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ボス戦

 俺「もう手を掴まなくていいぞ」

 カエデ「ダメです!放しません!二人が遠くに行くまで放しません!」

 俺「追わねぇよ、ビビらせるだけのつもりだ。それに...」


 筋力ステータスはないが、俺とカエデの攻撃力の差から考えると、もしかしたらと思って手を上げてみたら、腕に絡み付いてるカエデを宙に浮かせた。


 カエデ「あれ?」

 俺「分かった?そもそもカエデちゃんでは俺を止められないんだ」


 手を下ろしてカエデの足を地に着かせた。そして、カエデも俺の腕を解放した。


 カエデ「どうして?」

 俺「『どうして』なに?」

 カエデ「どうしてわたくしを振り解きませんでした?いいえ、どうしてわたくしに『止められた』フリをしたのですか?」


 赤鬼青鬼効果を狙っていたからだ...とカエデに説明したら、二度と「赤鬼青鬼ごっこ」ができなくなるだろう。


 俺「どうでもいいことだ。それより『レベル上げ』だ。外に出るぞ」

 カエデ「また人を殺しますの?」

 俺「人じゃないものを斬って経験が得られるのなら、別に人じゃなくてもいいぞ」

 カエデ「それなら訓練場に行きましょう!訓練場でなら人形(ヒトモドキ)を斬って経験を得られますわ。」

 俺「ヒトモドキィ?それでどれだけの経験を得られるんだ?」


 大して経験が入って来そうにない名前だな。


 カエデ「えっと...少しずつ強くなっていきます!時間かかりますが、人を斬らずに経験を得られます!」

 俺「思った通り効率の悪い方だな、パス」


 町の外に出ることにした。


 カエデ「待ってください、アマクモ様!」



 +×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×


 とはいえ、「レベル上げ」だけにも飽きた。ストーリー形式ではないので、ミッションなどは自分で探しに行かないと始まらない。

 なので、まずは「財布」と「地図」を買うことにした。

 カエデ(荷物)を店の外に置いて、一人で店に入った。


 俺「おやっさん、財布くれ」

 おやっさん「人の店に入っていきなり強盗とはいい度胸してんな。ここが『武器屋』だって、忘れたわけじゃねぇだろうな?」


 ノリのいい武器屋店主だから、ついつい弄りたくなる。


 俺「違う。財布を売ってくれって言ってるんだ」

 おやっさん「...ここが『武器屋』だって、忘れたわけじゃねぇだろうな?」


 おやっさんがちょっと沈んだ声を出した。


 俺「なんだ、ないのか。『武器屋』として恥ずかしいよ」

 おやっさん「『武器屋』は財布まで売らねぇよ!『服屋』に行け、『服屋』!」

 俺「『服屋』は服を売ってる所だろ?財布を売ってる訳ないじゃん?」

 おやっさん「それでどうして『武器屋は財布を売ってる場所』って思えるんだ?布製のものは大体『服屋』で買えれる。ここは鉄製のものを売ってる場所だ」


 銅製のものしかない癖に。


 俺「じゃ、鍋をくれ」

 おやっさん「ここは『武器屋』だっつうの!鍋が欲しければ『道具屋』に行け!もしくは『八百屋』、そんなら大体のものが揃ってる」


 ふむふむ、「道具屋」に「八百屋」。まだまだ色んなお店があるね。


 俺「『武器屋』なのに、防具を売ってるここは『武器屋』なのか?」

 おやっさん「ただ喧嘩売りたいだけなら、買ってやろうか?あんちゃんのようなヒヨッコに弄られるほど、わしはお人好しじゃねぇよ」


 おやっさんが喧嘩腰になってる。まだ1レベルしか上げてないから、相手したくないな。


 俺「ってか、俺今日、殆ど金持ってねぇや。何も買えないかも」

 おやっさん「ここがお金がなくても気安く入れる『武器屋』だが、敢えて聞くよ、あんちゃん。『お金もねぇのに何しに来た!?』」

 俺「おやっさんがいい人だから、遊びに来た」

 おやっさん「ここは子供の遊び場じゃねぇぞ、こら!」


 店から追い出されてしまった。

 外に出ると、カエデが猫と遊んでるところに出くわした。


 カエデ「猫ちゃん猫ちゃん、あなたはどうしてこんなに可愛いのでしょう?」


 猫はカエデを無視して、のんびりと日向ぼっこ...と思ったら、カエデが手を止めると「もっと撫でろ」とでも言いたげに頭を上げる。その所為で、カエデが離れようにも離れられないでいる。


