聖女も今やニートとなる時代
エレベーターで地下に向かいながら先生は俺に超能力の説明をする。
先生曰く
魔女の超能力というのは異能型 魔術型 魔法型この三つに分けられる。
六年前に魔女戦争を引き起こした魔女達はほとんどが異能型である。
異能型とは一点特化した能力であり、魔術型、魔法型とは違い能力発動に必要なステップを踏まないという特徴がある。
そして一点に特化としている分能力は強力だ。強度(※後に記載)も6〜10と無力化することはかなり難しい。
能力の代償は徐々に理性を失うことであり
またこのタイプ能力者は自己顕示欲が強い者に多い。
魔術型とは呪文を唱え自分自身のイメージを現実に引き起こす能力である。
強いイメージを待てば強くなるこの能力であるが普通の人間にはイメージ力の限界があり
超能力という非現実的なものを心から信じられないためどうしても低い能力になってしまう。
万能な分どうしても能力は低くなってしまう。強度は1〜3が平均である。
能力の代償に運動能力の極端な低下、生命力の低下がある。
このタイプの能力者は精神的に弱い人間であり何かしらの病を抱えてることが多い。
魔法型とは触媒を用いることで身体を癒やしたり、身体能力の強化更には目に見えない結界を作ることの出来る能力である。
触媒というのは魔法少女に成りきる道具のことを言う、所謂コスプレ道具のようなものだ。
能力が統一されている分強度は4〜7と高い
能力の代償はやる気や元気である。
このタイプの能力者人の役に立ちたいと強く思う者が多い。
と先生は一通り俺に説明した後扉の前で立ち止まる。
「まぁあれだ、安心しなさい。君は少なくとも異能型ではないよ。検査して確信したが恐らく魔術型だ」
少し安心した。異能型ではないらしい。
確かに俺の運動能力の大幅な低下は魔術型のものと一致する。
「でもそうすると少し怖いです。運動能力の低下は良いとして生命力の低下は命に繋がりますから」
「要は使わなければ良いんだよ。基本的に超能力の使用は禁止されているからね」
「さぁ、この先に君の超能力を検査するためにある人が待っている」
かなりの有名人だぞ。と言う先生の目は何故か死んでいた。
扉を開けて俺を待っていたのは一つの死体であった。
「ひ、人が死んでるッ?!」
「はぁ、またか……飛鳥君起きなさい。患者を連れてきたよ」
と先生は死体をコツコツと蹴り出した。
「うーうー、めんどくさぁい。生きるのってホントめんどくさぁい。一生寝ていたーい。あーしはもう一生分働いたー。カエデちん、あーしは週休八日制を要望するー」
とゆっくり本当にゆっくり起きだした白金の髪を持つ少女。ってこの人?!
「この人、白金の聖女 芦辺 飛鳥様じゃないですか?!どうしてこんなことになってるんです?!」
白金の聖女とは魔女でありながら先の内乱で他の多数の魔女と最前線で戦い、たくさんの人を守った聖人である。
なんでこんな残念な人になってるんだ?
「あー、これはさっきも説明した通り、彼女の魔女のタイプが魔法型でね。はじめはこんな人間ではなかったんだが今では完全な引きこもりになってしまったんだ」
魔法型……つまり能力を使うたびにやる気や元気を消費してしまうと言うことか
最前線にいたということはたくさん能力を使ったということになる。しかしそれにしても。
「なんかショックです。俺、一時期飛鳥様のファンでグッズとかも買ってて凄く尊敬していたのに」
「まぁあんなになるまで戦ったということだよ。許してやりな」
と話してると飛鳥様は嫌悪のこもった目で俺を見た。
「あーしが呼ばれるなんて何事かーと思ったけどー白銀かー流石に本気出さないとなぁーめんどくさぁい。死にたーい」
白銀?俺の髪のことか?
「ああ、私たちが保有している魔女の中で唯一の白金の魔法型は君だけだからね飛鳥君」
「もうーTS病はー罹らないー病気じゃないのー?研究者はーホントー無能なんだからー。白銀くんもー空気読もうねー」
ウッ、空気読めなくてすみません。
「ところで先生、白金とか白銀とか何か意味があるんですか?単なる髪色でしょう?」
俺は疑問をぶつける
「それはだね、魔女の能力の強さが髪色と関係するからだよ」
はぁ?
