コラボ第三話 ハルトVS剣豪
「アサミ! 起きろアサミ!」
私に似た声で、私は覚醒した。
眼を開けると、フタメが悲痛な顔をしながら私を見ていた。
「フタメさん・・・・・・。あれ、私はどうしてたんだ?」
「斎藤という少年を倒した後、お前も倒れたんだ」
ハルトが説明する。
体を見ると、服も体も傷は無い。
ハルトかセレスティアが治療魔法を使用したのだろう。
何とか立ち上がり、辺りを見回す。
「それじゃあ、行こうか」
ハルトが先頭に立ち、歩き出す。
次の部屋。
そこで私を待ち構えていたのは、私もフタメも驚く人物だ。
男だ。ツンツンした髪に、黄色の三白眼。エラの張った顔。それだけなら、先に戦った斎藤と同じ。
だが、彼とは違う。ツンツンした髪は、黒ではなく白。
白いワイシャツと黒のスラックスではなく、黒いハーフコートと、白い革のズボン。あちこちに鉄素材のアーマーを装着している。
彼は斎藤基ではない、フタメの想い人で、韓国で死んだ筈のフィナードだ。
「フィ・・・・・・ナード? フィナードなのか?」
フタメが震え声で言う。
そこには彼女が一度、私を殺してでも手に入れることを諦めなかった少年が言う。
私は罠だと信じて疑わなかったが、どうやらフタメは違うらしい。
「フィナード!!」
フタメが涙を流しながら、フィナードに近付く。
それを、私は止めることが出来なかった。
ひし、と抱き付くフタメを、偽物――かも知れないフィナードが優しく抱擁する。
「会いたかった・・・・・・。ずっと、会いたかったぞ・・・・・・」
「ああ・・・・・・。俺もだ・・・・・・」
フィナードの声は、想像した通り斎藤と同じ声だ。
「私はドラマでも見てるんですかね?」
少々呆れたような顔で、寿奈さんは二人を見ている。
「俺は、お前が好きだ」
「私もだよ・・・・・・」
見た事が無い。私よりしっかりした性格のフタメが、異性を前にデレデレしている所を。
私より大事な人なのだから、当然なのかも知れないが。
そのままフィナードは、フタメと共に倒れこみ。
フタメの両手を押さえつける。
「あ、だめだぞ・・・・・・? アサミ達が見てる・・・・・・」
「見られている方が、興奮するだろ?」
斎藤君の顔で、その台詞はダメでしょ!!
そのままフィナードは、フタメさんのスカートに手を入れ・・・・・・。
「あああああああああああの二人、ななななななななななななナニをする気なのッ!?」
ハルトが顔を赤くしながら慌てていた。
それに気を取られて、忘れていた。
フィナードが手を入れた瞬間。
フタメの全身が、凍ったように停止した。
「だから言っただろ・・・・・・? 前のお前なら、これに引っかからなかったが、フィナードの前では今のお前は油断するらしいな」
本心を剥き出しにした、フィナードの偽物が言う。
「お前は誰だ!」
「フィナードの記憶を受け継いだ、偽物だ。コリューメを元に戻して欲しければ、私と戦え」
「俺が行こう」
ハルトがフェロニカを握り、フィナードの前に現れる。
「貴様がハルカの代理人ハルトか。俺は偽物だが、実力は本物と同じだぞ? 剣豪とたたえられた俺に勝てるのか?」
「勝てるさ。お前は多分、斎藤より弱い」
「俺より俺の空似の日本人の方が強いというのか?」
「ああ、その通りだ」
「よかろう。剣豪の力見せてやる」
フィナードは鍔にタイガード共和国国旗の刻印がある、黒水晶の刃を持つ剣を抜く。鞘を捨て、思い切り駆け出す。
彼は斉藤とは違うタイプらしく、重攻撃の体勢ではなく、連続かつ素早い剣技が出せる体勢をしている。
ハルトに接近したフィナード。技名を叫びながら、攻撃を開始した。
「光速刺突!!」
光の速さで放たれた三連続の刺突攻撃。
ハルトは何とかフェロニカで防ぎつつ弾き、フィナードに振り下ろす。
だが相手は驚くべき行動に出た。隙だらけの状態から彼は、一瞬にして体勢を戻し、左ワン部のアーマーでフェロニカを防ぐ。
そのまま必殺技が開始される。
「攻防両立・・・・・・」
攻防両立・・・・・・。ハルトが知っているかどうか知らないが、私にはどういう技が来るか俄かに想像出来た。
世界史で聞いたことがある。古代ギリシアで、重装歩兵が盾で攻撃を防ぎつつ、槍で接近してきた敵を殺す。
盾を左腕部のアーマー、槍は剣で代用し、ハルトに突きを入れる。
「ぐっ・・・・・・!」
ハルトは多分攻防両立を知らない――故に攻略方法を知らない。
ただ攻防両立は、厳しい訓練を受けたスパルタ人でさえ破れなかった攻撃方法。
強力な剣豪が使っているそれなら、尚更破るのは不可能。
剣を振れば左腕部のアーマーがそれを防ぎ、あの剣に突かれる。
魔法は発動に時間が掛かってしまい、多分当てられない。
だがハルトは、一瞬にしてその魔法を展開する。
「聖なる加護」
ハルトの周囲に、透明な壁が出現した。
対するフィナードも、負けじと必殺技で応戦する。
「防壁粉砕!!」
フィナードの瞳孔が開き、両手で剣を頭上に掲げ、そのまま振り下ろす。
聖なる加護はそのままガラスが割れるように粉砕される、と思っていた。
次の瞬間。
フィナードの背後に、ハルトが出現した。
「残念だったなフィナード。お前の攻防両立は、俺がとっくに弱点をつかんでいたさ。
攻防両立は、自分の正面から来る攻撃を防御し、そのまま攻撃を当てる技。
だが、後方や横方向からの攻撃なら。
気づくことが出来なければ、隙だらけの技なんだ」
宙から現れたハルト。片手をフィナードに向け、ミサイル型の何かを生成した。
「これで終わりだッ! ウォー・ヘッド!」
ウォー・ヘッドが、フィナードの背中に向かって放たれる。
フィナードは、最後の抵抗を開始した。
「そんなもの、俺ならば防げる! はァァァァッ! 絶対防御!」
右手の剣。左腕部のアーマー。
攻撃を防げそうなものをフルに生かした防御技。
だがウォー・ヘッドには、通用しなかった。
ミサイルはフィナードに激突し、爆風が終わった頃には、フィナードの姿は無かった。
◇◇◇
「アサミ・・・・・・。私は眠っていたのか」
数分後。フタメは、目を擦りながら目覚めた。
再びハルトと共に、次の部屋に向かう。
すると、次は私達の知らない相手がいたんだ。




