スタート
主人公の名前は当て字で天雲 出流です。
最初は軽く世界設定。
そうだな、「女と男は遂に両陣営に分かれて、戦争を始めた」と。
「しかし、人の営みは必ず女と男、同性では子を作れない」ということにして、「戦争が終わること」を可能とする。
とはいえ、戦争を始めた理由もまた性別違いによるものであるから、闘争そのものはそう簡単に終わらない。その結果、「女盗賊団」・「女海賊衆」・「女性の村」が多く存在し、挙句の果てには「女性至上の城」までできてしまった。
しかし、女のみではやはり生きて行けないので、男は必要だ。まあ、つまりやることは「男」と同じ:男の盗賊は女を攫って玩具にすると同じ、女盗賊は男を攫って畜生扱い。「子産み女」と「種馬」の違いだ。
それだけだと、攫われた男は寧ろ幸運じゃないのかと思われるから面白くないので、扱いの違いを一つ増やそう。例えば、男は女に求めているのは「体」のみだが、女が男に求めるのは「体」と「力仕事担当」の両方としよう。そうすると、「攫われた男」は「攫われた女」と同じように辛い思いをして、逃げ出したいと思うようになれる。そういうことにさせよう。
それで、結局最後は男女共同に生活する社会が一番繁栄してると、男が女を守る社会が世界の正義と...これは設定しなくても、たぶんそうなる。
ただ、やはり女盗賊とか、女海賊とかによる被害が大きいので、「女は敵」ということになるだろう。男盗賊の方が何倍多いにもかかわらずにな。
よし、これで世界観の設定を終わりにしよ。次は好みの細かい設定を作ろう。
まずは、えっと、「敵を倒して経験値を積む、自動レベルアップ+転職」システム、パラメータは「攻撃力」・「防御力」・「素早さ」・「魔法力」の四つの成長不変値(基本は不変)に「ヒットポイント」・「マジックポイント」・「経験値」の三つの戦闘可変値。どっちも「上限なし」。人間の分際で、どこまで上がれるのかな?
あ、そそ、忘れてた!隠しパラメータとして「適性」も入れよう。魔法使いがいきなり盾を持ってナイトになったら、俺的には面白くないので、「転職」するとしても、個々人の個性を残ってもらおう。
う~ん、あと一つ。意外と設定しないと反映されたパラメータだが、「素質」または「才能」の有無を「有り」と設定しよう。元々男は女と体の出来が違う為、自動的に「男は身体能力が高い」ということになるのだが、そこを変えるつもりはない。けど、面白くする為、「男より強い女」が出やすいように、「才能有り」と設定しよう。
う~ん......うん、このくらいでいっか!他の世界設定はランダムにして、後は俺の「個人パラメータ」を「通常より少し上」ということにして、レベルはやはり1からで、世界を始めよっか!
世界創生、時間経過、身体形成、降臨!
さあ、始めよう!
Welcome to my world. I wish I can enjoy this one.
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
町のど真ん中に生まれ落ちた。
年齢は18歳、成人していないが成人だ。
身に着けてる防具は「ボロ服」のみ、多分「防御力+0」の「とりあえず裸じゃだめだ」装備。
武器は「剣」一本、攻撃力は不明。
あ、自分のパラメータが見えない...パラメータが見える設定にすればよかったな。でも、今さらやり直すのも面倒だな。
まあいいか。うっかり死んで世界を作り直す時に忘れずにチェックしとけばいい。今はこのまま続けよう。
所持金は...これは財布を見れば分かるので...財布がない!?
つまり所持金ゼロ、無一文、浮浪者以下...ハァァ。
まずは金だな。貨幣種類設定していないから、普通に「金貨」が出るのかな。
俺は周りを見渡した。
猫耳の女の子を発見した。
あれ?獣人族の存在を設定してたっけ?
してないよな。
だとしたら、ランダム設定で「獣人族の存在」を設定したのか?
