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「まぁ、ちゃんと調査した上で結論付けないといけないんだけど、まぁ、童話の中に出てくる話だからねぇ、あまり鵜呑みにしないこったね。 ただ、アジーンの半分は魔導騎兵の技術なのは確かだね。 あたしはここまで、綺麗に二つの技術が融合した機兵は見た事はないよ」
「そう……なんですね。 あ、でもどうして、魔導騎兵の技術が当時の物だと分かるんですか?」
「それは当時の魔導機兵が綺麗な状態で残っていた事がその証拠さ」
「え、それって、掘り起こされたってことですか? 当時の機兵が?」
「そうだよ。 なんと、綺麗な状態で見つかったのは魔導機兵だけではなかったんだ」
「え、もしかして、古代機兵も一緒にあったんですか?」
「ご名答さ。 そのおかげで、二つの機兵を比べる事ができてね。 そうして、魔導機兵を私達が作る事ができる様になったんだ。 まるで二つの機兵を見比べなさいと言わんばかりに、綺麗な状態だったんだよ」
「それは初めて聞きましたよ」
「そりゃ~おいそれと機密情報を流したら、世界は驚くからねぇ。 それに、よからぬ事を考える奴らはいるもんさ。 まぁ、結局は戦争の道具としてまた使われちまってるけどね」
アンジーの顔が一瞬暗くなったが、すぐにいつもの表情に戻る。
「話を戻すけどね、当時の魔導機兵が掘り起こされて分かった事は、古代機兵と魔導機兵を比べて見て、魔導機兵なら作れるって結論付かれたんだ。 そうして、技術者共が切磋琢磨して、ようやく古代機兵に近く、そして、当時の魔導機兵の性能を大幅に超える魔導機兵を作る事に成功したんだ」
「そんな事があったとは……知りませんでした」
魔導機兵ができるまでに様々な出来事があったことに俺は驚きを隠せずにいた。
そして、アジーンを見上げる。
「お前は本当に、アンジーさんが言う『神殺し』なのか?」
もし本当に、アンジーさんが言う『神殺し』だったとして、なぜ俺にアジーンを動かせたのか不思議で仕方が中った。
あの時感じた感覚……不思議と、俺なら動かせると直感した。
あの感覚は……そう……昔から乗り慣れていた感覚に近い物があった。
「ま、とにかくだ。 あんたはこの子に心配をかけない様に頑張らないといけないよ」
「うっ⁈」
「う、じゃないよ。 あんたとこの子はもう繋がっているんだ。 あんたに何か会った場合、この子はまた動き回るよ」
「俺を助けるために?」
「そう言うこった。 操縦者が危険な目にあっていると、動き出す機兵は聞いたことがないけど、お互いの繋がりが強ければ強い程、如実に動き出すのかもしれないね。 まぁ、機兵も意思があるんだって再認識できただけでも、あたしは今以上に信念を持って機兵と向き合う事ができるってもんさ。 まっ! だから、あんたはこの子に心配をかけない様に強くならないといけないよ。 そうでもしないと、この子をちゃんと修理できないからね」
「そう言う事なら、アンジーさんの旦那さんとお子さんに言ってもらえませんか?」
「あたしからも言っとくからさ。 けど、もう荒行はないと思うよ」
「何でそう言い切れるのか分からないんですけど? 去り際にあの二人の顔を見てないからそんな事を言えるんですよ。 旦那さんは変にニコニコしてて不気味だし、娘さんは俺を射殺さんとばかりの眼で俺を見てましたよ」
「ははは……想像はできるよ。 けど、あんたは既に『別天領域』と『幻冥領域』を覚えたんだろ?」
「ま、そうみたですけど」
「なら、あとは実戦で使える様にするだけじゃないか。 普通は1日でこの二つを覚える事は不可能に近いのに、あんたは1日で覚えちまったんだ」
「それは初耳ですよ」
「あの二人がどう言ったか知らないけど、この2つの力はすぐには覚醒しないもんなんだよ」
「なら俺はあの荒行に耐えた事で覚醒したんですね! まさに俺天才!」
