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38話 二人のボス戦3

皆さんお久しぶりです。

かなり間が空いてしまった事誠に申し訳ありません。m(__)m

大学のテストやら引っ越しやら課題に再試と忙しく、どうしても時間を作れず更新が遅れてしまいました。

おそらくこの先も投稿が遅れてしまうことが多々あるとは思いますが、頑張って続きを作っていくつもりですので今後ともお付き合いをよろしくお願いします。


【クラウドドラゴン】Lv15

ガァアアアア!


出たね。

その姿は前回見た蒼い美しいドラゴンではなく、初期に登場した綿あめを変形させたような見た目のもこもこドラゴンだ。

正直あの本気モードだったら勝てる気がしない。

プレイヤーの最高レベルっていくつか分かんないけど、いつかは倒したい相手だ。

でも今日のところはとりあえず。


「レベル敵には勝ってるけど格下・・・とは、考えない方が良いよね」

「Yes! ムシロ適正値デス」


まあその適正も恐らく本来は七人のフルパーティでのものなんだろうけど。

実際レベル差がそこまでない二人だけでボスに挑むのは相当無茶である。(ソロ狩りしたことは棚上げ)


なんて、のんきに会話しているうちにカウントがゼロになり、ボスの硬直が解かれる。


ガァアアアアアアアア!


こういう系統のモンスの最初の行動はほぼ決まっている。

―――突進だ。


「じゃ、ノンちゃん作戦通りに」

「OKデスッ」


私達は左右に分かれ、その突進を難なく回避する。

それに対し、モコドラ(仮名)は急停止して背後に回ろうとした私達をキョロキョロ見回して追ってくる。

どうやら狙いをノンちゃんに決めたようだ。

きっとスピードの差を判断基準にしたのだろう。けど―――


「イクデス!―――《ブレイク・ランス》!」


突っ込んだ先で構えていたノンちゃんが、必殺のアーツを顎をかち上げるように叩き込んだ。

グ――!


「待ってたよ!―――《ウォーター・ショック》」


そこに今度は事前に跳びあがっていたアリサの一撃が振り下ろされ、モコドラはその挟撃に叫びあがることもできず顔から地面に倒れ込んだ。


「よ、っと。うぅーん、属性的には私の武器の方がダメージ小さい?」

「ワタシノ武器モ弱点程デハアリマセン」


私達はこの最初の攻撃で大技を放つことで今後のダメージ方針を決める。

オルムとハバキはどちらも威力こそ高いが属性武器であり、属性には相性がある。

このボスに対してははたしてどちらが強力なのか、事前情報もないので最初の攻防で探ることにしたのだ。

どうやら水には若干の耐性、地には耐性はないが弱い訳でもないらしい。


「これならハバキでも十分にダメージは狙えるかな?」

「メインアタッカーハ、ドウシマス?」

「そこはノンちゃんに頼もうかな? こっちのはこんな形してるけどスピード系装備だからサポートに回るよ。それにノンちゃん攪乱とか苦手でしょ?」

「Oh-Yesデス――デハアリサ二任セマス」

「おっけ」


私達は手早く役割を決め、それぞれが邪魔しあわないように駆け出す。

そこに復活したドラゴンが鋭い睨みをしてくる。


グルゥ!


モコドラはその翼を使い、軽く浮き上がると体を捻って足技を放ってきた。

その後ろに尻尾の追撃も見える。

なるほど、二段攻撃か。

尻尾の方は足よりも長く攻撃範囲も広い。きっと足を躱したらその尻尾の追撃を受けるというタイプの攻撃なのだろう。けど。


(そんな見え見えの攻撃には当たんないよ~)


アリサはそのまま足に向かって突っ込み、跳びあがる。

モコドラはそれに、『馬鹿め』みたいな顔で鳴くが、次の瞬間にはそれが悲鳴に変わる。


ゴンッ!

ギュエエエエエエエ!!


ふっふっふ。やっぱり小指・・は弱点なんだね。

そう、アリサが狙ったのは足の先についている小指だった。

三本しかないのでそれを小指と呼ぶかはこの際別として、指先を強打されたモコドラはたまったものではなく、自身が蹴りを放った威力もあって、その衝撃は大きかった。

対するアリサはその反動によって空中へと打ち上げられ、尻尾の追撃を回避する。

さらに。


「《ソニックバッシュ》!」


打ち上げられた空中から、突進アーツによってモコドラへとさらに接近する。

モコドラもさせまいと翼で撃激しようとするが、アリサの体はそれをすり抜ける。

ゴッ


グルゥ!