...耳を引っ張ってやる!
町娘「きゃ!」
俺「あれ、取れちゃった」
付け耳だった。装飾品の一種か?
町娘「ちょっとなにすんのよ!」
町娘が話しかけてきた。
特に興味ないので、無視。
筋肉男「ちょっとにぃちゃん、わぃの彼女に何した?」
怖そうな男が話しかけてきた。指をバキバキしながら、話しかけてきた。
つまり、ここは「男女共同に生活する町」ということだな。
パラメータが見えないけど、レベル1じゃ流石に勝てないでしょう。
逃げよう!
俺「ごめんなさい~」
筋肉男「あ、待ちやがれ!」
俺は逃げ出した。
付け耳を捨てた。男なので装備できないし、持って帰ったら筋肉男に追われそうだし。
そして、うまく逃げられた。「素早さ」が高い証明になるのかな?
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
さって、まずは金だが、一番手っ取り早いのは「罪のない村人」を襲撃することだな、うん!
衛兵がいるようだから、襲撃としても「路地裏」とかの場所が良いでしょう。
この世界の法律は分からないが、平和な街なら「強奪」は犯罪だろう。
俺は路地裏を探した。
路地裏を発見した。しかし、そこにすでに人がいた。
レイプ犯「ん!ん!」
少女「いや!いいやぁ!」
路地裏がレイプ現場に変化した。
うわ!無垢な少女が襲われてる!襲われてる最中!
そのまま最後まで見届けることもできるが、少女を襲ってる男は今まさに無防備!
チャンス。
どうしよう?このチャンスを掴むか?事が済むまで見届けるか?
見えないし...チャンスを掴もう!
俺「ほい!」
レイプ犯「むぎゃっ!」
男は変な声を出して、気絶した。
さって、所持金チェック...1万円を手に入れた。
紙幣だ。でも、1万円は微妙だな。多いとは言えないし、別に少なくはない。
この世界において、大金になるだろうか?それも分からない。
少女「......」
む?なんだ?レイプされた少女が俺を見つめている。
逃げる訳でもないし、「ありがとう!」と言って抱き着いて来てもいない。ただ俺を見つめている。
状態チェック。
「エラー。性格未設定」
なるほど!「性格」の設定をされていなかったのか。
ランダム設定では珍しいミスだな。
俺「チェックエラー、修正。性格は見た目通りで『弱気』で、『臆病』で、『泣き虫』、『人見知り』。助けられたことによって俺に感謝の気持ちはあるが、『感謝の為に身を捧げれば同じ事』に気付く程度の知性はある。でも、『芯が強く、勇気のある女の子』と」
これでよし!
じゃ、次は「武器屋」を見つけることだな。鎧、盾、ブーツ、ヘルメット...
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
どうしよう?レイプされた少女が俺の後ろに着いて来ている。
服がボロボロで、周りから注目されている。俺の方まで「注目」が来てる。
せめて布一枚でもあれば、もう少しは隠せたのだろうが、生憎俺の装備も「ボロ服」だけだ。分けてやったら俺が変態になる。
俺「うわ!」
少女「ひっ!!!」
少女は逃げ出した。
しかし、少し距離が開けたら、少女は逃げるのをやめて、俺の行動を伺い、また少しずつ近づいてきた。
俺「うぅわぁ!」
少女「ひぃ!!!」
少女はまた逃げ出した。
しかし、さっきと同じ。
こうなったら無視!
他人ですよ!皆さん見ないでください!