あれ? ここは笑って和むとこなんですけど……
アンジーの俺を見る目が痛い……
「あ、いえ、冗談で―――」
「確かに天才なのかもしれないね」
「へっ?」
「やっぱり迅人は天才なんだ!」
アンジーの思わぬ言葉に一瞬頭が真っ白になった。
あ、あと、クラナさんや、は、恥ずかしいから大きな声で言わないでください。
「ア、アンジーさん……俺は天才なんかではありませんよ」
「迅人は天才だよ?」
「OK……クラナさんはちょっと静かにしていようか?」
クラナは首を右に傾け、アンジーの言葉を鵜呑みにしている。
その表情は、純粋に俺が天才だと疑っていない表情である。
俺が困り果てていると、アンジーと目が合い、ニタァァァっと笑みを見せる。
「冗談だよ。 真に受けちまったのかい? まったく若いねぇ~迅人は。 ってのも半分は冗談だ。 まぁ、鉄は熱い内に打てと同じさ。 マーヴェリックに叩かれて、叩かれまくって覚醒したんだろうけど、普通は叩かれまくっても途中で折れちまって終わるもんなんだ。 要は、あんたは、あの二人のしごきに耐えたんだ。 だから胸を張りな。 誰もができる事じゃないんだからね」
「素直に喜べないのは何でなんでしょうか?」
そう……聞こえはいいが、何だか俺が痛みに対して、痛いの好きなんですって聞こえるんだが、俺はその気は一切ない。 断じてない。 ホントだよ。
「別に変な意味で言ってはいないからね。 正直、あたしは、あの二人がしょっぱなから『別天領域』と『幻冥領域』を叩きこむとは思っていなかったからね。 正直、あの二人も、あんたがに覚醒した事に対して、表には出さなくとも、内心驚いてるに決まってるよ」
そんな事ないと思うな。
去り際のあの二人の表情は、『しごき甲斐がありそうな奴が現れたな。 今度はどうしてやろうか……? っくっくっく』みたいな顔をしていた……しかも二人ともだ。
「やはり親子だな」
「何だって?」
「あ、いえ、何でもありません!」
「それと、これも聞いたかい?」
「何ですか?」
「『別天領域』と『幻冥領域』は元々神々の遊びだったって事も」
「それは初耳です。 あの二人は何の説明も無しに、ただ操縦が難しい機兵に俺を乗せ、ボコボコにしただけです。 『別天領域』と『幻冥領域』の事はボコボコにやられた上に覚醒して、説明を聞きました」
「操縦が難しい機兵って……もしかして、ピグロに乗って、マーヴェリックとやったってのかい⁈」
アンジーの表情が変わる。
「ピグロか何かは分かりませんよ。 ランスさんにはあれに乗れとしか言われませんでしたし、乗ってみて動きが鈍いと感じ、感覚もどこかチグハグで、ズレにズレているのも感じ取れる機兵でした」
「……」
アンジーは数秒黙ると、俺の眼を見つめる。
「そうかい。 あんたよく耐えたね……それだけ賭けてったって事か……そして賭けに勝ったっと……くっくっく……」
「ア、アンジー?」
アンジーから、あの二人に似た笑みが現れる。
背中に冷たい汗が滝の様に流れているのを感じる俺。
「あ、悪いね。 え~っと、そうそう! そ・れ・で! 迅人、あの二人はあたしがとっちめとくから、理不尽だとは思うかもしれないけど、あんたはこのまま、あの二人の言われた通りに訓練をするんだよ。 わかったかい?」
「わ、わかりました。 あの二人に対して憎まれ口を叩きましたが、冗談なんで、気にしないでください。 あ、別に、アンジーがあの二人をとっちめる事を、いや本当に期待はしていないんで、大丈夫なんで」
「ハハハッ! わかったよ。あんたがそこまで言うなら、あの二人には何も言わないでおくよ」
「えぇぇぇえ~……」
アンジーの笑みを見て俺はメチャクチャ落ち込み、隣にいるクラナは腹を抱えて笑っていた。
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