気になったのは『紙』
幼稚園児ぐらいの時かな。
田舎のおばあちゃん家に遊びに行ったんだ。
おばあちゃん家は山の方にある村に住んでたんだ。
でも過疎化が進んで、もうすでに4世帯程しか住んでいなかった。
近所のおじさんやおばさんは優しくて、しかも川が近くにあるから釣りや虫取り色々遊んだ。
父さんも母さんも夜にはおばあちゃんや近所の人達と、楽しくお酒を飲んでいたからね。
俺は都会で育ったんだが、それでも居心地の良い所だった。
ゲームも好きだが、どちらかと言えば身体を動かすのが好きな俺は楽しかった。
おばあちゃんの家を探索してた時、押入れからアルバムを見つけて見ていた。
大ばあちゃんらしき人と、おばあちゃんかな。
二人が写った白黒の写真、当時の村の様子とか色々あって夢中になって見ていた。
すると、挟んであった何かがパサッと下に落ちた。
拾ってみると長方形『紙』二枚だった。
厚さは画用紙程で、大きさは当時の俺の手の平ぐらいだったかな。
良く見てると、『紙』の片隅に小さく何かが書いてあった。
「蒼、ここにおったんかね・・・珍しい物をみつけたねぇ」
「ばあちゃんっ」
俺はおばあちゃんが好きでさ。
喜んで、おばあちゃんに抱き付いた。
おばあちゃんは俺を優しい眼差しで見ながら、俺が手に持っている『紙』に気が付いた。
「これ、欲しいのかい?」
「うんっ」
「でも、おばあちゃんのお母さんの形見だしねぇ・・・」
「だめ~?」
「約束出来るかい?無くしたりしないって」
「うんっ!」
「ユメさん、ユカさん・・・この子をお願い致します」
おばあちゃんは俺の頭を優しく撫でながら、何か呟いた。
聞き取れなかったけど、優しかったのは今でも覚えている。
その『紙』を俺は大事に抱えた。
なんだろう心地よかったかな、温かい気持ちになれたんだ。
そう、これが始まり。
ユメ姉とユカ姉との出会いだ。
壮絶な物語の幕開けみたいだって?
まさか、幸せで面白い物語の幕開けだよ。
まぁ色々あったのは、確かだけどね。