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ベータアプリ


「ん?」

 帰宅して服をラフなものに着替えて風呂に湯を張り始める。

 そしてバスンとソファーにねっこ転がってテスター募集中のベータ版アプリを紹介しているサイトをだらだら眺めていると、引っかかるフレーズを見つけた。


『カップル様ご優待! まぁお一人様でも、なんと可(笑)』


(なんじゃこれは!)

 この『なんと可』は素直に読まず『なんとか可』にしたかったんじゃあねえのかと勘ぐってしまった。魔法使い予備役を侮ってやしませんかねぇ。

 そのままストアへのリンクをタップしてダウンロードを始めた。DL数はまだ2桁ぐらいでスカスカの環境なんだろう。


 ダウンロードが終わると起動するかとポップが出てきたので、[はい]を選ぶと、イニシャルローディングが始まった。


(飯喰おう)

 帰りに寄ったコンビニで買ったパスタをチンする。サラダに買い置きの胡麻だれを掛けて画面を見ると終わったみたいだったりで、[New Game]をタップすると[ペア]か[おひとり]かを選べとな。これ[ペア]か[カップル]のどちらかに統一しろよな。それと字数併せで[おひとり]よか[ソロ]にすべきでしょう。気ぃわるいわー。


 ただ[ペア]の横にある『おふたり様には豪華初期アイテムを進呈』に気持ちが揺らいだ。


 現金な者だな>わし 


(ここわひとつ、古いので別赤作ってみるか)

 ただ充電しなくちゃなるめぇ。

 食べ終わった容器などを不燃物と可燃物に分別してから、箱に戻した古い端末を手元に引き寄せた。

 少し離れたところからブザーが聞こえる。お湯が十分にはれた合図だ。


(風呂入るか)

 しばらく鳴っていたブザーも一定時間が過ぎると自動で鳴り止み、給水も止まっているタイプだ。     

 カラッカラの端末への充電には時間がかかるからちょうどいいやとマイクロUSBを端末に挿してから脱衣所に向かう。


-入浴情景は割愛-   オトコのなんて興味ないでしょ。


風呂から上がり古い端末の電源スイッチを長めに押すと,メーカー,OSのロゴが表示されプログレスバーとは違う,具に具にするアニメーションに切り替わった。


 これが長い。


 やっと終わったかと見ればOSのアップデートが始まった。これ今日のものになんないかも。

 ふっと息を吐き,撮り溜めていた夜更かし用のビデオを観ることにした。MC二人が座った状態でト~クをして進めていく形態のものだ。関西芸人とオネエの組み合わせだったっけ。つい大声で笑ってしまい,近所迷惑になってやしないよなと心配した。


 そだ,[ペア]の他に[ソロ]もやって比較しないと。


 シリコンプレヤーにもアプリを入れられることを思い出したのだ。

 三台並べてアップテーとが終わるのを待ち、各々にアプリを入れ設定を進めていく。


 あかん。眠とうなってきた。


 3つのアバターは[ソロ]には普段のネーム、[ペア]にはそばに在ったゲーム機の名前を参考に決めた。重複者とかがあるなどのワーニングもなく受理されたみたいだ。

 重複警告があったりしたらだいたいココでつまづくことが多いよな。

 容姿は幾つかの初期パターンをいじって平凡で当たり障りのないので、キメだ。


 うしっ、三台ともこれで決定!


 あー、各々のラグがローディン中のBGMがズレて・・・・・・眠い。

 ゲーム設定の世界観だとか、主要キャラの紹介が切り替わっていく。スタートまで長そうだな。

 


 ◇



 気づくと夜だった。うつ伏せだったからか、よだれの感触が口元にあったので腕でゴシゴシ。まぶたが重くそのまま眼をゴシゴシ、半眼で端末を探す。

 既にスリープモードになっている端末を見て、『ふふっ、おまえもか』とつぶやいてみたり。


 ナニやってんだか>わし

 

 どこまで進めていたのか、スリープから戻した画面には、3台ともにサーバーエラーのポップ表示が出ていた。普段使いの端末を引き寄せタスクから弾いて、再起動させると『ただま緊急メンテのためご利用できません。復旧が終わるまでお待ち下さい。詳細は、サポートベジでご確認下さい』だと。


 パンクしたな。なんとまぁ、どおしたことでしょう。


 起きてる意味なし。心置きなくわしは意識を手放した。



 ◇



 あ。朝か・・・・まぶたを閉じていても陽が昇っているのがわかる。なんか直接当たってるよな。どうやら窓を開けていたようだな。人工じゃない風を感じるぞ。だが静かな朝だな、車の音が聞こえてこない。

 それにしても肌触りの悪いものを着て寝ちまったようだ。ゴワゴワでなんかヒリヒリしてきた。


(!)


 まぶしくて充分に目を開けないが、早急にココを離れなければと胸騒ぎかする。

 まとわりつくゴワゴワは予想よか大きかったようですそを踏んでつんのめって「ぐひっ」と転がった。

「んだはっ」

 ん!アニメ声? そばに誰かがいて、そいつもすっ転びやがったみたいだ。ざまあ。

 肌を刺激する何かを脱ぎ捨てて、近くに見える立木の奥にある茂みを目指した。


 突然に地面が震動を始めた。足下がおぼつかなく転がったり、はったりして目標を目指した。

 茂みに入るとさすがに木陰でヒンヤリとして気持ちよい。

 改めて考えると、まっぱの自分に違和感がないのは、どおしたことか。

 唐突だが言葉が出たら、反応された。

「わしは裸族だ」

「ワシも裸族だ」

 二人は固い握手をかわした。


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