「っと。やっぱり便利だよね、このアーツは」


一撃与えることに成功したアリサは、同時に背中あんぜんちたいへ到達することに成功する。

《ソニックバッシュ》は突進系のアーツであり、発動地点から目標までの距離を一瞬で移動する。そして、その際の障害・・・・・無効・・となるのだ。

(まぁ、物理的なものまですり抜けられるのは意外だったけどね)


「さあ、君はどこまで耐えられるかな?」


そこから行われるのは以前ヅッチー相手にも取った戦法。背中に引っ付いてのスキルラッシュだ。


「《スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ―――


ギィアアアアアアア!!


モコドラはその猛攻に絶叫をあげ、必死に背中のアリサを振り落とそうとする。

流れとしては以前に行ったボス戦とほぼ同じ。しかし、武器の威力やステータスはヅッチー戦の比ではなくなっている。

モコドラのHPはみるみる減少していった。

そして大体四割まで削ったところで振り落とされる。

しかし。


「っと、じゃ、後よろしくね」

「アリサ、ヤリ過ギデース。メインアタックハ下サイ」

「あははっ、ごめん、つい」


振り落とされた空中で、二人はすれ違いざまにそんなやり取りをする。

アリサが攻撃に回っている間、ノーンは隙を見てアリサと入れ替わるタイミングを計っていた。

そしてアリサが振り落とされた瞬間、ドラゴンは振り落とせたことを確認するために一度制止し、明確な隙が生まれた。

そのタイミングに合わせ、ノーンは飛び上がり―――


「Shit――少シ足リナイデス」

「え――ぐえっ」


アリサを踏み台に使って、顔面目がけて突っ込んだ。


「《ブレイブ・ブレード》!」


赤く発光した槍が弧を描くように放たれ、モコドラの顔を縦に切り裂いた。

ドラゴンは悲鳴を上げるが、ノーンの攻撃はこれだけでは終わらない。

下から切り上げた刃を、返しの勢いに乗せ、今度は体重を乗せて振り下ろす。


「《ブレイク・ランス》!」


それはドラゴンからしてみれば悲劇ともいえる攻撃の連打だった。

指先から始まり、背中をいたぶられ、顔面を斬られたと思ったところに脳を揺らすほどの威力を持った一撃が叩き込まれる。

その勢いのまま、ドラゴンは空中で止まることが出来ず、地面へとたたきつけられた。

その先には。


「うぅ、ひどいよノンちゃん。踏むなら先に行っといてくれれば足場作ったのに」

「アリサナラ大丈夫ト思イマシタ」


ドラゴンよりも先に踏みつけられ、落下していたアリサがいた。

ジェネオンではフレンドリーファイアでダメージを受けることはないが軽い痛みは生じる。

ゲームなのであざが出来るなどの心配はないが、一定時間の痛みはあるのだ。

アリサはお腹をさすりながら抗議するが、ノーンはそれを軽く流す。

そして二人の視線はノーンの放った大技によってHPがついに三割を切ったモコドラへと向けられる。


グゥ――!


モコドラはいつの間にか復活し、目いっぱいに開かれた口を二人へと向けていた。


「「アッ」」


一瞬、それを目撃した時二人は次に起こる光景を予見した。

そこからの行動は速かった。

ノーンは離脱を計り、アリサは出来る限りドラゴンとの距離を詰めようと走り出す。


竜巻のようなブレスがドラゴンから放たれた。

「―――《タイラント》!」


アリサの体が、竜巻にぶつかる。

そして竜巻はアリサにぶつかると、勢いは残したまま、その場で制止した。


「オォー! 凄イデス!」


ノーンがその光景に歓声を上げるが、このスキルの真骨頂はここからである。

アリサは左手をドラゴンに向けて構える。


「お返し、だよ!」


風のブレスが、砂のブレスとなって反射される。

必殺技であるブレスを放った直後のモコドラにはこれを回避するすべはなかった。

間抜けに開かれた大口に砂の濁流が押し寄せる。


ガァアボッ


「ノンちゃん!」

「OKデス」


ブレスを受けて、動きの止まったドラゴンに、ノーンが駆け寄る。


「GO!――《コンバート》―――


ノーンの槍が水平に構えられる。

そこから放たれるのは。


「―《三華突キ》――《月光》――《ソニック・スピア》!」


そこから行われたのは、美しい連撃。

三連突きからの薙ぎ払い、脇を引いたところから放たれる最速の一撃。

コネクトアーツと呼ばれる、連携技だった。


グゥウウウウルゥ!


