7 出発
「いやぁ、ごめんごめん!みんな大丈夫だった?」
黒い髪に赤茶色の瞳、なかなかの好青年だが、ヘラっとしながら軽く謝っている姿は、つい先程九死に一生を得たとは思えないほど緊張感がない。そんな彼は…、
「勇者様!ご無事で何よりです!」
勇者らしい。
「あれ?闇の住人いないじゃん!もしかして倒しちゃったの?」
「ええ。危ないところでしたが、あちらにいらっしゃいます聖女様が浄化し、助けて下さりました。」
「聖女様!?」
勇者マルクスが目を大きくしてこちらを見る。そして目が合うと大股でどんどん近づいて、目の前まで来た。
(ちょっと距離が近い!)
「ど、どうも…。」
苦笑いしながら挨拶するが、マルクスには真面目な顔で頭の上から足元までじっくり見られた。
「すごい!ホント言い伝え通りじゃん!」
そう言うと手を取られ、両手で握ってブンブンと握手される。
「はじめまして!俺、マルクス・タチェット。勇者やってます!マルクスって呼んでね!」
ニカッとした笑顔が、可愛い。
「はじめまして。山里ハルです。私もハルと呼んで下さい。」
・・・
「では参りましょうか。」
いよいよハイリヴァルト国王に会うため、国王が待つサングレイス城に移動することになった。
歩いて行くのかと思っていたが、移動の魔法で一瞬で着くらしい。
「ノール様、ここは私が!」
「では、よろしくお願いします。」
ルルシャが先頭に立ち、その後ろにマルクスとノールが並ぶ。
「ハル殿、こちらへ。」
アンドレアに手を差し伸べられ、緊張しながらも自分の手を乗せてノールたちの側へ移動する。
みんなが笑顔で迎え入れてくれた。ハルはそれに応えるように笑顔で頷く。
(これからどうなるんだろう?)
今更ながら緊張してきた。でももうなるようにしかならない。
ルルシャがステッキを掲げた。
「それでは参ります。 テレポーテーション」
ルルシャが呪文を唱えると、足元に赤い魔法陣が現れ、光が溢れ出し体を包み込んでいく。
ドキドキと鳴らす胸の前で両手をギュッと握りしめ、目を閉じた。