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原因はぷいキュア

 ーーーーーーうん、知らない天井だ。


 目を覚ますと俺は真っ白な空間にいた。

 あの後のことを考えるにおそらく病院だと思う。

 とりあえず起きるか。


 ガチャ


 両手がベッドに拘束されていた。何故だ?


 ガチャ ガチャ


 なんで?なんで拘束されている?!


 ガチャガチャガチャガチャガチャ


 なんでなんでなんでなんでなんで?!怖い怖い怖い怖い!!



 すると病室のドアが開いた。

 人が入ってくる。

 

「イヤァァァァ!!来ないで!!」




「落ち着いて。大丈夫、私は君に危害を加えたりしない。怖かったね。今すぐ拘束具を外すからね」


 そう言って女性は鍵を使って両手の拘束具を解いてくれた。

「ハァハァハァーーー落ち着け落ち着け、俺。怖くない怖くない。大丈夫ーーふぅ」

「よかった。落ち着いたかね?本当に済まない。TS病患者なんてもう数年ぶりでね。いきなり暴れだす可能性があったから拘束させてもらった」

 何を言ってるんだ?俺はそんなことしない。ただ女の身体になっただけじゃないか。

「君も知ってるとは思うがTS病患者は超能力を有してる。その中には力を制御できなくて暴走する子もいたんだ」

 ああ、そうか超能力。数年前に起きた魔女戦争。魔女は恐ろしいとされていて、だから俺を……

「あなたは医者で良いんですよね? 俺、魔女になってしまったんですか?」

「申し遅れた。私は立花 楓。TS病専門の医者でね。正確には研究者なんだが……」

 先生は続ける。

「君が魔女になったかと言えばまず間違いなく魔女になっているだろうね。しかしワクチンを打った後に発症したケースは君が初めてなんだ。君の状態を調べるためにも検査を受けてもらうことになる」

 俺が初かよ。マジでついてないな。

「はい、わかりました。俺も不安なんで調べてもらえると助かります」


「ではついてきてもらえるかな?」と先生は歩き出した。

 俺も後を追おうとするがとするが


 ひでぶっ!


 見事に転んでしまった。かっこ悪い。


 先生は振り返ると

「ふむ、何もないところで転ぶ。なるほどなるほど。君のことが分かってきたよ」

 いや、単に身体が馴染んでないだけじゃないかな。




 先生について回って気づいたことがある。

 もしかしてここ病院じゃない?

 少なくとも俺の使ってる市立病院ではなさそうだ。


「先生、ここどこなんですか?病院じゃありませんよね?患者さんどころか誰も居ない」

「ああ、ここはねTS病の研究所なんだ。もうほとんど使われていないんだけどね」

  先頭を歩く先生が立ち止まった。

「まずはここで基本的な検査をしよう。とりあえず身長と体重、あとスリーサイズね。君は自分の姿を鏡で見たことはあるのかな?」

「いえ、ないです。すぐ倒れちゃって」

 そういえば妹が美少女とか言ってたな。自分の姿を見るのがほんの少し不安だ。

 妹よお兄ちゃんに力を与えたまえ。

 あれ?そういえば妹の姿が見えない。

「あの、俺救急車で運ばれたはずで、妹も一緒に来てるはずなんですけど。妹はどこに?」

「妹さんには悪いが自宅に帰ってもらったよ」

 先生はどこか遠くを見て

「君は当事者だからハッキリと言ってしまうけど、この研究所は表向きには既に廃棄されててね」

「TS病はもう完全に罹らない病気だ。そして研究することも禁止されてる。だから国内の研究所は閉鎖されている」

 は?

「じゃあなんで先生はここに居るんですか?」

「政府も諦めが悪いと言うことだよ。国内でダメなら国外移動させようってね」

「そんなこと俺に話しちゃって大丈夫なんですか?」

「平気だとも。何故なら君のこわーいお姉さんが口封じするからね」

 俺に姉は居ないんだが……




 先生は大きな鏡の前に立つと手招きした。

「来たまえ、姿は相当変わっているはずだから、驚く準備でもしていなさい」

居心地の悪い笑みで言われると余計に不安になるんですが

 そして俺は鏡の前に立つ


 鏡に映される自分は現実ではあり得ない少し幻想じみている姿だった。

 腰まで届く真っ白な髪は一切癖のないストレートヘア

 こぼれ落ちるほどの大きな瞳はまるで宝石のサファイアのようだ。

 あんぐりと口を広げて鏡を凝視するその姿は少し間抜けに見えるがそれも愛嬌の一つかもしれない。

 少し力を入れただけで壊れてしまいそうなほどホッソリとした真っ白な身体。

 そんな身体に反し病衣の上からでも分かるほどの大きな胸。


 間違いなく美少女だ。妹が俺を妖精だと言っていたのも頷ける。

 うむ。俺、可愛い。


 そうしてしばらく放心していると

 先生が笑い出した。

「いやぁ、TS病患者に初めて自分の姿を確認させるのはやっぱり楽しいね」

 俺は恥ずかしくなって先生を睨めつけた。

「笑うことないじゃないですか!ビックリしただけです!」

「そうだな、すまない。しかし違和感がないんじゃないか?もう一人の自分のように感じたりはしないかね?」

 先生は訳知り顔で言った。

 確かに違和感があるわけじゃない。女性になるという摩訶不思議な経験をしているのにこの姿には安心感さえある。


「これは研究の中でわかったのだがね。TS病患者は自分の願望を具現化させる能力を持っている。具現化する能力は様々だが共通として女性になりたいと言う願望があるのだよ」

 そんなこと思ったことはないんだが……。


「ところで君はアニメは嗜む方かな?例えば、ぷいキュアとか」

「毎回録画してます!!先生も見るんですか?!語り合いましょう!」

 先生に急に親近感が湧いた。共にぷいキュア愛を語り尽くそうじゃないか!

「いや、私はセーラーサン派なんだよ。最近のアニメは見ていない。もう年だね」

 気のせいだった。

「確かにぷいキュアを楽しめないとはババアと言っても差し支えないですね」

 ハハッと笑うと先生は俺に拳骨を落とした。ホントのことなのに


「イテテ、でなんで急にぷいキュアの話になるんです?」

「それはだね。TS病患者の殆どがぷいキュアや他の魔法少女モノのエンタメを嗜んでてね。さっきも言ったとおり、TS病は自分の願望を具現化させる症状なんだ。魔法少女になりたいと思ってしまったんだろうね。いやぁ、本当に男って単純というか純粋というか」

 いやいや、それほんとなの?!男馬鹿じゃん!

 確かに俺も中学時代おれのかんがえたさいきょうまほうしょうじょとか作ってたけどさぁ。

「まぁしかし彼らいや彼女たちはまだ幸せな方だったんだろうね。中には無理やり、ゴホン。嫌なんでもないよ。さぁ今度は身長でも測ろうか」


 イエス、マム!

 おらなんだかワクワクしてきたぞ!

プリキ○アは初代しかしらない……

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