寮生活 エイダンの受難
寮生活 エイダンの受難
俺の名前は、エイダン。
庶民の出ながらも努力に努力を重ねこの度学園に首席入学を果たした頑張り屋さんだ。
俺は本当に頑張った。幼いころ読んでもらった国の英雄セイラ様の物語に感動しセイラ様に憧れこの学園を目指した。
朝は早く起き、家業の自転車屋の手伝いをし、小遣いをため、本を買い、擦り切れるほど読み込んだ。
同じ志をもつスーとは、幼馴染の勉強友達で良いライバルだ。お互い、新しい知識に触れると出し惜しみすることなく教えあい切磋琢磨した。本当に良い友達だ。俺は恵まれていると思う。
「おい、この国の王子の命令が聞けないのか?」
ああ・・本当に困った。
首席合格者には様々な特待が与えられる。その一つが寮の特別室だ。本来なら相部屋になる決まりが、主席には一人部屋の特別室が与えられる。
「おい、僕はこの国の王子だぞ。その僕が下賤の者や、または庶民なんかと同じ部屋で過ごせというのか?」
(王族なのだから何不自由なく、質のいい教育を受けているだろうになんだ、この利かん坊は・・・。駄々をこねて入学早々、寮長様を困らせるなよ。)
「ルドルフ様、お気持ちは分かりますがここは王城ではなく学園の中です。学園では学び舎の下では身分など関係ないみな平等なのです。この特別室は、切磋琢磨勉学に励んだものへの権利なのです。もし、特別室をお望みでしたら勉学に励めば良いのです。その年の成績優秀者には、特別室が与えられます。」
「うるさい、そんなこと知るか。お前クロエ男爵家の三男だろう、偉そうに、お父様に言いつけてやるからな、お前の家の立場がどうなるかなんて僕の一言でどうにでもなるのだからな・・」
(なんだこいつ、殴りたい)
「構いません、何なりとお申し付けください。僕は学び舎の下、他の生徒のお手本と成るべく寮長として正しい行いをしています。何も恥ずかしいことはしていません。家族も分かってくれるはずです。」
((((((((かっこいいいいいいいい!)))))))
「くっ、王族への不敬罪だ・・この学園にいれなくなってもいいということだな?」
((((((まずい))))))
「あっあの・・ルドルフ様、落ち着き下さい。特別室がご要望でしたらお譲りします。上に立つもの者は権利を振りかざし主張するものではありません。どうか気を収め下さい。」
「ふん、庶民の方がよく分かっているようだな。」
「いいのかい?特別室は君の努力に与えられた特別な権利だぞ。」
「いいのです。この場が丸く収まることを僕は望みます。」
「しかし・・」
「もし、寮長様のご迷惑でなければ僕は寮長様と同室を望みます。」
「僕と同室?」
「はい、先ほどの寮長様のお姿とても立派でした。尊敬できる方のそばにいることは、特別室を与えられるよりも価値があると思います。きっと学業だけではなく様々なことを学べると思います。」
「ふん、さすが庶民、どんな場所でも得をしようとすするのだな。」
(マジ殴りたい)
「分かりました。そういうことでしたら上の人に掛け合ってみましょう。」
その後、寮長様の素早い対応でその場はひとまず丸く収まった。そして俺、エイダンはシリウス様(寮長)と相部屋になった。