歩いている内に「武器屋」を見つけると思っていたが、意外と町が広い。城だな。町じゃない、城。周りは民家だけじゃない、服屋、食べ物屋、下着屋と、色んなものがある。「ボロ服」のままは嫌で、一瞬服屋に駆け込みたくなったが、所持金1万円しかない。「降りてきた」ばかりなので、物の市価は知らない、迂闊に金を使えない。
こんなところに「武器屋」があったら、寧ろ目立つ、この世界はそういう場所だ。
...モブに訊こう。
俺「へぃ!ムッシュ、ちょっといいですか?」
モブ男「うぅ?俺の事かい?」
俺「そうだ。その『如何にも女にモテなさそうな顔をしている』貴方、『武器屋』はどこですか?」
モブ男「なんて失礼な奴!そんな奴に言う訳ないでしょ!」
俺「いいから教えろよ。な?」
モブ男「いやぁ...」
モブ男は俺の後ろを見た。そして俺を見た。
モブ男「......」
俺「なにか?」
モブ男は俺から目を逸らした。
モブ男「一番近い『武器屋』:『万製堂』なら、そこの交差点から左に曲がったらすぐ」
俺「感謝感謝」
モブ男は明らかに何かを勘違いをしているので、俺は訂正を入れた。
俺「後ろの、あのほぼ全裸の女の子、俺、関係ないから、赤の他人だから、知らない人だから」
モブ男「は、はぁ、そうですか」
よし、武器屋に行こう。
万製堂に辿り着いた。
中にはカウンターのおやっさんと年老いたおじいさん二人だけ。
おやっさん「いらっしゃい!お、若いあんちゃんかい?何か欲しいものでもあるんかい?」
俺「おぉ!筋肉モリモリだね」
おやっさん「うん?あぁ。ま、こんな仕事してるんだい、嫌でもつくよ。で?買い物かい?それとも見るだけかい?」
俺「両方かな。気に入ったものがあったら買うよ」
おやっさん「そっかい!そりゃ、ありがてぇ...が、生憎今は『銅の剣』・『銅の鎧』・『銅の盾』・『銅の兜』しかねぇんだ。そん中から選んでくれよ」
俺「『金の鎧』をください!」
おやっさん「いや、だからね。ウチにはそれがねぇよ。でか、どこにもねぇと思うよ、『きんのよろい』とか、聞いた事ねぇし」
俺「えぇ?なんでないんだ?『武器屋』として恥ずかしいよ」
おやっさん「最近品切れでね。新しい盗賊団が立ち上げたらしくて、武器がバンバン売り出されて、今は銅製のものしか残ってねぇんだよ」
俺「へぇ~」
理由として最もだ。
最初からいきなり「伝説の鎧」とか売られていたら、バランスが悪いよね。『銅の鎧』なら普通だね。
おやっさん「ところでさぁ、あんちゃん。あれは...?」
俺「他人です」
おやっさん「しかしさぁ...」
俺「知らない人です」
おやっさん「おぅ」
警察に「ストーカー被害届」を出したら、何とかしてくれるのかな。この場合は「衛兵」さんかな。
俺「おやっさん、値段教えて」
おやっさん「うん?なんてぇ、田舎もんかい。札は下に付いてんじゃん」
俺「いや、見えてたよ。ただ...0、多くない?」
「銅の鎧」が12,000だ。それは一万二千円の意味なのか?
おやっさん「ウチは今キャンペーン中で、寧ろ安いんだい!他んどころは『銅の鎧』15,000!こっちは3千まけしてるんだぇ」
俺「他のところは一万五千円!?」
おやっさん「信じねぇんならあっちのジジイに聞いてみぃ!何も買わねぇのに毎日ここに居座るあの禿げてるやつ」
あ、おやっさんのお父さんがと思ったら、全くの他人だった。
体が震えていて、今すぐにでも天に召されそうな感じで、喋らせて疲れさせたくない。
んでことは:「銅の剣」が8千円、「銅の鎧」は1万2千円、「銅の盾」は5千円、「銅のヘルメット」は3千円だな。
んで:所持金が1万円。「銅の鎧」はまず買えない、「銅の剣」を買ったら他のは買えない、「銅の盾」と「銅のヘルメット」を同時に買えるけど、「ボロ服」に「銅の盾」・「銅のヘルメット」...
