を出たのであった。

控室を出て俺は一人呟く……


「……うん……大丈夫そうだ」








その後、俺は順調に予選を勝ち上がっていった。



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