第十二話 Twin fists of two fire
次の階でアサミを待っていたのは、クールで爽やかなセイリューとは相反し、如何にも熱血青年とでも言うような容貌をした男だ。
逆立った赤い髪に、男らしい太い眉。見ているだけで暑苦しいオレンジの瞳。
服も、まるで祭りで着る法被のようなもので、胸をはだけている。
「よう、アンタがアサミか?」
その声も、容貌通りのものだ。まるで格闘ゲームの主人公のような感じの。
「そうだ。君は?」
「俺はスザーク。四天王の一人だ」
スザークと名乗る男が、拳を握る。私も反射的に、拳を握った。
「ほう。お前の戦闘スタイルも拳か、奇遇だな。
しかも炎の拳という点もな」
え、という声を出す前に。
スザークの拳が燃え上がり、アサミと同じような状態となった。
「炎の拳同士、どちらが強いか決着付けようじゃないか!」
スザークはそのまま、勢いよく私に向かって駆け出した。
私も玉砕覚悟で、彼に向かって突撃する。
まず放ったのは単純な右ストレート。相手も同じく右ストレート。
同じ型、同じタイミングで放たれた技が激突し、火花を散らし始め。
吹き飛ばされたのは、私の方だった。
「ぐほあッ!」
だがその時には、私は次の必殺技は始まっていた。
空中で両腕を交差させ、バッと開く。
「交差炎波!!」
この世界でも再現出来た事に驚きを隠せなかったが、交差された炎の波が、スザーク目掛けて一直線に飛んでいく。
元々ゲームの技であるこの技は、飛距離を増すごとに威力、飛行速度が共に上昇する。
故に回避することは不可能。
だがスザークは。
「甘いな! お前にそれが出来るって事は、俺にも出来るって事なんだよッ!」
私が放った炎波を、同じ交差炎波で迎撃し、破壊した。
「技さえ分かれば、こっちのモンよ」
「くッ・・・・・・。青炎之拳!」
その叫びと同時に、拳の炎が青く染まる。
右掌を前に出し、左手を右腕の関節に添えて、右掌のみに集中する。
本来ならオレンジの炎弾が出来るが、今回は青い火の玉が出現した。
「炎弾!」
勢いよく放たれた炎の弾丸が、スザーク目掛けて飛んでいく。
炎弾は交差炎波と違い、飛距離が伸びる毎に威力が下がるが、速度が上がるという性質は同じ。ただし炎弾の方が、飛んでいく速度が倍だ。
先のように、直前に対処したのではもう遅――
「炎弾!」
スザークの赤い火の玉が、青い炎弾に向かって放たれる。
青い炎弾はそのまま破壊された。
「甘いな。解放技のお手本を見せてやるよ。
はァァァァァッ!」
スザークの両腕から、バーナーのように炎が放射を開始する。
それはよく見ると、バーナーではなく。
翼のように見えた。
「喰らえ! 朱雀之翼!!」
炎の翼が、私を頭上から襲う。私はそれを何とか両拳で迎撃しながら、スザークに接近していく。
何とか一撃当てるんだ。
翼の攻撃を全て防ぎ、石畳を踏み込み、右拳を真っ直ぐ伸ばす。
私が普段やっているゲームでは《奪命拳》と呼ばれた必殺の一撃の構え。
「何ッ!」
「届けェェェェェェェェッ!」
仮想の心臓を貫く音が響き、スザークはそのまま倒れ、黒い影となり爆散した。
この爆散の音を聞く度に、私は人を殺したという罪の意識を覚える。
フタメを助ける為とは言え、人の命は奪いたくないのだが。
その時だ。
『あ、安心して。僕は倒せば死ぬけど、四天王は死なないようにしておいたよ。
君が人を殺したくないという性格なのは知ってるからね☆』
無邪気な声で、シジンが謂った。
息を吐き、私はまた上の階へ行く。
あと二人。あと二人で、フタメに会える。