それはまるで...飯屋に行ったら、サラダとデザートだけを注文したおかしいな奴みたいじゃない!
おやっさん「あぁ、あのさ、あんちゃん」
俺「なに?今考え中に、結構忙しいんだけど?」
おやっさん「いや、あのさ、もしかして、金ねぇの?」
俺「あるよ。ちょっと足りないだけで...」
おやっさん「いやさぁ、鎧より、先に服を買ったら?『ボロ服』じゃ防御力ないよ」
俺「ん?」
おやっさん「『銅の鎧』は防御力プラス10で、今一番いいものだけど、防御力プラス5の『布製の服』なら2千で買えるよ」
俺「マジで!?『兜』より安いじゃん!」
「銅のヘルメット」、三千円なのに、防御力+3しかないのに。
おやっさん「帽子なら、5百で買える、防御力プラス1しかないとりあえずの装備だけど」
俺「っていうか、そんなメタ発言していいの?『防御力』とか、どうやって分かる?」
おやっさん「うん?自分のステータス見るの初めてかえ?余程のド田舎でも、一個持ってるっしょ」
俺「一個?何が一個?」
おやっさん「水晶玉だ。ほら、ウチのはあそこにある」
俺「すいしょうだま?」
おやっさん「触れば自分のステータスが見れる。そういうもん」
武器屋に相応しくない祭壇があったなと思ったら、そういうこと。そして、どうやらこの世界では自分のステータスが見れるようだ。
おやっさん「おっと、無暗に触れんでくれよ。金取るんだ」
俺「けっちぃ!超けっちぃ!」
おやっさん「そう言わんでくれよ。ウチだけただとか、他の店から文句言われんだぜ」
俺「幾らだ?幾ら払えんばいいんだ?このケチ野郎!」
おやっさん「あぁ、分かった、分かったよ!一回だけ、ただで触らせてやるよ。でも、言いふらすんな、後で文句を言われんのはこっちだからよ」
俺「よしゃ!」
お人よしおやっさんってラッキー!常連さんになってやってもいいぞ。
俺は水晶玉に手を触れた。すると頭の中に勝手に数値が出た。
ふむ、
攻撃力:214
防御力:10
素早さ:18
魔法力:12
攻撃力だけがやけに高い!システムエラー?
そして、
レベル:1
HP:322
MP:120
経験値:0
この辺は普通...なのかな。
平均以上の能力値を頼んだんだけど、これなのか?
攻撃力高いのは装備している武器の所為か?
俺「おやっさん。悪いけど、俺今1万円しかないんだ。んで、身に着けてるものを売って換金してもいい?」
おやっさん「そりゃ...いいけど。換金すんなら、リサイクルショップの方が高く買ってやれるよ」
俺「ここは駄目?」
おやっさん「いや、構わんが、元の価値の半分しか払わんよ」
買う時全額、売る時半額。標準スタイルだな。
俺「じゃ、じゃさ!この服はいくら?」
おやっさん「おほほほ、あんちゃん。んな『ボロ服』誰も買わんよ!ふざけるなら帰ってくれる?」
おやっさんはちょっと怒ったみたい。
俺「あぁ、むぅ、まぁ、そうだろうな。でも、この服以外は、もうこの剣しかないんだよな」
剣の名前は分からないが、今の攻撃力を214に上げるほどの代物、売るには勿体ない。
とりあえず、値段を聞いてみよう。
俺「おやっさん!この剣はいくらで買ってくれる?」
おやっさん「その剣?」
おやっさんは俺から剣を取ってマジマジと見た。
おやっさん「見たことがない剣だが、よっぽどの代物だな。これほどのものなら...わりぃ、買えねぇや」
俺「え?何で?」
おやっさん「見たことのない剣だし、切れ味は良さそうだ。触らんでも分かる。これほどのもんなら高級品に違いないが、生憎わしは分からん。いくらで買ってやれるか、分からんじゃ。だから、買ってやれない」
俺「ほほう」
イベント剣か。「装備」であると同時に「大切な物」でもある、捨てられない物だな。
捨てたいと思えば捨てられるけど、別に邪魔じゃないし、いいか。
おやっさん「あんちゃん、1万じゃここでフル装備を買うのは無理じゃ。素直に服屋に行けば?服は耐久度ゼロになったら『ボロ服』になるけど、値段の割に高い防御力持つよ」
俺「なに?耐久度?」
おやっさん「ん?あぁ。見れないけど、武器も装備も『耐久度』ってなもんがあって、着ているだけで減っていくし、攻撃を受けたらさらに減る。それも知らなかった?」
面白くする為にプログラマーがおまけしてくれる特殊なシステムだろうけど、ユーザーにとっては「余計なお世話」でしかない。
めんどくせぇんだよ!服の耐久度とか考えてわざわざ二着目を用意するとかさ!