 俺「カエデ、行くぞ」

 カエデ「お帰りなさい。あれ、何も買わなかったのですか?」

 俺「買ってない。(それ)が欲しいなら、連れて帰ったら?」

 カエデ「いいのですか!?」

 俺「本気にするな!俺は流浪人だ、どこかに長く留まるつもりはない。猫がいたら邪魔になる」

 カエデ「......」


 カエデが無言になって、そして急に真っ赤な顔になった。


 俺「どした?」

 カエデ「い、いいえ!何でもありません!」

 俺「そ」


 さて、マジで財布と地図を買えに、「服屋」に行こうか。


 カエデ「ごめんね、猫ちゃん。連れて帰ってやれませんの」

 猫「にゃお」


 カエデが声の太い猫と別れを告げ、俺の後ろについてきた。



 +×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×


 俺「おばさん、鍋くれ、鍋」

 おばさん「なべぇ?鍋買うなら武器屋に行きな!ウチは服屋だい」


 服屋のおばさんにとって、鍋は武器屋で買えれるものらしい。


 俺「いや、武器屋では売ってないんだ。だからこっちに来た」

 おばさん「武器屋でも売ってねぇ鍋、何で服屋で買うね?しゃあないが、ウチに旧い鍋残ってるか見てくる。そこで待ちな」


 おばさんが店の裏に行こうとした。


 俺「いや、冗談!ごめん。別に鍋は要らないから」

 おばさん「えっ?あ、がはははは。なんだ、冗談かいな!おばさん、本気にしちゃったよ。恥ずかしいね」

 俺「いや...」


 人の良いおばさんに俺の方が逆に恥ずかしい。


 カエデ「おばさん、おはようございます」

 おばさん「あら、カエデちゃん、いらっしゃい。今日も可愛いわね」

 カエデ「か、可愛くありません!普通です」

 おばさん「そんなことないわよ。今日も何かを買って、もっと可愛くなりなさいな」

 カエデ「もう...」


 茶番?


 俺「随分、仲良くなったが、会うのは二回目だよな」

 カエデ「え?あ、はい」

 おばさん「カエデちゃんはいい子だからね。あんたも見習いなさいよ」

 俺「黙れ、ババァ」

 おばさん「んまぁ、この子ったら!」

 俺「でさ、地図買いたいんだが...こんな古臭い店では置いてるわけないよな」

 おばさん「古臭くて悪かいな!カエデちゃん、もうこんな男を捨てな!一緒にいて良い事ないね」

 カエデ「え、えっと、私は...」

 俺「ある?ない?どっち?」

 おばさん「あるよ!カエデちゃんに免じてあんたに売るけど、値段二倍よ」


 物自体はあるのだな。


 俺「カエデちゃんがいい子だから、『いいカモ』だと思ってたかるつもり?」

 おばさん「人聞きの悪いことを言わんでな!わかーた、通常の値段で売るね。そこの店員に聞きな」

 俺「また『店員に』?ここはおばさんの店だろう?ちょっと無責任じゃないのか?」

 おばさん「...あんたのような客を引いちまった、こっちの運の尽きなのかね」


 おばさんが店の奥に引っ込んだ。このまま引き篭りになるのかね。

 それはちょっと困るが、「ちょっと」だけなので、特に気に留めなかった。

 昨日の店員にちょっかい出そう。


 俺「へぃ、ベイビー、財布出せ」

 店員「ぐちゃ、ぐちゃ...」


 相変わらず何かを食っている。


 俺「うがあああ!」

 店員「ひっ」


 昨日と同じように威嚇してみたが、今回の店員の反応がちょっと変わった。


 店員「び、ビビらないから」


 なんと!逃げ出さなかった。しかも、逆らうような態度を取った。

 これは良くない、強い個性を芽生え始めた象徴だ。

 店の店主ならこのくらいの個性があっても問題はないが、「店員」ならNPCの一種、強い個性がなく行動は単純で読みやすい。

 しかし、「怖がっているが反抗する」という複雑な行動を取ったら、NPCじゃなく「固定NPC」となる、「店主レベル」なNPCになる。もし、これ以上に名前を付けられて、俺にその名前を聞かせれば、「ユニークNPC」となる、「カエデレベル」なNPCになる。

 カエデに続きヒイラギ・トオル...役立たずだけが増えていくこの現状に、さらに「服屋の店員」が増えるのは避けたい。どうしても避けたい!


