ボス戦
俺「もう手を掴まなくていいぞ」
カエデ「ダメです!放しません!二人が遠くに行くまで放しません!」
俺「追わねぇよ、ビビらせるだけのつもりだ。それに...」
筋力ステータスはないが、俺とカエデの攻撃力の差から考えると、もしかしたらと思って手を上げてみたら、腕に絡み付いてるカエデを宙に浮かせた。
カエデ「あれ?」
俺「分かった?そもそもカエデちゃんでは俺を止められないんだ」
手を下ろしてカエデの足を地に着かせた。そして、カエデも俺の腕を解放した。
カエデ「どうして?」
俺「『どうして』なに?」
カエデ「どうしてわたくしを振り解きませんでした?いいえ、どうしてわたくしに『止められた』フリをしたのですか?」
赤鬼青鬼効果を狙っていたからだ...とカエデに説明したら、二度と「赤鬼青鬼ごっこ」ができなくなるだろう。
俺「どうでもいいことだ。それより『レベル上げ』だ。外に出るぞ」
カエデ「また人を殺しますの?」
俺「人じゃないものを斬って経験が得られるのなら、別に人じゃなくてもいいぞ」
カエデ「それなら訓練場に行きましょう!訓練場でなら人形を斬って経験を得られますわ。」
俺「ヒトモドキィ?それでどれだけの経験を得られるんだ?」
大して経験が入って来そうにない名前だな。
カエデ「えっと...少しずつ強くなっていきます!時間かかりますが、人を斬らずに経験を得られます!」
俺「思った通り効率の悪い方だな、パス」
町の外に出ることにした。
カエデ「待ってください、アマクモ様!」
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
とはいえ、「レベル上げ」だけにも飽きた。ストーリー形式ではないので、ミッションなどは自分で探しに行かないと始まらない。
なので、まずは「財布」と「地図」を買うことにした。
カエデを店の外に置いて、一人で店に入った。
俺「おやっさん、財布くれ」
おやっさん「人の店に入っていきなり強盗とはいい度胸してんな。ここが『武器屋』だって、忘れたわけじゃねぇだろうな?」
ノリのいい武器屋店主だから、ついつい弄りたくなる。
俺「違う。財布を売ってくれって言ってるんだ」
おやっさん「...ここが『武器屋』だって、忘れたわけじゃねぇだろうな?」
おやっさんがちょっと沈んだ声を出した。
俺「なんだ、ないのか。『武器屋』として恥ずかしいよ」
おやっさん「『武器屋』は財布まで売らねぇよ!『服屋』に行け、『服屋』!」
俺「『服屋』は服を売ってる所だろ?財布を売ってる訳ないじゃん?」
おやっさん「それでどうして『武器屋は財布を売ってる場所』って思えるんだ?布製のものは大体『服屋』で買えれる。ここは鉄製のものを売ってる場所だ」
銅製のものしかない癖に。
俺「じゃ、鍋をくれ」
おやっさん「ここは『武器屋』だっつうの!鍋が欲しければ『道具屋』に行け!もしくは『八百屋』、そんなら大体のものが揃ってる」
ふむふむ、「道具屋」に「八百屋」。まだまだ色んなお店があるね。
俺「『武器屋』なのに、防具を売ってるここは『武器屋』なのか?」
おやっさん「ただ喧嘩売りたいだけなら、買ってやろうか?あんちゃんのようなヒヨッコに弄られるほど、わしはお人好しじゃねぇよ」
おやっさんが喧嘩腰になってる。まだ1レベルしか上げてないから、相手したくないな。
俺「ってか、俺今日、殆ど金持ってねぇや。何も買えないかも」
おやっさん「ここがお金がなくても気安く入れる『武器屋』だが、敢えて聞くよ、あんちゃん。『お金もねぇのに何しに来た!?』」
俺「おやっさんがいい人だから、遊びに来た」
おやっさん「ここは子供の遊び場じゃねぇぞ、こら!」
店から追い出されてしまった。
外に出ると、カエデが猫と遊んでるところに出くわした。
カエデ「猫ちゃん猫ちゃん、あなたはどうしてこんなに可愛いのでしょう?」
猫はカエデを無視して、のんびりと日向ぼっこ...と思ったら、カエデが手を止めると「もっと撫でろ」とでも言いたげに頭を上げる。その所為で、カエデが離れようにも離れられないでいる。
