beginning
「お~い! 何してんだ? 早く行くぞ~」
「あぁ、今行くよ」
俺を呼ぶのは小さい頃から一緒に友人の斎藤 始である。
そして、俺は市原 迅人と言います。
俺と始は今ゲートに入り、ゲート内を探索しているところです。
まぁ、探索と言いますが、お小遣い稼ぎをしにきているところです。
俺達が住む世界はある日を境に、異世界に繋がるゲートが開き、異世界に行き来ができるようになったのである。
それと同時に俺達に人間に不思議な力が宿ったのである。
そして、異世界から様々な種族の行き交いができるようになり、他種族との交流ができ、俺達の周りには様々な種族が歩き回っている。
だが、中にはゲートから出ては話を介せずに襲い掛かってくる種族もいる。
そんな種族は力のある者が倒してくれるようになっている。
まぁ、様々な種族がいる中で、この地球は人気があるらしく、この地球に害を為す者が現れたら他種族の人々が手を貸してくれるため、すぐに問題を解決してくれるのだ。
また他種族との婚約も可能になり、俺にもその可能性がといきこんではみるも、まだ彼女すらできたことがない俺には夢物語に過ぎない……
話を戻そう。
ここで全部を話すのは時間がないので、追々話すとして、俺と始は小遣い稼ぎにゲートに潜っている平凡な高校生である。
だが始は平凡な高校生とは一味ちがう。
始の力は回復とバフをかける事を得意としている。
怪我なんかをしたらすぐに治してくれる程の腕前だ。
しかも身体能力も高いときたもんだ!
それに始は剣道四段の持ち主であり、ちなみにこいつはBクラスのハンターである。
Bクラスになると一人で食っていける程の力を持っていると言っていい。
成長していけば遠い未来Sクラスのハンターになる可能性だってある。
そして、俺はと言うと、Fクラスである。
お先真っ暗な未来しか見えない……
力に覚醒して、鑑定したらこれだもんな~。
あ、それと、こんな俺だが 【順応】 という力を持っていた。
順応とは環境や境遇の変化に従って性質や行動が合うように変化していく力である。
最初は珍しいスキルだっていうんで、チヤホラされたけど、調べてみたらさ……そう……あまり戦闘向きな力ではないのだ。
ぶっちゃっけ使えない。
すぐに静かになった。
けれども、そんな俺の力を必要としてくれたのが始である。
なんと、この 【順応】 という力はパーティーメンバーにも影響を与えてくれるのだ。
例えば、今いるゲートは、ジャングルと砂漠を合体したような環境にある。
普通なら、魔法やアーティファクトを使い、環境に対応しなければすぐに死んでしまう。
だが、俺一人がいれば、パーティー全員がその環境に順応し、苦労せずに狩りに集中できるのだよ。
まさかそんな力が俺にあるとは思わなかった。
戦うだけが全てではないとはこの事だわな!
これも始が狩りに誘ってくれたおかげで分かったんだけどね。
お前は始が戦っている間、何をしてるんだだって?
俺は静かに身を隠し、始の戦いを見守っているけど……それが何か?
いや、俺もそれはダメだろうと何度も思ったさ!
俺は 【順応】 しか持っていない平凡な高校生だって言ったさ!
しかも身体能力も平均よりも低いときたもんだ!
だけど、始が何度も俺に一緒にゲートに行こうと誘ってくるもんだから、負けちまったんだよ。
始の熱意にね……。
あいつはいくつものギルドからの誘いを断ってまで、俺を必要としてくれた。
そんな熱い男の誘いを断るほど、俺の心は冷めきってなかったようだ……。
「さっきから何やってるんだよ~? 置いてくぞ~?」
「ほほう? 俺を置いてったらどうなるのか分かってるんだろうな?」
「ほほう~? そんなデカい口を叩くのなら、どうなるのか分かってるんだろうな?」
「ははぁー! いつも始様には大変お世話になっております!」
「いやいや、こちらこそ、迅人様には大変お世話になっております!」
「お互い、助け合ってこそのなんとやらだな」
「ほんとそうだな。 よし、そろそろ移動しよう。休憩も済んだだろう?」
「始はいいよな~。 スキルがいくつもあってさ。 しかも、元々持っている身体能力も高いときたもんだ! 俺とじゃ、回復速度も違うだろ~?」
「はいはい、分かった分かった! バフをかけてやるから、その口を閉じてくれよ」
ヒュゥー――ン
始が身体強化のバフをかけてくれたおかげで、俺の体が急に軽くなる。
「おぉ! ありがとうございます! 体が軽くなりました! さぁ行きましょう! 何をチンタラしてんだ! ほら、早く行くぞ!」
「さっきまでダラダラしてた奴が、急に偉そうに……」
「なんか言ったか?」
「ははは……最高の友だちだって言ったんだよ」
「そういうのは小さい声で言うもんじゃないぞ。 もっと響き渡るぐらいの感じで言わないと、俺には伝わらないぞ!」
「バカ言ってないで、ほら、行くぞ!」
「はーい」
「まったく……お前といると飽きないよ」
「おおっ! 声は小さかったが、今のは俺の心に響いたぞ! それとな……俺も同じ気持ちだよ」
ガツンッ
俺と始はお互いの拳と拳をぶつけ合い、歩を進める。