第七話 Travel and the end of the game
あの日から、犠牲者はいなくなった。
予定より早く、フィナード達は韓国の波止場近くに来た。
ここで船を貰い、日本に行ければ亡命は成功だ。
「敵襲!!」
だが先頭に立たず、わざわざ後ろに立ち皆の壁として戦い続けているコリューメ
言葉に、息を飲んだ。
韓国軍の兵士。タイガードと韓国には、外交も因縁も無いが、今は世界大戦中だ。他国の者には警戒し、始末するのが当然だろう。
コリューメは拳を、フィナードは剣を握り、銃を持つ相手に攻め込む。
「はああッ!!」
他の十四人を逃がし、フィナード達のみで戦う。
二人は止まらない。
※※※
気付いた頃には、韓国軍の屍だけがそこにあった。
血を浴びた二人は、仲間がいる船に行こうと駆け出した。
だがそこで。
フィナードの胸を、焼けるような痛みが襲った。
韓国軍の銃弾が、胸に穴を穿ったのだ。
後ろの敵に不覚を取るとは・・・・・・。
横を見ると、歪んだ顔のコリューメがいた。
何も言えず、フィナードは倒れ、そのまま意識を失った。
※※※
コリューメは、生き残った。
フィナードを狙撃し、絶命させた韓国軍の兵士を返り討ちにし、船に乗り込んだ。
今回ばかりは、泣かずにはいられなかった。
※※※
こうしてコリューメ達十五人は日本に着き、難民認定を貰って、一応住居を提供してもらって過ごすことになった。
だがそんな日々は僅か一ヶ月で破壊された。
科学者のような人物に、コリューメ達十五人は誘拐された。
何が何だか分からないまま、コリューメ達は誘拐され、そのまま意識を失った。
◇◇◇
「な、なんだよコレ」
白い頭巾とゴーグル、そしてファンタジー小説の主人公が着るような服を身に纏い、籠手を着けて拳で戦う少女の映像を私とフタメは見ていた。
「コレが本来の貴方です。貴方の記憶を改ざんし、そして改ざん後の記憶に相応しい姿のアバターが貴方に与えられています」
「違う! 何かの間違いに決まっている!」
「未だ信じて貰えないなら、信じさせてあげましょう」
上杉はフタメに向かって右掌を向けた。
何かの波動が、フタメに流れ込み。
一瞬、フタメは俯いた。
その時、全てを思い出した。
自分が二十九人を率いて日本に亡命したが、結局自分含めて十五人しか生き残らなかったこと。
自分の家族や友人も故郷も、もうないということ。
自分が、虎龍双女では無いことを。
コリューメは思い出した。
顔を上げてから、コリューメは口を開く。
「おい貴様、私達の仲間はどうしたんだ!!」
「そこに、記憶を改ざんされたアバターならいますが、コリューメさん以外の本体は、既に私が操った研究者によって・・・・・・」
パチン、と指を鳴らす。
自分の映像に代わり、映しだされたのは。
アサミ以外の参加者全員に酷似した、自分以外の十四人の変わり果てた姿だ。
「ぁ・・・・・・あぁ。
あああああああああああああああああ!!」
コリューメは叫んだ。映像に映る現実を、受け入れることを拒否していた。
反論など出来なかった。あの画像が偽物という根拠はどこにも無かったのだから。
「このまま苦しませておくのも楽しいですが、楽にしてあげましょう」
上杉は右掌を向けてから、再び口を開く。
「精神凍結」
上杉の掌が放たれた光は、仮想の肉体に外傷を与えるものではなかったが。それでも、自分の精神が壊れる音が聞こえた気がした。
※※※
「フタメさん!! フタメさん!!」
フタメの眼には意識が宿っていなかった。
死んだ、というよりは。フタメの時間のみが止んでしまったように、最後に上杉の光線を浴びる前の姿勢のまま倒れていた。
「無駄です。フタメさんの精神は凍結しています。
病んだ精神は止めるのが簡単です。この人の精神を戻すには、この人の病みと戦う必要がありますが、貴方にこの人を理解することは出来ないですし。
諦めなさい」
「上杉ィィィィッ!!」
私は我を忘れ、炎を纏う拳と共に駆け出す。
だが。
再び、《WARNING》の文字と警告音。
「予定より早かったみたいですね。研究所諸共奴等にマシンごとコンソールを破壊されれば私も消えてしまいますし。悪いですが、ここでさようならです」
「あ、待て!!」
私が駆け出すと同時に、空間が消え、上杉も、フタメも消え。
そして、意識を失った。
えー、終わりに見えますが。もう少しだけ続きます。