 俺「すみません。財布と地図を売って頂けませんか?」

 カエデ「え!?」

 店員「ぐちゃ、ぐちゃ...300(さんぜろぜろ)

 俺「三百ですね。カエデ、お金」

 カエデ「え?あ、は、はい!」


 カエデが細かいお金を出した。


 店員「小銭ばっか」

 俺「すみません。財布を持ってませんでしたので、はい」

 店員「ぐちゃ、ぐちゃ...はい。もう人をビビらせんな」

 俺「はい、すみません」


 財布をカエデに渡して、地図を持ったまま店の外に出た。


 カエデ「アマクモ様!アマクモ様、どうしたのですか?どうしていきなり...『礼儀正しい人』になったのですか?」

 俺「大変に『礼儀正しい』君が大分失礼なことを言っているのに気づいていますか?」

 カエデ「言葉選ばず、申し訳ありませんでした。しかし、先ほどのアマクモ様はあまりにも今までのと違くて、とても驚きました。どうしたのですか?」

 俺「気にするな。時々に現れる第二の人格だ」


 カエデを無視して、地図を見ながら町を出た。



 +×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×


 俺「氏ね」

 浮浪者C「ぎゃああ」


 いつものように一撃で浮浪者を切った。

 浮浪者狩りで大分レベルも上がり、金も溜まった。用心に一度宿屋に戻って回復した方がいいと思うが、冒険が俺を呼んでるので次の町に行くことにした。


 カエデ「アマクモ様。もしかして『かがり城』に向かっていますか?」

 俺「あぁ、新しい出会いが欲しくて」


 戦場で役に立たないカエデを「荷物持ち」扱いしたが、結局大した量しか持てないようなので、地図を渡して「ナビゲーター」として使うことにした。


 カエデ「どうしてまたそんなところに...?『かがり城』と言えば、女城主が支配している『女性至上主義』の城ですよ!数多くの『女性都市』の中でも特に差別が酷く、男性は奴隷として扱うような場所ですわ。どうして男性であるアマクモ様がそのような場所に行くのです?」

 俺「一番近いから」

 カエデ「そのような理由で、ですか...実は異性に支配されるの方がお好きな方ですか?」

 俺「『同性にでも支配されたくない我の強い方』だ」

 カエデ「でしたら、どうしてかがり城に向かうのです?」

 俺「避けて通れない場所だから」

 カエデ「十分避けて通れる場所ですわ...。分かりました。これ以上、その理由について訊きません。では、どうして歩きで行こうとしているのです?」

 俺「他に行く方法はあるのか?」


 馬とか。


 カエデ「馬車を...資金的に無理ですね。馬では荷物を置ける場所がありません。わたくし、乗れませんし...歩きしかありませんね」


 この世界の交通手段は主に馬車のようだ。


 カエデ「でも、一人旅は危険が沢山...わたくしは戦いに役に立ちません、人数に数えられません...ですから、わたくしが言いたいのは、どうして三日後に出発する旅団を待ち、一緒に行くことをしないのですか?」

 俺「旅団?西風の?」

 カエデ「あ、なるほどです!」


 カエデがパッと合掌した。


 カエデ「『旅団』というのは、村から村へと移動する時に守ってくれる『護衛』のようなものですわ。個人で雇う『護衛』と違って、大勢の人をある場所からある場所へと、同じ日同じ時間に一度に護衛する...どちらかと言うと『傭兵』に近いのかしら...そのようなもの。護衛する人数が多ければ多いほど料金も安くなるが、一定人数に達するとそれ以上の人の護衛をしてくれません。後は、何かのルールがあるみたいで、そのルールは...えっと...なんでしたっけ?」

 俺「途切れたな」


 説明キャラになって最後まで説明するかと思った。


 カエデ「ごめんなさい。わたくしも知ってはいるのですが、利用したことがありませんので、詳しくは知りません」

 俺「あそ。それでも俺は利用しないけどな」

 カエデ「でしからどうして...」


 女強盗A「止まれ!」

 女強盗B「痛い目に遭いたくなければ、大人しくしろ!」


 女盗賊が現れた。


 カエデ「...町の外は危険が沢山...どうして歩きで行こうとしたのですか!」


 この「女盗賊」と言う敵はたぶん「浮浪者」より上位だろう。丁度「浮浪者狩り」に飽きてきて、そろそろ新しい――というか手応えのある敵と戦いたいと思っていた。


 俺「ヘイヤ!」

 女盗賊B「ぎゃあああああ!」


 戦士イズルの攻撃、女盗賊Bに89のダメージを与えた。

 女盗賊Bを倒した。


 えぇぇ、また一撃?この剣がちょっと強すぎないか?バランスブレイカー?


