第十六話 Settlement
シジンは、赤と金で構成された豪華なローブを纏っていた。
だが顔が幼いからか、王様にはあまり見えない。
腰には、派手な装飾が成された金の長剣。
どう考えても、只者では無い。
「さーて、コリューメを助けることに成功したから、あとは僕を倒せばここから出られるよ」
「一つ、聞いて良いかな?」
「ん?」
「なんで、なんでフタメさんから全てを奪ったの?」
答えはすぐに返ってきた。
「この世界では戦争が行われているからねえ。それが当たり前なんだよ」
戦争。憲法九条によって、戦争をすることを禁じられ、平和に暮らしている私達には、画面、あるいはゲームの中の存在でしかない言葉。
「平和ボケしている君達日本人には分からないとは思うけどね」
「ああ。分からない。
少なくとも私には」
両拳を握る。
「さあ、始めようか。
もうお喋りにも飽きたし。終わりにしようよ」
そう言って、シジンは剣を抜く。
それを片手に持ち、子供のように不敵に笑う。
「――行くぞ、シジン!!」
敵の名を叫んでから、解放技を発動した。
拳が青く染まる。
全力でダッシュしながら、私は青く大きな火の玉を右手で生成した。
《炎弾》。
頭の中で、撃てと唱えると同時に、青い炎の弾丸がシジンに向かって放たれる。
青い火の玉が、シジンを飲み込む、と思った。
しかし炎弾は、不可視の壁に阻まれ。
反射した。
反射された炎弾を躱してから、シジンは口を開く。
「僕は君を倒す為に、沢山のアビリティを使えるようにしたよ。これはその一つ。《光線反射》。僕に遠距離技は効かない。残念だったね」
「うおおおおおッ!!」
両拳の青い炎の激しさを増す。
その炎は翼と化し、シジンの胸目掛けて放たれる。
ゲームの技・《炎翼之舞》。
これはゲームでも物理技扱いとなっている。
これなら当たる筈、だったが。
翼はシジンの剣に迎撃され、消滅した。
「次は僕の番だね。分からせてあげるよ。
力の差を」
シジンの瞳が鋭くなり。
私にも認識不可能な速度で、光のように突撃した。
「ッ!!」
気付けば私の左腕にシジンの長剣が深々と刺さっている。
次いでシジンは、何も持たない左手で。
私の腹を殴る。
「ぐほッ・・・・・・」
その攻撃で倒れる途中、シジンは長剣を抜き、胸に刺そうとした。
――ここで、終わりか。
考えてみれば、本物の軍人相手にここまでよく戦ったものだ。
もう、ここで諦めても・・・・・・。
その時だ。
何者かの、声が聞こえた。
『アサミ・・・・・・。アサミよ。
コリューメを、コリューメを守ってくれ』
脳裏に、その人物の顔が浮かんだ。
白くツンツンした髪を持つ、黒い服を纏う青年。
フタメの想い人――――フィナード。
私は、ここで負けるわけにはいかないんだ!!
眼を開ける。
シジンは剣を胸に突き立てようとしている。
だが、まだ避けられるかも知れない。
「うおおおおおッ!!」
私はそれを躱す。
着地したその時、変化が起きた。
両拳が青ではなく、金の光を放つ。
「・・・・・・。金色の拳のその姿、まるで神のようだね」
シジンが余裕そうに呟く。
「これが、私の神炎之拳!!」
かつてない、強い力。
今なら、何でも出来る。そんな気がした。
「見せてあげるよ。僕の力を!
絶対防御!!」
シジンの解放技。巨大な壁が、シジンの前に出現する。
「これで決まる。これを破れなければ、君はこの障壁から放たれる光に飲み込まれて死ぬぞ!」
「ならば、破るだけ!」
私は神の力に満たされた両拳で、炎の双拳最強技を放った。
《炎星爆裂》。全十六連攻撃。
星の輝きにも、炎の輝きにも見える、神々しい光が両手から放たれる。
拳と共に、光がシジンを守る壁に当たっていく。
「うおおおおおッ!!」
咆哮と共に、動きが加速する。
シジンも、声こそ聞こえないが、叫んでいた。
十六撃目の右拳によるストレートが、壁に当たった瞬間。
バリアにヒビが入り、ガラスが割れるような音と共に。
破壊された。
だが。
「僕は諦めない!」
右ストレートの体勢のまま、動けない私を倒そうと、シジンは目を細めて突きの構えに入り。
「はァァァァッ!!」
シジンの叫びと同時に、いくつもの事が同時に起こった。
津波、炎の翼、光の槍。
四天王が使っていた全ての解放技が、シジンの頭上に出現する。
「喰らえッ!!」
全てがシジンの剣に吸収され、シジンの突きが放たれる。
その時。一人の、右拳から十体の龍を出現させた少女が目の前に現れ。
龍は突き技を阻害し、光を飲み込もうとする。
「今だアサミ!」
「ありがとう、フタメさん!!」
最後の一撃が、私の右拳から放たれる。
神々しい光を放つ炎が、シジンの胸に突き刺さった。
「認めない。負けるわけにはいかない!!」
シジンは尚も抵抗を続ける。
「うおおおおおおッ!!」
「負けるものかァァァァッ!!」
勝ったのは、私の拳だった。
シジンの内から白い光が放たれ、宙を舞い。
彼の肉体は、内側から崩壊し。
爆散した。




