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無銘の英雄譚 - The Legend Memory of…?  作者: 紫紅魔
事が始まるなら
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Ep-5 Side-H まるで私とは

 トキという少女を保護して四日が経過した。出発は二日後。予定より三日程遅れての出発となるが、ある意味リカバリーとしては悪くない期間だったかもしれない。衣服の調達やら、魔導杖(流石に安物だが)の入手やら、多少出費がかさんでいた。

 少し感情輸入し過ぎているかとも思ったが、まぁ、私にはこれくらいのぬるさが似合っているだろう。あるいは死んだように生きている私に比べて、その目が生きていたからか。これくらいはしてやりたいと思ってしまっていたんだろう。

 私は暁とともに冒険者協会で第二級冒険者向けのクエストを漁っていた。


「いつまで二流のフリしてんのさ。」


「なんの話だかさっぱりだ。私は二流冒険者のノゾミだ。それ以上でもそれ以下でもない、マインドが使えない第二級冒険者なんだよ。」


「お?嫉妬か?あのトキとかいう少女の飲み込みが早いのが気に食わないんだ?」


 煽りよる。間違いなく彼女にウィザードとしての才能があって、飲み込みが早いのは事実だ。今まで見て来た新米ウィザードを簡単に超えるくらいには。出力だけなら第一級冒険者と張り合えるんじゃないかと思えるくらいには。

 だが、気に食わないのは事実としても場所が違うさ。私が気に食わないのは冒険に希望を持っているところ。あそこには死か財か、それしか無いだろうに。ただ、気に食わないが、輝いているその目は憎いものではなかった。


「いいよ、別に。そういう事でも。」


「変わってんなぁ…物理戦闘だけで第一級冒険者、それもトップクラスの立ち位置に…」


「やめやめ、誰もエミリア・エストックの再来は待ち望んじゃいない。」


 強引に話を打ち切ると、ちょうど良さそうなクエストが見つかる。


「これとかどうだろう。協会から出されてる奴。町南方の平原で魔物狩り、マイナーマインドのサンプル回収を同時に行って容器一つにつき100アーチ。」


「うん、いいんじゃないかい?」


 受付まで行き、クエスト内容を再確認。容器は試験管に見えるが、特殊な加工が施されているんだとかなんとか。続いて協会からの依頼特有のお優しい説明。マイナーマインドが回収できるのは討伐直後だとか、マイナーマインドにはあまり長時間触れない方がいいとか。要は魔物が死んで散り散りになるタイミングでこの容器をそれに通せばいいんだと。


 町の南に広がる草原は、比較的静かに見える。基本的に人がよく通る所は魔物にとって危険地帯だ。だが、土がむき出しとなっている道から少しそれれば、それは一瞬で魔物達の絶対猟域となる。一般人ならば町から町への移動すら危険が伴うとされ、多くの場合で冒険者が護衛、あるいは同時に移動を行なっている。


「よし…行くぞ!」


「この暁さんに任せろっ!」


 お互い、容器とともに支給されたホルダーに5本の容器。取り敢えずということでこの本数にした。一本目の栓を抜いて私は道から右へ、暁は左へ逸れていく。


 ―ミッションの発令から四日か。協会が厳戒態勢を緩めていないこともあって冒険者が少し慎重になっている。協会にいた人数が少ないことが証明になる。それ故か魔物の数は思ったより多い。近況のクエスト遂行数減少が原因か。


 右手に握るは身長ほどもある特徴的なメイス。先端から見れば正六角形の、装飾も無ければ殴り潰す為の突起も無い、シンプル過ぎるフォルム。横から見ればそれの先端は突出しており、刺すことも可能。

 握り直して、地を蹴って跳躍。相手はブラッドタイガー。人の血を啜るやばい奴なんだが…


 ドゴォン!


 猛烈なまでの土煙が舞って。

 叩きつけられたメイスは地面に突き刺さって倒れることはない。右手の容器をサッとマイナーマインドの中に通し、予め左手に握っていた栓をする。


「よし。まずは一つ。」


 次の栓を抜いて。

 最寄りのおこぼれを貰おうとしていたのか、近づいていたゴブリン一匹を横薙ぎ。頭が外れた。周りの群れをなしていたゴブリンが一瞬で凍りつく。


「二つ。」


 土煙が裂かれた中、正面に跳躍。先端で一匹突き刺し、それを振るって投げ飛ばす。それを命中させて二匹目。やっば、飛ばしたら回収できないな…

 他の奴に跳躍接近、蹴り倒したのを潰して、サンプル回収。


「これで三つ。」


 ゴブリンは大体逃げ出したか。後狩れそうなのは…空中か。ダンジョンみたいな壁のある所なら空中戦も出来なくは無いが、此処じゃ難しいか。まして、回収するのはやろうと思ってできるかどうかレベル。

 ふと暁の方を見る。おー、マインドを付与したブーメランで倒して、尻尾で死体回収か。結構器用なことしてるなぁ…

 合流したは良いものの向こうも五本は回収しきれなかったようだった。


「逃げられたよ。三本集めたところで狩れそうなのはいなくなっちゃった。」


「私も三本。魔物は正直だよ、まったく。」


 仕方なく、協会で達成報告か。暫くは戻ってこないだろうし、しょうがない。追撃するのは…別にそこまででも無いし、いいか。報酬の600アーチを受け取って、この依頼は終了することにした。

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