俺「カエデ、行くぞ」
カエデ「お帰りなさい。あれ、何も買わなかったのですか?」
俺「買ってない。猫が欲しいなら、連れて帰ったら?」
カエデ「いいのですか!?」
俺「本気にするな!俺は流浪人だ、どこかに長く留まるつもりはない。猫がいたら邪魔になる」
カエデ「......」
カエデが無言になって、そして急に真っ赤な顔になった。
俺「どした?」
カエデ「い、いいえ!何でもありません!」
俺「そ」
さて、マジで財布と地図を買えに、「服屋」に行こうか。
カエデ「ごめんね、猫ちゃん。連れて帰ってやれませんの」
猫「にゃお」
カエデが声の太い猫と別れを告げ、俺の後ろについてきた。
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
俺「おばさん、鍋くれ、鍋」
おばさん「なべぇ?鍋買うなら武器屋に行きな!ウチは服屋だい」
服屋のおばさんにとって、鍋は武器屋で買えれるものらしい。
俺「いや、武器屋では売ってないんだ。だからこっちに来た」
おばさん「武器屋でも売ってねぇ鍋、何で服屋で買うね?しゃあないが、ウチに旧い鍋残ってるか見てくる。そこで待ちな」
おばさんが店の裏に行こうとした。
俺「いや、冗談!ごめん。別に鍋は要らないから」
おばさん「えっ?あ、がはははは。なんだ、冗談かいな!おばさん、本気にしちゃったよ。恥ずかしいね」
俺「いや...」
人の良いおばさんに俺の方が逆に恥ずかしい。
カエデ「おばさん、おはようございます」
おばさん「あら、カエデちゃん、いらっしゃい。今日も可愛いわね」
カエデ「か、可愛くありません!普通です」
おばさん「そんなことないわよ。今日も何かを買って、もっと可愛くなりなさいな」
カエデ「もう...」
茶番?
俺「随分、仲良くなったが、会うのは二回目だよな」
カエデ「え?あ、はい」
おばさん「カエデちゃんはいい子だからね。あんたも見習いなさいよ」
俺「黙れ、ババァ」
おばさん「んまぁ、この子ったら!」
俺「でさ、地図買いたいんだが...こんな古臭い店では置いてるわけないよな」
おばさん「古臭くて悪かいな!カエデちゃん、もうこんな男を捨てな!一緒にいて良い事ないね」
カエデ「え、えっと、私は...」
俺「ある?ない?どっち?」
おばさん「あるよ!カエデちゃんに免じてあんたに売るけど、値段二倍よ」
物自体はあるのだな。
俺「カエデちゃんがいい子だから、『いいカモ』だと思ってたかるつもり?」
おばさん「人聞きの悪いことを言わんでな!わかーた、通常の値段で売るね。そこの店員に聞きな」
俺「また『店員に』?ここはおばさんの店だろう?ちょっと無責任じゃないのか?」
おばさん「...あんたのような客を引いちまった、こっちの運の尽きなのかね」
おばさんが店の奥に引っ込んだ。このまま引き篭りになるのかね。
それはちょっと困るが、「ちょっと」だけなので、特に気に留めなかった。
昨日の店員にちょっかい出そう。
俺「へぃ、ベイビー、財布出せ」
店員「ぐちゃ、ぐちゃ...」
相変わらず何かを食っている。
俺「うがあああ!」
店員「ひっ」
昨日と同じように威嚇してみたが、今回の店員の反応がちょっと変わった。
店員「び、ビビらないから」
なんと!逃げ出さなかった。しかも、逆らうような態度を取った。
これは良くない、強い個性を芽生え始めた象徴だ。
店の店主ならこのくらいの個性があっても問題はないが、「店員」ならNPCの一種、強い個性がなく行動は単純で読みやすい。
しかし、「怖がっているが反抗する」という複雑な行動を取ったら、NPCじゃなく「固定NPC」となる、「店主レベル」なNPCになる。もし、これ以上に名前を付けられて、俺にその名前を聞かせれば、「ユニークNPC」となる、「カエデレベル」なNPCになる。
カエデに続きヒイラギ・トオル...役立たずだけが増えていくこの現状に、さらに「服屋の店員」が増えるのは避けたい。どうしても避けたい!
