衝撃の虚言
[3]
男は食材に付け足せそうな山菜を探して渓流の脇を遡っていた。
食材が買えないほど私財貧しいというのではなく、まとまった量の季節ものをいち早く食卓に出したかったからだ。
男は冒険者でもあり町の外れで十数人の孤児を養っていた。里親を捜したり住み込みの職に就かせたりと出るものばかりでもなく近隣の村からも保護したりと数は上下する。
見た目は悪いが優しきおっさんなのである。
進む先のわずかに開けたところに網籠状のナニかを底とそこに近い左右に穴を開けて被った子供が一人と同じ大きさで全身にに大きな葉っぱを纏わせた名状しがたき一匹が男を見て固まっている。
ぼそりとつぶやいた子供の声が男の耳に届いた。
「でかい・・・」
「怪獣だ」
「クマじゃね」
「クマ怪獣だ」
「死んだ振りした方がよくね」
「食べられてしまう?」
「短いようで長いかった人生、儚いが・・・」
「さらばだ相棒」
男よりもヘンテコな生き物一匹と一人の子供は、見えないナニかで斬り合ってばたりと倒れた。
男は軽い幻暈がしながら近寄って足下に声をかける。
「クマでも怪獣でもないし、食人もしねーよ。オレよかオマイラの方が不審者に見えらあ」
さらにしゃがんでヘンテコな頭部を隠す大きな葉をめくって顔をのぞくと髪も異様に白いがもう一人と同じ顔をしていた。
「さっきのノリは関西人か」
「「ちゃうわ、エセ関西人じゃ」」
「ちょっとヨシモト見て育っただけじゃ」
「ちぃすうたろか」
男は二人が被召喚者だと気づいたが話を合わせて保護する形に持って行くことにした。
双子かと訊ねても首を傾げて自覚はないみたいだが、どちらも色白で長耳、金髪碧眼の一人とより白く陽の光に弱く肌がやけどするアルビノの一人はその色以外でクリソツだった。
エルフの子供二人には身寄りがなく日がなこの森で過ごしていたという。
下着もつけていないと言うので手に入れたばかりの子供用のスモックと携帯食を提供したり、ヘンテコには持っていたヤッケ代わりに使っていた古くなったフードマントを渡した。
スモッグを渡すときに二人から「変態」を見る視線を向けられて少しへこんだ。
白子ちゃんはフードコートの袖をまくり、裾を腹周りに繰り上げ腰に乾燥させた蔓を幾重にも巻きベルトにして自分なりに調節していく作業と手伝う金髪ちゃんの着付けの手際を見て、知性が高いことを確信した。
衣食住の当てがあるからと交換で二人に山菜取りの手伝いを依頼すると快諾され鬱蒼とした中に入っていった。
「遅くなったが、オレはダグラスという。おまいらは?」
「ワシは、くるりん星から来たゆうゆうである」
「同じくわしは、こりんである」
「やめろっ。いい年したおばさんの古傷に塩をすり込むんじゃないっ」
「「え゛ー」」
「じゃあ火星のキキでぇーす」
「んと、金星の裸族でぇーす」
「それもやめるんだ。リォさんあたりからクレーム来たらどおすんだ」
「「ちっ」」
「正直に教えてくれんか」
「「名前はまだないっ」」
「もおいいっ、スキルで鑑定させてもらうぞ」
金髪の情報を観て、眉をひそめた。口元を引き締めながら白い子も観てから目を細めた。ナニも読み取れなかった。これはまだこの世界に安定した定着が出来ていない者達によく起きていた。
「おまいら転移者かなんかだろう」
「「ぎくっ」」
「まあいい。オレもだから力になってやる」
「「食べない?」」
「喰わねぇーよ」
「ハチミツは?」
「それともサケ?」
「だからクマじゃないっ。人間だっ。この世界基準で云うと凡人だ」
「「おぉーっ」」
「凡人だって」
「どこが平凡なんだか、ねぇ」
「ア・ソ・コ なのかしら」
「まぁ 奥様ったらぁ」
「見せていただかないと信じられませんわぁー」
「そーよ、奥さま し・ん・じ・られませんわー」
「ですよねー」
「おまいらなぁー もう食い物いらねぇんだな。風呂も入りたくないと言ってんだよなぁ」
「「おーまぃごー」」
「定番の『ステータス』って言ってもナニも見なかっただろ?」
コクコク
「プラットフォームは解らんが、たいてい『チュートリアル』がまだ終わってないんだよ」
「おぉーーっ。クマさんすげー」
「赤い着物の人、クマさんに座布団一枚っ」
「まだ言うかぁー」
男の頬に水滴が流れた。
「「雨だ」」
「違げーよ」
エルフって某ウイキでペディアなトコによると、古ノルド語でアルビノの語源となった〝アールヴ〟と呼ばれてたらしいですね。〝白い人〟の故郷は〝アルフヘイム〟だとか。後ででますよー。