「例えばあれですか?赤色なら炎を使えたり青色なら水を使えるとか?」
「そこまで単純なら分かりやすかったんだんだけどね」
ハァ、と先生はため息をついて。
「問題になるのは髪のハイライトなんだ。髪の色素が薄くなるほど強い能力を持っている。つまり白銀は最も強い能力者となる」
おお!俺は能力が強いのかなんか嬉しいな。
「喜んでいるとこー悪いけどー白銀はー危険人物ってーことだからねー」
そうなの?!
「まぁ有り体に言ってしまえばその通りなんだが、もう少しオブラートに包んで言ってあげなさい、飛鳥君」
「他人のことーなんてーどーでもいいーさっさと能力測ってー眠りたーい」
いや、俺傷つきやすいから優しくして!
ということで能力診断をすることになる。
「先ほど私が説明した通り恐らく君は魔術型だ。自分のイメージを口頭で語るだけでいい」
イメージを語るってなんか恥ずかしいな。うーん、例えば.
「"止まれ"とか?」
そう語るとと先生が急に動きを止めた。
「ちょっと白銀くん!カエデちんまだ使って良いって言ってないでしょ?!あーしにも準備が必要なの!馬鹿なの?!」
飛鳥様さっきのナマケモノのような態度から一変激怒している。
「へ?でも俺、"止まれ"って言っただけですよ?!」
「だーかーらー、勝手に使うなっての!これ以降止まれは禁止!」
ええっ?そんなに簡単に発動するの?魔術って……
「あーもーめんどくさいなぁ」
飛鳥様はチョークを取り出すと先生の顔に"解呪"と書く。
すると先生は動き出した。
「ん?何事かね?」
「カエデちーん?動けるー?この子ヤバいよー、こんなに簡単に魔術使っちゃう子あーし初めてー」
「む、私は術にかけられたということか、柊君、気をつけよう。外で魔術なんて使ったら犯罪だよ?」
ま、マジすか……
「で、どういう魔術だったのかね?飛鳥君」
「停止系統っぽいねーあれだけ呪文省略してぇ人一人の時間をー止めるなんてー流石は白銀だよー」
「と言うことで君の一番得意な魔術は停止系統だね」
ん?得意な?
「あの、それだと他の魔術も使えるってことですか?」
「うむ、魔術型の良いところは万能性だからね。得意不得意はあるにしても出来ないことはない」
おお!ってことは暗黒の炎を右手に纏うとかできるのかなぁ。
「あ、飛鳥様、魔術使いたいんですけど良いですか?!」
「めんどくさぁいけどーあーしも仕事だからねーちょっと待ってねー」
そういうと飛鳥様はチョークで俺の周りにグルッと円を書いた。
「はーい、これでー白銀くんの能力はーこの円からーでれませーん。白銀君はーこの円からーでないようにー」
よし!本気出すぞ!暗黒の炎って格好いいじゃん!昔からの夢だったんだ!
「で、ではゴホン。"俺"の"右手"に"集え"よ"漆黒"!お前は罪深き"憤怒"の"炎"!悪魔の右腕!!」
ポッと小さな真っ黒な炎が右腕で燃えている。え、ショボくない?
「ププッー、やっぱりー魔術型ってー厨二病ー多いよねー」
飛鳥様はケラケラ笑ってる。先生も少し笑いをこらえている。
し、死にたい。
「次は最大規模の魔術を打ってもらう。集中して自分の心を語りたまえ。大丈夫だ、次は笑ったりしないから」
ホントですよね?
「最大規模ってーことだからー結界をー強化するよーとりあえーず五重線くらいーあれば大丈夫かなー白銀って言ってもー魔術型ーだからー強度は低いでしょー」
よし、俺頑張る。今度は笑われないようにもっと凄いのやってやる!
「"チクタク、チクタクと時計は動く、時間だけが私たちを置いていく、全てを静止させる時間の悪魔よ、私の血をグラスに注げ私の肉を喰らえ、そして私にお前の権能を授けたまえ!さぁ、時間よ、止まれ。お前は最も尊く美しい" 堕天の三番目」
ごふ、大量の血が口から吐き出される
呪文を唱え終えると自分の中の大事なモノが大量に失われていくそんな感覚を覚えた。
チョークで書かれた五重線は見事に破壊されていた。
暗転。
強度とは超能力の強さ。
どれだけ凄い能力でも低い強度の場合簡単に他の能力で上書きされてしまう。