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汝は裏切り者なりや?3  作者: 心夜@カクヨムに移行
マグニ帝国の野望編
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第十話  Awakening of betrayal, a star of fire, challenging the blue sea

ここは、どこ?

 コリューメは辺りを見回す。

 誰も、いない。

 自分に何か特殊攻撃を行った上杉も、最後まで自分を支えようとしていたアサミも。

 暗い青一色で構成された世界が広がるのみで、自分以外の存在は感じ取れない。

「コリューメ」

 後方から声が。

 振り向くと、高貴な服に身を包む少年の姿がある。勿論コリューメ自身、彼の姿を見るのは初めてで、誰だか分からない。

「お前は、誰だ?」

「僕? 僕はマグニ帝国の皇帝。

シジンだよ」

 マグニ、帝国・・・・・・。

 その国の名前だけは聞き覚えがある。自分が生まれた家を焼き、父を殺し、母を殺し、何度も追いかけて自分達についてきてくれた仲間を殺した、憎き敵の国名。

 よくも笑顔で、自分に話しかけられたものだ。

「貴様が、貴様が私の父さんと母さんを殺した国の皇帝なのかッ!」

「君のお父さんの名は、ペテロだっけ。

その頃は、僕は皇帝じゃなかったよ。前皇帝――即ち僕の父が殺したんだと思うよ。

まあ君のお母さんや君のお仲間の一部を殺したのは僕だよ」

 その少年は無邪気に告げた。

 自分と自分の父が、コリューメの家族や仲間を殺したと。

 だから余計に辛かった。自分達の命が、どれだけ軽く扱われていたのかを、思い知らされたのだから。

「そっか・・・・・・。辛いよね。

だから、謝るよ」

 え?

 謝る、だと?

「謝ったところで、何になるんだ?」

「ふーん、でもこの話を聞いたら、そんな態度は取れなくなるよ」

 何?

 だがどんな話で釣ろうが、自分は皇帝なんかの為には動かな――。

「君のお父さんとお母さんに、会わせてあげられるかも知れないよ。

あとフィナードにも」

 え?

 そんなことが出来るわけがない。だって彼らは死んだじゃないか。

「出来るさ。完璧に再現したAIがある。

そのAIとなら、会わせてあげられる」

 たかがAIじゃないか、AIなんて所詮は作り物じゃないか。

 いや、もうAIでもいい。作り物では良い。あの日々が帰ってくるなら、五ヶ月間、自分と仲間を守りながら戦い、そしてクールながらも熱い心を持つフィナードを愛せるなら。

「どうやら君はフィナードに恋してたみたいだね。

じゃあそれを叶えてあげるけど、その前に条件があるんだ」

 シジンは一瞬だけ悪い顔をした。

「アサミ――北条朝美さんを殺してきて」

 え?

 アサミを?

「アサミの首と引き替えに、君のかつての暮らしを、幻想だけど返す。

これでいいかな?」

 本当に、これでいいのかな?

 自分はどうしたらいいのか分からなかった。

 

 

 ――いや。もういい。

 

 

 アサミなんてどうでも良い。

「腹は決まったみたいだね。

じゃあ、僕の右手に左手を添えて。

そうすれば、君はアサミが近付くと同時に目覚められる」

「分かった」

 そう言ってから、フタメは左手を添え始めた。

 その左手が右手に触れた瞬間、自分が今までやってきた事が全て無駄になるということは、理解出来ていた。

 でも永遠の幸せを約束してくれる幻想を与えてくれるなら、血塗られた不幸しか見えない現実なんていらない。

 もう、現実なんて見なくても。友の死と引き替えに、想い人と家族が帰ってくるのならそれで良い。

 ――アサミ、さようなら。

「ふ――」

 シジンは子供のように笑った。

 

◇◇◇

 

 敵の姿は、まるでファンタジー世界を思わせるような装いだ。

 青銀の鎧に身を包み、青い長髪、そして過不足なく整った顔。腰には長剣。

 現実の兵士と同じく火器や現代兵器で戦うと思っていたが、相手は剣で戦うらしい。

 敵は座りながら、ワイングラスを弄んでいた。

「君が最初の敵かな?」

「そうだ。我が名はセイリュー。マグニ帝国四天王の一人。

国民からは甘いマスクなどと言われているがね」

 それはどうでも良い情報な気がするけど・・・・・・。

「上の階に進みたければ、我を倒すしかないぞ」

 セイリューは剣を抜く。

 私も拳を握る。

 敵もアビリティを使えるかどうかは分からないが、それを考える余裕は無い。

 最初に駆け出したのは私だ。

 私がゲームで編み出した拳技の一つ。右手の手刀による右薙、左拳による三連続の刺突、そして右腕の上段斬り。オリジナル技《右重左軽(ウジュウサケイ)》。

 これは全て防がれてしまった。

「軍人でも無いただの人間にしては中々やるな。

次は私の番だ」

 両手で構えた敵の剣が淡い青に変化し、そのまま飛び上がって唐竹割りを私に向かって放つ。その剣を右手の籠手で受け止める。

 だが。

 剣の光が消えない。

 それが何故かは、すぐ明らかになった。

 僅かに、水が噴き出すような音が籠手と剣の間から聞こえる。

 そして剣から、膨大な水流が発生した。

「なにッ!?」

 その水流を回避することなど出来なかった。拳と剣の間から発生した水流は巨大な波となって私を押し流し、壁に激突する。

 よろよろと立ち上がった私の近くに、もう水流は存在しなかった。

 いるのは、青い長髪を持つ剣使いの青年のみ。

 バックステップしてしゃがみ、右手で手刀を作り、そのままバネのように跳躍する。オリジナル技《後退突(コウタイトツ)》。

 右手を覆っていた炎が激しくなり、そのままそれを青年の胸に打ち出す。

「らァァァァッ!」


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