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今日も、フェアリアでのバイトがある。
「おはようございます」
「おう、きたか。早速だが仕込みを手伝ってくれ」
フェアリアでバイトを始めて、もうすぐ1ヶ月になろうとしている。
この仕込みについても、だいぶ慣れてきた。最初のころこそ、時間がかかっていたが、だいぶ速くなったと思う。
……まだ、オーナーには全然敵わないけど。
「オーナー、おはようございます」
「おう、早速で悪いが、仕込みを手伝ってくれ」
「わかりました」
そういうと、山崎は準備をして、仕込みを手伝い始める。
開店前に、オーナーと俺と山崎の3人で仕込みをして、オーナーが調理するのが、フェアリアのいつもの光景だ。
仕込みが終わったところで、オーナーが調理に移る。
「とりあえず、お前ら2人には、人気メニューの作り方から覚えてもらう。とりあえず、パンケーキからだな」
パンケーキは、フェアリアの人気メニューの1つだ。
良心的な値段で懐に優しく、そのふわふわとした食感と、素材の味を引き立てるようなソースが人気の理由だ。
「このパンケーキは、俺が試行錯誤を繰り返して作ったレシピで作っている。そんじょそこらのパンケーキとは格が違うと、俺は思ってるぜ」
オーナーがそう言ったとき、厨房にひょっこりと、ありすが入ってきた。
「お父さんさん、パンケーキに拘ってるけど、違いなんてわからなかったよ?」
「ありす、それはだな、少しずつ変えていったからだ。最初のと比べてみたら、違いがわかる」
「そういうものなの?」
ありすが、こっちに問いかけてきた。
「そういうものだよ。久しぶりにあったご近所さんとかから、『大きくなったねぇ』って言われたことはない?」
「あるよ。確かに、そうなのかもね」
ありすは納得したようだった。
「それじゃあ、学校行ってきます」
「「「いってらっしゃい」」」
今日、4月26日は木曜日。つまり平日だ。
中学生のありすは、普通に学校がある。
ありすの学校は8時30分に始業する。徒歩15分のありすは、30分前――8時に家を出る。俺と山崎は7時30分からフェアリアにいるので、こうして朝はありすにあうのだ。
ありすが学校に出発したあと、オーナーが言った。
「開店まであと1時間だ。客間のほう任せていいか?」
「「はい!」」
そうして俺と山崎は、客間の準備に取りかかることにした。