連続で放たれるアーツにモコドラはのけ反り、二人から大きく距離を取った。

コネクトアーツはアーツの連携が速くなるだけではなく、連続的にアーツが発動することで相乗効果が生まれ、後に続くアーツの威力にプラス補正が着くというおまけ効果もある。

公式でも取り上げられているシステムの一つなのだが、難易度が高く、二つのアーツでさえできるプレイヤーはまだ少数しかいない。

ゆえにノンちゃんがやったこの三連発はかなりすごい。


(これPVPの時されてたらやばかったかも・・・)


アリサは自分との戦闘でノーンが全ての手札を出し切った訳ではなかったという事実に、もし、次回があった時を予想して身震いした。

今のところ勝てる要素が見当たらないのだ。


「アリサ!」

「あ、うんっ!」


見ればモコドラのHPはもう一割も残っていない。

エリアボスであることから、おそらくこのドラゴンには『何割以下になって強化』というシステムは繰り込まれていないだろう。

つまり、完全な瀕死なのだ。


それから二人で突っ込み、めった打ちにした。



テロン♪『エリアボスが討伐されました』

テロン♪『【クラウド・ドラゴン】の初回討伐報酬が受け取れます』

テロン♪『ボスボーナスが受け取れます』

テロン♪『レベルが上がりました』


以前にも見たことがある、エリアボス討伐成功時に流れる文章だ。

終わってみれば圧勝である。

やはり一人で挑んだ時とは全然違う。

今回は相棒がノーンというトップ級プレイヤーであった事もあるだろうが、それでもアリサはアタッカーが増えた場合の効果を強く感じた。

(ノンちゃん、リアルだとでフェンダーだけど)


「オォ!? アリサ! SPガ凄イデス! ボーナスモアルデスヨ!」

「あ、うん。そうだね」


そういえば私もヅッチー倒した後は驚いてたっけ。

あれ? そういえば。


「ボスボーナスってノンちゃんにも出てるの? もしかして倒したら全員貰えるようになってるのかな?」

「ムム。良ク分カラナイデス。見テ見マショウ」


確認してみる。

すると、あることが分かった。


「どうやらボーナス武器は、一回に一つまでみたいだねぇ」

「デスネ」


武器の一覧は、ラストアタックを決めたノンちゃんの方に出現しており、アリサの方には別のアイテム一覧が出現していた。

それらは。


【天の羽根飾り】『耳』:大空を舞う翼を使った羽根飾り。炎を当てても燃えることがなく、水に濡れない。

・全属性耐性20%上昇


【大空の真珠】『首』:大空の力を宿した真珠、風の力を感じる。

・風属性耐性50%上昇

・風属性攻撃15%上昇

 

こんな感じのアクセサリーだったり、一時的に能力を大幅増強してくれる消耗品だったりした。

中には【テイミング・リング】もあった。

こういう方法でも出てくるんだねぇ。

全体的に空とか風系のアイテムが多いかな?