おやっさん「あぁ、なんだい...てっきり『鎧は修理できる』から、『服屋』よりこっちを選んでくれだと思ったが、知らねぇなら『服屋』に行けば?」
俺「鎧は修理できるの?」
おやっさん「『鎧』は耐久度ゼロになると『砕けた鎧』になって着れないが、こっちのような『武器屋』に持って来れけば修理するぜ。新品のようになるし、値段は新品より安い。ただなぁ...買えねぇ以上、どうしようもないじゃ?後ろの彼女さんにも...ちゃんとした服を買ってやれよ」
俺「ん?」
なんだろう?後ろから「温かい」感じがする。
俺は振り向いた。
レイプされた少女が間近まで迫っていた!
俺「わ!」
少女「ひっ!」
今度、少女は後ろに何歩下がるだけ、それ以上離れてくれなかった。
距離はどんどん詰められてくる。
俺「はぁ...」
急に、俺はとてもいい案を思いついた!
俺「おやっさん!この子を買ってくれない?」
少女「え?」
おやっさん「あんちゃん。それは冗談としても酷すぎるぞ。彼女さんが可哀想じゃない」
俺「だから他人だって...」
おやっさん「あぁ!それはもういい。最近変なプレイにハマる変態カップルは多いのは知ってる。だからって、こっちはそっちに付き合いたくない。何も買わねぇなら帰ってくれ!」
俺「あぁ、いや...」
おやっさん「ほら、行った行った!」
無理矢理に追い出された。
筋肉モリモリなので、今は逆らわない方がいい。
少女「......」
少女は俺の服の裾を掴んで、上目遣いで俺を見る。
懐かれてしまった。野良猫か?
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
無視して服屋を探した。少女は俺から離れてくれなかった。
適当な「服屋」を見つけて入ったが、少女は当たり前のように一緒に入ってきた。
おばさん「いらっしゃい。おや?なんだい、お二人さん?夜盗にでも襲われた?」
人の良さそうなおばさんが現れた。
おばさん「がははは!冗談冗談!そういうファッションだろ?おばさん、こう見えて流れに敏感さぁ!」
俺「嘘つけぇ!こんなファッションあるか!」
おばさん「うん?違うのか。じゃなんだ?試着室を借りたいのか?あまり汚さないでほしいんだがね」
俺「いや、おばさん。この子、他人」
おばさん「へぃへぃ。何が気に入った服があったら持ってきな。分からない事があったらそこの店員に訊きな」
誤解が深く・静かに広まっていくような気がした。「下着屋」に通り掛かった時とか、これ以上ないほどに手招きされた。
少しイラっと来た。
俺「店員さん。一番安い服をくれ」
店員「ぐちゃ、ぐちゃ...」
店員さんが何かを食ってる!イラっと来るな、こういう人には。
俺「あのぉ...」
店員「あっち」
適当な方向に指さしした後、店員は誰かの為がわからない服選びに戻った。
自分の為だろう。女じゃなかったら殴っていた。
店員「ちっ、キモっ」
俺「うがあああ!」
店員「ひぃ!」
店員が逃げた。大人げないことをした。
自分の服を適当に引っ張り出して、カウンターのおばさんのところに行った。
おばさん「ん?これだけでいいの?」
俺「服に帽子、それ以上何が要る?ここで下着でも買えと?」
おばさん「後ろの彼女さんは?その恰好だと風邪引くね」
他人だって、言っても分かってくれないよな。
お、思いついた!