 女盗賊A「ヤッ!」


 女盗賊Aが襲い掛かる、戦士イズルは32のダメージを負った。


 俺「しかし一撃っ!」

 女盗賊A「ぎゃあああああ!」


 戦士イズルの攻撃、女盗賊Bに86のダメージを与えた。

 女盗賊Aを倒した。

 経験値はは44P増加した。


 カエデ「また、人を殺しました...」

 俺「まだそんなことを言ってるのか?もう覚悟を決めれ」

 カエデ「ずっと天山城(てんさんじょう)の中で暮らせば、人も殺さなくて済みます。お金の事も、普通に働いていれば手に入ります。どうして、人を殺し続けるのです?」

 俺「浮浪者じゃなくなった途端で『人を殺すな』の話をぶり返す。逆に浮浪者が斬られる事に慣れてきたと思っていいんだな」

 カエデ「そういうことではないのです!ただ、アマクモ様はこれからも色々なところに行って、色々な人を斬るのではないかって、とても心配です」

 俺「心配するな。その予定だ」

 カエデ「そんな...」


 浮浪者「か、金を出せ!」

 俺「ヘイヤ!」

 浮浪者「ぎゃあああああ!」


 戦士イズルの攻撃、浮浪者に123のダメージを与えた。

 浮浪者を倒した。

 経験値は10P増加した。


 呼吸するかのように浮浪者を切り捨てた。

 つうか、飽きた!浮浪者もう出てくんな!


 カエデ「アマクモさっ...」


 浮浪者「か、金を出せ!」

 俺「また!?ヘイヤ!」

 浮浪者「ぎゃあああああ!」


 戦士イズルの攻撃、浮浪者に133のダメージを与えた。

 浮浪者を倒した。

 経験値は10P増加した。


 エンカウント率高すぎないか?


 カエデ「帰りましょう、アマクモ様!どんどん危険が増えていく事に気付いているのでしょう?」

 俺「確かにうぜぇ。でも、それが問題ではない」


 先を急ぐことにした。



 +×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×


 先に進めば進むほど、女盗賊に出会う確率が高くなる。レベルの上昇速さも上がっている。

 切り替えのないフィールドマップ形式?町から外に出る時も切り替えはなかったので、町が進行形で破壊されることもある世界だ。

 そして、両側の山によって道がだんだんと狭くなっていく。谷だ。


 カエデ「ここは一人旅の人がよく行方不明になる場所です。アマクモ様、ここを通るにはある程度のレベルがないとダメですわ。お願いです、一度帰りましょう」

 俺「またもメタ発言。この世界においてはそうでもないのか?何レベルなら通っていいんだ?」

 カエデ「出来ればレベル15、最低限でもレベル10が欲しいところです」

 俺「レベル1から始め、次の町に行くまでレベル15に!?そんな待ってられるか!」


 最低限のレベル10まで上がっているので、気にせず進むことにした。


 カエデ「あ、アマクモ様!ならば、仲間を集めてから行きましょう!一人旅の人には本当に危険です!」

 俺「集めても、お前のような奴しか集まらないでしょう?危険ならお前だけ先に帰れ」

 カエデ「帰れません!アマクモ様を一人に致しません!あ、でも、でもでも!わたくし一人で帰るのはとても無理です!攻撃力0(ゼロ)で、辿り着く前にヤられちゃいます!アマクモ様、私を守って、一緒に帰りましょう!」


 図々しい...

 無視して進もう。

 そして、恐らく一番奥の場所で、ちょっと風変わりの女盗賊が立っていた。


 俺「カエデ。あれ、見える?」

 カエデ「え?何かですか?」

 俺「人は見える?」

 カエデ「人?どこにです?」


 カエデは見えない。

 少し女盗賊に近づく...反応が見られない。

 そこは多分イベントポイントだ。一定距離まで近づけばイベントが発生し、特殊な物語を体験できる。

 女盗賊の格好だから、仲間になるか、ボス戦になるのか、そのどちらだな。

 仲間になってくれると嬉しいな。職業は盗賊だが、初期ならこんなもんだろう。

 でも、時期的には「ボス戦」だな。ずっと女盗賊とエンカウント続きだし、そのボスだろう。


 ちょっと考えよう:命は一回だけ、やり直しは効かない。死んだら、時期を変えて別人に生まれ変わることは出来るが、続きをやることも、レベル1に戻って最初からやり直しも、絆のあるユニークNPCと関わりのある人に生まれ変わるのも全部ダメ。死は死、救済措置はない。慎重に進めないといけない。

