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無銘の英雄譚 - The Legend Memory of…?  作者: 紫紅魔
真偽を撃ち抜くか、あるいは
8/20

Ep-8 Side-H 直線の上

 慌ただしいあれやこれやがあって、もう一年が経つことになる。そろそろ新しい冒険者が誕生する時期か…同時に旅立ちの季節でもある。

 この頃、『友の手』はそこそこ忙しい。この辺りの案内。そして装備品のメンテナンスをする者の為にそれの仲介。あと新品の製作に関して。これらは鍛冶師にこだわりが無ければ、出来るだけ空いている人を紹介する。これだけで大体三人は外で動いて、一人が店に残る。私、エミリオ、暁だけだと足りないからこの時期に限って綾が応援に来てくれる。

 昼頃になってようやく一息つき、各個入れ替わりで休憩に入る。今はエミリオが休憩中だ。


「この辺に住んでる皆がここの紹介をしてくれてるのはいいんだけど、ちょいと忙しい気もするねぇ。」


「文句言うな、この時期が大変なのはいつものことだろうに。」


「そーそー、この私が必要になるくらいにはね!」


 その尊大な態度やめろ。いくらアンタがアレな奴でも似合ってないぞ。


「なんか今、すごい失礼なことを考えてたよね?ね?」


「うるさい。単純にアンタにあってない発言だと思っただけだ。」


 ホントこういう事に敏感なのは困る。本来ならそういう立場に近い人間(?)なのだが、カリスマ性が足りないんだよ。しかし彼女が何故こんなにも楽天的な性格に変わったのか、私にはわからない。私の知っている彼女は…いや、この話は止そう。こんな事を考えるのは彼女の、もちろん私も望むところではない。

 今は今でしかない。私も似たような身だし、それくらいは分かるさ。私達みたいな存在は、いざという時に役立っていればいい。それだけだ。

 さて、くだらない事を考えていたら人が入ってくる。…珍しいな。赤髪のエルフか。


「いらっしゃい、ここは初めてかな?」


「はい、バレットさんから紹介を受けて。最低でもここで一年はお世話になります。」


 へぇ、バレットが。一年ってことは見習いかな。まだフェネクス所属でも無いってのがその根拠になるか。

 自己紹介を済ませる。彼はジンというらしい。イルミストからやってきた彼は、武器のメンテナンスをしてもらえる所を探しているそうだ。


「…ん?」


 成る程、確かにこのカットラス、状態はかなり悪い。かなりヤバイ使われ方をしたのが目に見えてわかる。だが、相当な業物だな。あまり使われていない鍔周りの刃は触れただけで切れてしまいそうなほどだ。


「これは…ちょっといじって貰うのが怖いな。」


 次いで言えばこれは恐らく個人のために作られた武器だ。一般に出回っているものと違って、握りやサイズ、そして彼が今持っている鞘も…?いや、鞘だけ違うな。でも、はっきり言って見習いには似つかない。完全に第一級冒険者のために作られた、オーダーメイド品だろう。


「これ、君の武器じゃないんじゃないか?まぁ、怖い理由はそれじゃないが…」


「ええ、元々の所持者は…確かにオレじゃないですけど。」


 まぁ、そうだろう。決め手はその握り。彼の手には、余りあるサイズだ。


「やっぱり、難しいですか?これのは。」


「うーん、やっぱりこの手のは作った本人なんかに任せるのが一番だけど…一応聞いてはみる。これならミゲルに任せるのが一番いいか。」


 あー、でも…


「返事はバレットの所に伝えれば良い?」


「あー、はい。それでお願いします。」


「んじゃ、私が行ってくるよー。これがなんとかなりそうか、だったっけ。」


 暁が。こういうのは比較的真面目にやるから大丈夫だとは思うけど。


「んっと、危ない危ない。期限とかある?」


「暫くは備品を借りれることになってるので大丈夫です。というよりは、ゆっくり時間をかけて調整してもらえると助かります。」


「はいな。じゃあ一走りするかな。」


 そう言って暁は出て行く。


「あれ、親父が使ってたやつなんです。」


 成る程。親父さんが第一級冒険者だったのか。道理で。


「あんな使い方をしてしまったことに関して、結構罪悪感を覚えていて。」


「荒っぽい使い方をしたこと自体は理解してるのか。ならもう一つ。」


「え?」


「君は君でしかない。今までは親父さんの武器を使ってたかも知れないけど、それにこだわる必要はない。君だけの戦いを見つけるといい。」


「…そうですね。でもオレにはこれがあってる。剣の扱いは親父から直々に指導を受けたりしてましたから。」


 彼も色々あるんだろう。深く突っ込むのは無粋、なら見送るだけだ。振り返っていく背中をただ。そう、ただ見送るだけ。


「防具なんかも今のうちに見繕っておくといいんじゃないかな。」


 かけた声は少しだけ振り返った顔、こちらから見えない顔が軽く頷かれることで返された。

 君は君でしかない。クサい言葉だ。まるで自分自身にかける言葉にしては…な。


「彼…どこかで見たかな…?」


「綾?」


「いや、初対面の筈だけど…でも何かで見たことがある気がするんだ。実際には顔を合わせない形で。何かの資料かな?」


 んなこと私が知るか。やけに静かだと思ってたらそういうことだったんだな。


「取り敢えず注意だけしとこう。大方、救護対象の関係する人物とかに記載されてたんじゃないのか?」


「ちょっとこっちが落ち着いたら確認取ってみる。」


 一年経って油断してたが…エルフとなるとトキか?少なくとも近況、その手の話でエルフとは関わりがない。いや、あの辺りじゃ赤髪なんて…な。

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