俺「すみません。財布と地図を売って頂けませんか?」
カエデ「え!?」
店員「ぐちゃ、ぐちゃ...300」
俺「三百ですね。カエデ、お金」
カエデ「え?あ、は、はい!」
カエデが細かいお金を出した。
店員「小銭ばっか」
俺「すみません。財布を持ってませんでしたので、はい」
店員「ぐちゃ、ぐちゃ...はい。もう人をビビらせんな」
俺「はい、すみません」
財布をカエデに渡して、地図を持ったまま店の外に出た。
カエデ「アマクモ様!アマクモ様、どうしたのですか?どうしていきなり...『礼儀正しい人』になったのですか?」
俺「大変に『礼儀正しい』君が大分失礼なことを言っているのに気づいていますか?」
カエデ「言葉選ばず、申し訳ありませんでした。しかし、先ほどのアマクモ様はあまりにも今までのと違くて、とても驚きました。どうしたのですか?」
俺「気にするな。時々に現れる第二の人格だ」
カエデを無視して、地図を見ながら町を出た。
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
俺「氏ね」
浮浪者C「ぎゃああ」
いつものように一撃で浮浪者を切った。
浮浪者狩りで大分レベルも上がり、金も溜まった。用心に一度宿屋に戻って回復した方がいいと思うが、冒険が俺を呼んでるので次の町に行くことにした。
カエデ「アマクモ様。もしかして『かがり城』に向かっていますか?」
俺「あぁ、新しい出会いが欲しくて」
戦場で役に立たないカエデを「荷物持ち」扱いしたが、結局大した量しか持てないようなので、地図を渡して「ナビゲーター」として使うことにした。
カエデ「どうしてまたそんなところに...?『かがり城』と言えば、女城主が支配している『女性至上主義』の城ですよ!数多くの『女性都市』の中でも特に差別が酷く、男性は奴隷として扱うような場所ですわ。どうして男性であるアマクモ様がそのような場所に行くのです?」
俺「一番近いから」
カエデ「そのような理由で、ですか...実は異性に支配されるの方がお好きな方ですか?」
俺「『同性にでも支配されたくない我の強い方』だ」
カエデ「でしたら、どうしてかがり城に向かうのです?」
俺「避けて通れない場所だから」
カエデ「十分避けて通れる場所ですわ...。分かりました。これ以上、その理由について訊きません。では、どうして歩きで行こうとしているのです?」
俺「他に行く方法はあるのか?」
馬とか。
カエデ「馬車を...資金的に無理ですね。馬では荷物を置ける場所がありません。わたくし、乗れませんし...歩きしかありませんね」
この世界の交通手段は主に馬車のようだ。
カエデ「でも、一人旅は危険が沢山...わたくしは戦いに役に立ちません、人数に数えられません...ですから、わたくしが言いたいのは、どうして三日後に出発する旅団を待ち、一緒に行くことをしないのですか?」
俺「旅団?西風の?」
カエデ「あ、なるほどです!」
カエデがパッと合掌した。
カエデ「『旅団』というのは、村から村へと移動する時に守ってくれる『護衛』のようなものですわ。個人で雇う『護衛』と違って、大勢の人をある場所からある場所へと、同じ日同じ時間に一度に護衛する...どちらかと言うと『傭兵』に近いのかしら...そのようなもの。護衛する人数が多ければ多いほど料金も安くなるが、一定人数に達するとそれ以上の人の護衛をしてくれません。後は、何かのルールがあるみたいで、そのルールは...えっと...なんでしたっけ?」
俺「途切れたな」
説明キャラになって最後まで説明するかと思った。
カエデ「ごめんなさい。わたくしも知ってはいるのですが、利用したことがありませんので、詳しくは知りません」
俺「あそ。それでも俺は利用しないけどな」
カエデ「でしからどうして...」
女強盗A「止まれ!」
女強盗B「痛い目に遭いたくなければ、大人しくしろ!」
女盗賊が現れた。
カエデ「...町の外は危険が沢山...どうして歩きで行こうとしたのですか!」
この「女盗賊」と言う敵はたぶん「浮浪者」より上位だろう。丁度「浮浪者狩り」に飽きてきて、そろそろ新しい――というか手応えのある敵と戦いたいと思っていた。
俺「ヘイヤ!」
女盗賊B「ぎゃあああああ!」
戦士イズルの攻撃、女盗賊Bに89のダメージを与えた。
女盗賊Bを倒した。
えぇぇ、また一撃?この剣がちょっと強すぎないか?バランスブレイカー?