 だから考える:まだこの世界に未練がないうちに、一度「死」を体験した方がいいじゃない?やり込んで未練たらたらになって、そしていきなり死んで全てを失って、「何このクソゲー!」と罵りながら物に怒りを散らしまくって、他のことをして暫く触らないことにして、それでも「やはりまだちょっとやりたい」とついついまたやり始めて、「また死ぬんじゃないか?」とビビりながらビクビクしながら一からやり直し、「あの時のキャラならあんなことも出来たんだな」と昔のことを思い出しながら残念しながら、続きをする...嫌だな、凄く嫌だな!そうするくらいなら一度破壊して、世界そのものを作り直す方がいい!

 よし、ボス戦に挑もう!


 前に進む。

 女盗賊アサガオが現れた。


 アサガオ?いい名前だ。


 アサガオ「そこで足を止めろ。少年、ここは通行禁止だと知らなかった?」

 俺「知らない。天下の道に『通り禁止』なんておかしいだろう」

 アサガオ「あぁ、男にだけな。この先は女の城、男が行っていい場所じゃない」

 俺「そか。じゃ帰る」

 アサガオ「おっと!折角来たんだから、ゆっくりしていけよ」


 女盗賊アサガオが仲間を呼んだ。

 女盗賊Aが現れた。女盗賊Bが現れた。女盗賊Cが現れた。


 一度発動したイベントを一時中止できないシステムか?

 それはともかく、1人+オマケVS(バーサス)ボス+3人のはキツイのかな?


 俺「仲間になってくれ(ナイン)?」

 女盗賊アサガオ「身に付けてるもの全部外して消えろ。そうすれば、命だけは残してやる」

 俺「お、選択肢だ!交渉によって選択肢が出るシステムか?」

 女盗賊アサガオ「しすてむ?訳のわかんない事を言う子だね。で、どうする?生きる?死ぬ?」

 俺「『死ぬ』。つまりさっさとやろう!」

 女盗賊アサガオ「あぁ、そう?」


 女盗賊アサガオ「掛かってくるといい!」

 女盗賊アサガオが構えた。


 構え?それは「行動」の一種か?

 試してみよう。


 戦士イズルが構えた。


 出来た!?それで何になるんだ?


 女盗賊A「ヤ!」

 女盗賊Aが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに0のダメージを与えた。


 女盗賊B「ヤ!」

 女盗賊Bが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに0のダメージを与えた。


 女盗賊C「ヤ!」

 女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに0のダメージを与えた。


 俺へのダメージ全部0だ!構えというものは防御と同じか?


 カエデ「アマクモ様!大丈夫ですか?」

 娘カエデが心配そうに見守っている。


 カエデが行動した。

 攻撃力0の奴が出来る行動は限られている。そうと分かっても、「心配そうに」「見守っている」って...


 女盗賊アサガオ「どうした!掛かって来ないのか?」

 女盗賊アサガオが構えた。


 これは、イージーモードなのか?先に攻撃しないとボスに攻撃されない?

 まあいい。


 女盗賊A「ぎゃあああああ」

 戦士イズルの攻撃、女盗賊Aに82のダメージを与えた。

 女盗賊Aを倒した。


 女盗賊B「ヤ!」

 女盗賊Bが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに34のダメージを与えた。


 女盗賊C「ヤ!」

 女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに41のダメージを与えた。


 カエデ「アマクモ様!怪我をしています!」

 娘カエデが心配そうに見守っている。


 女盗賊アサガオ「よくもあたしを無視した!」

 女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに81のダメージを与えた。


 残りHPが324と約四分の一も減った。痛いな。


 女盗賊B「ぎゃあああああ」

 戦士イズルの攻撃、女盗賊Bに90のダメージを与えた。

 女盗賊Bを倒した。


 女盗賊C「ヤアアア!」

 女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。会心の一撃。戦士イズルに65のダメージを与えた。


 会心の一撃!?