俺「あのね、おばさん。ごめんだけど、俺、女の服とか、よくわからないんだ。なんかいい服、見繕ってくれない?」
おばさん「おう、おぅん、うん、いいよ。じゃ、彼女さん、ちょっとこっちに来てくれんかね?」
少女「あ、うん。ありがとう、ございます」
少女とおばさんは服の海に沈んだ。
逃げるチャンス!
俺はさりげなく服をカウンターに置いて、そっと店を出た。
服を持ち逃げしてもいいが、店員の方は俺を親の仇でも見ているような目でガン見してるから、騒がせたら、おばさん達に気付かれる。
別の服屋で買い物をしよう。
少女「ひぃ、行かないで」
俺「...うわぁ」
レイプされた少女に抱き着かれた...
今の彼女は白いワンピースに包まれて、儚さ感が大きくなった。
おばさん「ちょっと、何やってんの?も~ぅ。やりすぎよ!彼女さん、泣いてるじゃない」
俺「あ~あ」
おばさんまでウザイ...
......
この二人を殺そうか。
こっちの世界で犯罪しても、捕まらなきゃいい。本当に掴まれて死刑にでもされたら、死んで新しい世界を作ればいい。
「人生は一度きり」なので、すべてのイベントや道具・世界観はリセットされるが...あ~、それはそれで、また面倒。
俺「はぁ...」
少女「ぅぅぅ」
この少女のイベントにうっかり踏み入れた所為なのか、未設定された少女の性格を「ユーザー設定」した所為か、彼女はユニークNPCになったようだ。
俺「おばさん。合計いくら?」
おばさん「マイド、七千になるね」
俺「7千...『毎度』じゃないし、『初めて』なんだからまけてくれよ」
おばさん「ウチは四十年老舗、『まけ』はないね」
俺「何?ただの服屋なのに、先代から引き継いだ老舗?」
おばさん「いや、おばさんが立ち上げた店だよ。長かったな、四十年」
俺「じゃババァじゃん!」
おばさん「なだと!?」
俺「ほい、ババァ。金だよ、金。欲しいでしょう?さっさと釣りをくれ」
おばさん「んがぁ、態度の悪い子ね。はいよ、三千円」
俺「ほいよ。それと、店員の教育はしっかりしろ」
おばさん「顧客のもね。ほら、もう買わないなら行った行った!商売の邪魔」
おばさんに店から追い出された。
この都市、買い物が終われば店から追い出されるみたいだ。
少女「あ、あのぅ」
俺「名前は?」
少女「え?」
俺「名前だよ、お前の名前。名前分かんないと呼べないじゃん」
少女「あ、はい!カエデ、カエデです!」
俺「上は?」
カエデ「上...」
俺「苗字だよ。苗字は何だ?」
カエデ「うん...」
俺「......」
カエデ「......」
俺「なんだ?言いたくないの?」
カエデ「すみません...」
つまり、苗字はこの「カエデ」という少女の今後のイベントの一つだろう。興味なし!
カエデ「あ、あの!貴方様は?」
俺「『ご主人様』とても呼べ」
カエデ「え?ご、ごしゅっ!」
俺「アマクモ、イズル。ちゃんと『アマクモさん』と呼べ」
カエデ「はい、アマクモ様」
これで、俺は初めての仲間を手に入れた。
戦いに役に立たなさそうだ。
カエデ:楓