女盗賊A「ヤッ!」
女盗賊Aが襲い掛かる、戦士イズルは32のダメージを負った。
俺「しかし一撃っ!」
女盗賊A「ぎゃあああああ!」
戦士イズルの攻撃、女盗賊Bに86のダメージを与えた。
女盗賊Aを倒した。
経験値はは44P増加した。
カエデ「また、人を殺しました...」
俺「まだそんなことを言ってるのか?もう覚悟を決めれ」
カエデ「ずっと天山城の中で暮らせば、人も殺さなくて済みます。お金の事も、普通に働いていれば手に入ります。どうして、人を殺し続けるのです?」
俺「浮浪者じゃなくなった途端で『人を殺すな』の話をぶり返す。逆に浮浪者が斬られる事に慣れてきたと思っていいんだな」
カエデ「そういうことではないのです!ただ、アマクモ様はこれからも色々なところに行って、色々な人を斬るのではないかって、とても心配です」
俺「心配するな。その予定だ」
カエデ「そんな...」
浮浪者「か、金を出せ!」
俺「ヘイヤ!」
浮浪者「ぎゃあああああ!」
戦士イズルの攻撃、浮浪者に123のダメージを与えた。
浮浪者を倒した。
経験値は10P増加した。
呼吸するかのように浮浪者を切り捨てた。
つうか、飽きた!浮浪者もう出てくんな!
カエデ「アマクモさっ...」
浮浪者「か、金を出せ!」
俺「また!?ヘイヤ!」
浮浪者「ぎゃあああああ!」
戦士イズルの攻撃、浮浪者に133のダメージを与えた。
浮浪者を倒した。
経験値は10P増加した。
エンカウント率高すぎないか?
カエデ「帰りましょう、アマクモ様!どんどん危険が増えていく事に気付いているのでしょう?」
俺「確かにうぜぇ。でも、それが問題ではない」
先を急ぐことにした。
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
先に進めば進むほど、女盗賊に出会う確率が高くなる。レベルの上昇速さも上がっている。
切り替えのないフィールドマップ形式?町から外に出る時も切り替えはなかったので、町が進行形で破壊されることもある世界だ。
そして、両側の山によって道がだんだんと狭くなっていく。谷だ。
カエデ「ここは一人旅の人がよく行方不明になる場所です。アマクモ様、ここを通るにはある程度のレベルがないとダメですわ。お願いです、一度帰りましょう」
俺「またもメタ発言。この世界においてはそうでもないのか?何レベルなら通っていいんだ?」
カエデ「出来ればレベル15、最低限でもレベル10が欲しいところです」
俺「レベル1から始め、次の町に行くまでレベル15に!?そんな待ってられるか!」
最低限のレベル10まで上がっているので、気にせず進むことにした。
カエデ「あ、アマクモ様!ならば、仲間を集めてから行きましょう!一人旅の人には本当に危険です!」
俺「集めても、お前のような奴しか集まらないでしょう?危険ならお前だけ先に帰れ」
カエデ「帰れません!アマクモ様を一人に致しません!あ、でも、でもでも!わたくし一人で帰るのはとても無理です!攻撃力0で、辿り着く前にヤられちゃいます!アマクモ様、私を守って、一緒に帰りましょう!」
図々しい...