 カエデ「きゃあ!アマクモ様!」

 娘カエデが心配そうに見守っている。


 心配そうにしているけど、見てるだけだな。


 女盗賊アサガオ「子分二人も殺したな!」

 女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに90のダメージを与えた。


 残りHPが169...負けるかも。

 でも、敢えて負けるつもりは無い。


 戦士イズルがポーションを使った。HPが200回復した。


 女盗賊C「ヤ!」

 女盗賊Cが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに40のダメージを与えた。


 カエデ「アマクモ様!大丈夫ですか?」

 娘カエデが心配そうに見守っている。


 カエデの言葉がパターン化してる。


 女盗賊アサガオ「ハッ!」

 女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに105のダメージを与えた。


 そういえば、技一つ覚えてたっけ?


 俺「薙ぎ払え、『横切一閃(よこぎりいっせん)』!」

 戦士イズルの攻撃、女盗賊Cに122のダメージ、女盗賊アサガオに92のダメージを与えた。

 女盗賊C「ぎゃあああああ」

 女盗賊Cを倒した。


 名前もかっこよくないし、技も普通に「前列にいる敵を同時に攻撃する」という変哲もないものだが、ターン制のシステムではやはり「全体攻撃」は大事だ。

 ちなみに、MPは10点使う技なので、残り153点になってた。

 何で技使うのにMPを使うんだ?CPがあるように設定するべきだった。


 カエデ「凄いです、アマクモ様」

 娘カエデが心配そうに見守っている。


 それでも「心配そうに」しているのか。


 女盗賊アサガオ「ハッ!」

 女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに95のダメージを与えた。


 仲間全員殺されたのに何の反応もなし?いや、過度に求めてはいけない。

 カエデの所為で、敵一人殺す度に、何かの反応を求めるようになってるのか、俺は?直さなくてはな。


 俺「『縦切り』!」

 戦士イズルの攻撃、女盗賊アサガオに100のダメージを与えた。


 技を使ったのに、攻撃力は変わらない。MPを無駄にした。

 あ、ヤバイ。HPは後129しかない。補充するのを忘れてた。

 もし、アサガオちゃんが「会心の一撃」を使ったら...


 カエデ「危ないです、アマクモ様!」

 娘カエデが薬草を使った。戦士イズルのHPが200回復した。


 あっぷねぇ!命拾いした。役に立つんじゃん、娘カエデちゃん!

 だけど、あっれぇぇぇ...?ま、こんなこともあるよ。道具は勝手に使われるが、都合のいい回復役を得たことに喜ぼう。


 女盗賊アサガオ「ハッ!」

 女盗賊アサガオが戦士イズルに襲い掛かる。戦士イズルに95のダメージを与えた。


 さて、もし女盗賊アサガオが自分のHPを回復できない場合、今まで拾った薬草の量なら何とか勝てるはずだ。HPがありえないくらい高いとか、回復できる上に一度の回復値が俺からのダメージ値より上回るとか、MPの消費量が少なく、もしくはMPの総量が高くとか...そういった特殊要素がなければ俺は勝てるが、そんな簡単じゃないよな。

 ・・・・・・


 女盗賊アサガオ「ぐっ...」

 女盗賊アサガオを倒した。

 経験値は1259P増加した。

 戦士イズルのレベルが1上がった。

 娘カエデのレベルが1上がった。


 予想通りに勝っちまった...

 それでいいんだよ!予想通りにならなかったらならなかったって、俺は理不尽に怒るくせに、なぜ予想通りになったら俺は失望するんだ?


 カエデ「よかった、アマクモ様が無事で...」

 カエデが女盗賊三人死んだことより、俺の無事に喜んだ。心優しき少女のその「心」が石になっていく偉大なる一歩だ。


 女盗賊アサガオ「まさか、これほどの手練れだとは...」

 俺「お、生きてる!やっぱりユニークNPCだな。で、仲間になってくれる気になった?」

 女盗賊アサガオ「このあたしに屈辱を味わわせた事、無事でいられると思う?」

 俺「あれ?俺が勝ったよ?死にたいのか?」


 仲間になってくれない方のNPCか。トドメ刺そうか?


 俺「ん?」


 お腹から刀が生まれた...HPが急に減っていく...どういうこと?

 あれ?後ろに同じ顔の女盗賊が現れた!


 女盗賊ユウガオ「初めましてこんばんは、ハナバチ ユウガオですわ。あたしと初対面の人は大体死にますが、もしまた会えましたら、仲良くしましょ」

 カエデ「きゃああああ!アマクモ様ぁ!」


 嘘だろう...?勝ったのに、イベント死するのか、俺は?

 そんなの、ただのクソ...


 目の前が真っ黒。

ハナバチ アサガオ:花蜂 朝顔

ハナバチ ユウガオ:花蜂 夕顔

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