無視して進もう。
そして、恐らく一番奥の場所で、ちょっと風変わりの女盗賊が立っていた。
俺「カエデ。あれ、見える?」
カエデ「え?何かですか?」
俺「人は見える?」
カエデ「人?どこにです?」
カエデは見えない。
少し女盗賊に近づく...反応が見られない。
そこは多分イベントポイントだ。一定距離まで近づけばイベントが発生し、特殊な物語を体験できる。
女盗賊の格好だから、仲間になるか、ボス戦になるのか、そのどちらだな。
仲間になってくれると嬉しいな。職業は盗賊だが、初期ならこんなもんだろう。
でも、時期的には「ボス戦」だな。ずっと女盗賊とエンカウント続きだし、そのボスだろう。
ちょっと考えよう:命は一回だけ、やり直しは効かない。死んだら、時期を変えて別人に生まれ変わることは出来るが、続きをやることも、レベル1に戻って最初からやり直しも、絆のあるユニークNPCと関わりのある人に生まれ変わるのも全部ダメ。死は死、救済措置はない。慎重に進めないといけない。
だから考える:まだこの世界に未練がないうちに、一度「死」を体験した方がいいじゃない?やり込んで未練たらたらになって、そしていきなり死んで全てを失って、「何このクソゲー!」と罵りながら物に怒りを散らしまくって、他のことをして暫く触らないことにして、それでも「やはりまだちょっとやりたい」とついついまたやり始めて、「また死ぬんじゃないか?」とビビりながらビクビクしながら一からやり直し、「あの時のキャラならあんなことも出来たんだな」と昔のことを思い出しながら残念しながら、続きをする...嫌だな、凄く嫌だな!そうするくらいなら一度破壊して、世界そのものを作り直す方がいい!
よし、ボス戦に挑もう!
前に進む。
女盗賊アサガオが現れた。
アサガオ?いい名前だ。
アサガオ「そこで足を止めろ。少年、ここは通行禁止だと知らなかった?」
俺「知らない。天下の道に『通り禁止』なんておかしいだろう」
アサガオ「あぁ、男にだけな。この先は女の城、男が行っていい場所じゃない」
俺「そか。じゃ帰る」
アサガオ「おっと!折角来たんだから、ゆっくりしていけよ」
女盗賊アサガオが仲間を呼んだ。
女盗賊Aが現れた。女盗賊Bが現れた。女盗賊Cが現れた。
一度発動したイベントを一時中止できないシステムか?
それはともかく、1人+オマケVSボス+3人のはキツイのかな?
俺「仲間になってくれ9?」
女盗賊アサガオ「身に付けてるもの全部外して消えろ。そうすれば、命だけは残してやる」
俺「お、選択肢だ!交渉によって選択肢が出るシステムか?」
女盗賊アサガオ「しすてむ?訳のわかんない事を言う子だね。で、どうする?生きる?死ぬ?」
俺「『死ぬ』。つまりさっさとやろう!」
女盗賊アサガオ「あぁ、そう?」
女盗賊アサガオ「掛かってくるといい!」
女盗賊アサガオが構えた。
構え?それは「行動」の一種か?
試してみよう。
戦士イズルが構えた。
出来た!?それで何になるんだ?
女盗賊A「ヤ!」
女盗賊Aが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに0のダメージを与えた。
女盗賊B「ヤ!」
女盗賊Bが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに0のダメージを与えた。
女盗賊C「ヤ!」
女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに0のダメージを与えた。
俺へのダメージ全部0だ!構えというものは防御と同じか?
カエデ「アマクモ様!大丈夫ですか?」
娘カエデが心配そうに見守っている。
カエデが行動した。
攻撃力0の奴が出来る行動は限られている。そうと分かっても、「心配そうに」「見守っている」って...
女盗賊アサガオ「どうした!掛かって来ないのか?」
女盗賊アサガオが構えた。
これは、イージーモードなのか?先に攻撃しないとボスに攻撃されない?
まあいい。
女盗賊A「ぎゃあああああ」
戦士イズルの攻撃、女盗賊Aに82のダメージを与えた。
女盗賊Aを倒した。
女盗賊B「ヤ!」
女盗賊Bが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに34のダメージを与えた。
女盗賊C「ヤ!」
女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに41のダメージを与えた。
カエデ「アマクモ様!怪我をしています!」
娘カエデが心配そうに見守っている。
女盗賊アサガオ「よくもあたしを無視した!」
女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに81のダメージを与えた。
残りHPが324と約四分の一も減った。痛いな。
女盗賊B「ぎゃあああああ」
戦士イズルの攻撃、女盗賊Bに90のダメージを与えた。
女盗賊Bを倒した。
女盗賊C「ヤアアア!」
女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。会心の一撃。戦士イズルに65のダメージを与えた。
会心の一撃!?
カエデ「きゃあ!アマクモ様!」
娘カエデが心配そうに見守っている。
心配そうにしているけど、見てるだけだな。
女盗賊アサガオ「子分二人も殺したな!」
女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに90のダメージを与えた。
残りHPが169...負けるかも。
でも、敢えて負けるつもりは無い。
戦士イズルがポーションを使った。HPが200回復した。
女盗賊C「ヤ!」
女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに40のダメージを与えた。
カエデ「アマクモ様!大丈夫ですか?」
娘カエデが心配そうに見守っている。
カエデの言葉がパターン化してる。
女盗賊アサガオ「ハッ!」
女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに105のダメージを与えた。
そういえば、技一つ覚えてたっけ?
俺「薙ぎ払え、『横切一閃』!」
戦士イズルの攻撃、女盗賊Cに122のダメージ、女盗賊アサガオに92のダメージを与えた。
女盗賊C「ぎゃあああああ」
女盗賊Cを倒した。
名前もかっこよくないし、技も普通に「前列にいる敵を同時に攻撃する」という変哲もないものだが、ターン制のシステムではやはり「全体攻撃」は大事だ。
ちなみに、MPは10点使う技なので、残り153点になってた。
何で技使うのにMPを使うんだ?CPがあるように設定するべきだった。
カエデ「凄いです、アマクモ様」
娘カエデが心配そうに見守っている。
それでも「心配そうに」しているのか。
女盗賊アサガオ「ハッ!」
女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに95のダメージを与えた。
仲間全員殺されたのに何の反応もなし?いや、過度に求めてはいけない。
カエデの所為で、敵一人殺す度に、何かの反応を求めるようになってるのか、俺は?直さなくてはな。
俺「『縦切り』!」
戦士イズルの攻撃、女盗賊アサガオに100のダメージを与えた。
技を使ったのに、攻撃力は変わらない。MPを無駄にした。
あ、ヤバイ。HPは後129しかない。補充するのを忘れてた。
もし、アサガオちゃんが「会心の一撃」を使ったら...
カエデ「危ないです、アマクモ様!」
娘カエデが薬草を使った。戦士イズルのHPが200回復した。
あっぷねぇ!命拾いした。役に立つんじゃん、娘カエデちゃん!
だけど、あっれぇぇぇ...?ま、こんなこともあるよ。道具は勝手に使われるが、都合のいい回復役を得たことに喜ぼう。
女盗賊アサガオ「ハッ!」
女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに95のダメージを与えた。
さて、もし女盗賊アサガオが自分のHPを回復できない場合、今まで拾った薬草の量なら何とか勝てるはずだ。HPがありえないくらい高いとか、回復できる上に一度の回復値が俺からのダメージ値より上回るとか、MPの消費量が少なく、もしくはMPの総量が高くとか...そういった特殊要素がなければ俺は勝てるが、そんな簡単じゃないよな。
・・・・・・
女盗賊アサガオ「ぐっ...」
女盗賊アサガオを倒した。
経験値は1259P増加した。
戦士イズルのレベルが1上がった。
娘カエデのレベルが1上がった。
予想通りに勝っちまった...
それでいいんだよ!予想通りにならなかったらならなかったって、俺は理不尽に怒るくせに、なぜ予想通りになったら俺は失望するんだ?
カエデ「よかった、アマクモ様が無事で...」
カエデが女盗賊三人死んだことより、俺の無事に喜んだ。心優しき少女のその「心」が石になっていく偉大なる一歩だ。
女盗賊アサガオ「まさか、これほどの手練れだとは...」
俺「お、生きてる!やっぱりユニークNPCだな。で、仲間になってくれる気になった?」
女盗賊アサガオ「このあたしに屈辱を味わわせた事、無事でいられると思う?」
俺「あれ?俺が勝ったよ?死にたいのか?」
仲間になってくれない方のNPCか。トドメ刺そうか?
俺「ん?」
お腹から刀が生まれた...HPが急に減っていく...どういうこと?
あれ?後ろに同じ顔の女盗賊が現れた!
女盗賊ユウガオ「初めましてこんばんは、ハナバチ ユウガオですわ。あたしと初対面の人は大体死にますが、もしまた会えましたら、仲良くしましょ」
カエデ「きゃああああ!アマクモ様ぁ!」
嘘だろう...?勝ったのに、イベント死するのか、俺は?
そんなの、ただのクソ...
目の前が真っ黒。
ハナバチ アサガオ:花蜂 朝顔
ハナバチ ユウガオ:花蜂 夕顔