風属性魔法を覚えられる【魔導書】とかもあって気になる。

しかし、説明を見ると『【ウィザード】系専用』と書いてあったので諦めることにする。

流石にそんな都合よくはいかないよねぇ。

これらはいったん閉じて、ノンちゃんの意見も聞いてみることにする。


「ノンちゃん、そっちは選んだ?」

「Oh-アリサ・・・コレ、ハズレデス」

「え?」


言われて、覗き込むと、そこに書かれている武器たちは確かにハズレとも言えるかもしれないものだった。

武器たちの装備条件が総じて『必要Int25』となっていたのだ。

杖系統は別にして、近接職にとってこの装備条件はとてもきつい。

通常、近接職ではIntは全くの不要ステータスと言う扱いだ。アリサのステータスでもIntの値は初期値の5ポイントのままである。

おそらくノンちゃんもIntには振ってないだろう。

でも。


今回の報酬にSPが18Pある。これはおそらく、以前貰った35P/人数を二人で割った数だろう。

少数は繰り上げ換算してくれるのがこのゲームのいいところだ。

このポイントを使えば勿体ないが装備は可能なはずである。


「ウゥ、pointハアマリ使イタクアリマセン」

「え? なんで?」

「ソーイエバ、アリサハニューピーデシタネ。忘レテタデス」

「ん? どゆこと?」


その後、ノンちゃんからSPについての説明を受けることに。すると重大な事実が分かった。

スキル、及び職業の上位化である。

つまり、現在セットしているスキルと職業の派生版が今後出現してくるのだという。

その際にSPが必要となり、強力なものほどその消費量は増大するらしい。

故にどうしても必要なポイント以外は出来るだけためておいた方が良いのだという。

ちなみにノンちゃんはアリサとは逆で、序盤で必要なステータスを確保し、後半で貯めるスタイルを取ってるらしい。

後、能力値アップ系のスキルは序盤だと素で振った方が上昇率が高いのであまり必要がないと言われた。

私、二つも取ってるんだけど・・・。

『能力還元』を含めると、合計で50P分無駄にしていることに。幅も取ってるし。

がっくし。


「ドーシタデス?」

「あー。大丈夫。ちょっと今更ステ振りに失敗したことに気付いただけだから」

「フム。チョット見セテクダサイ」

「え? うーん。まあノンちゃんならいっか」


もうスキル構成はばれてるだろうし。


『アリサ』 LV18F

種族:【ヒューマン】 称号:【スピードスター】

職業:【戦士】LV16 副職:【鍛冶師】LV18

HP:655  MP:470

Str155(+28)

Agi70(+12)

Vit84

Dex38

Int6

Mnd11


スキル:《短剣》Lv12《軽鎧》Lv5《攻撃力上昇》Lv14《速度上昇》Lv13《槌》Lv11

    《布》Lv4《連鎖》Lv9《能力還元》Lv-《ディフェンスブレイク》Lv6《タイラント》Lv3


サブ:《鍛冶》Lv21《加工》Lv18《研磨》Lv16《採掘》Lv6《槍》Lv18《クイックチェンジ》Lv-

SP:50


「・・・・・・・」

「うん。言いたいことは分かるよ」

どう見てもまともなステータスではないね。

と言うより変な風に片寄り過ぎていて、スキルもちょっと多すぎるかな? と思っている。


「アリサハ何二ナルデス?」

「えーっと・・・当たらなければどうと言うことはないキャラ?」

「・・・・・・」


はい、思いっきりノンちゃんにダメージくらいまくってましたよ。

瀕死の辛勝しましたよ。

でも仕方ないじゃん。そういう称号なんだよ。そういう構成になっちゃったんだから!


「アリサ。コノ槍《Lance》要リマスカ? speedタイプデス」


それはとてもありがたい申し出。でもなんか自分の要らないものを押し付けられている感がぬぐえないのは何故だろう?

ちなみにノンちゃんが交換に出そうとしていた槍の性能はと言うと。


【空槍:クラース】レア度8 耐久100%

ATK100 SPEED20 MATK20 必要:Str55 Agi35 Int25

効果:風属性付与

   アーツ《フェザー・ウイング》が使用できる

天空を駆ける者の槍。その刃は空を割き、疾風を巻き起こす。


オルムと比べると威力自体は劣るが、MATKが上昇するところがちょっと気になる。

アーツも名前だけだと魔法っぽい。

気になる。

すごい気になる。けど・・・。


「た、対価は何?」

「ソーデスネ。ムー・・・」


ノンちゃんは私側への要求を聞くと考え込み、しかし、その視線はだんだんと手の中へ落ちていく。


「流石にそれは嫌だよ。今回のはあくまで貸しただけだからね」

「ムー、分カッテルデス。デハ、延期デハドーデスカ?」

「延期?」

「YES。ワンウィーク。ソノ間コノ槍《Lance》ヲ貸シテ下サイ。ソノタイムデ、モーイッポン手二入レテ見セルデス!」


なるほど、つまり今回のボスボーナスを担保にオルムの貸出期間を延長。そして、ノンちゃんがヅッチーを倒して同じ武器を手に入れたらもう用済みのため返却すると。

うーん。ノンちゃんを信用してない訳じゃないんだけどねぇ。

個人的に目の前にある状況ならまだ良いんだけど、ヅッチーの槍とあんまり離れたくないという気持ちが強い。

んー・・・。



そしてアリサの出した結論は――――












翌朝。

「ごめんねヅッチー」

「モーニングトレーニング前ノ運動デース!」

グァ!?


妥協案。

翌朝の早朝ボス狩りだった。


おまけ話

※すごくどうでもいいので読み飛ばして大丈夫です。


母親とアリサのひと時。

『あ、理沙。今ねぇ―――』

「えぇ~」


妻との再会を楽しみにしていた父親

「あ、お父さん」

「んぅ、どうした理沙?」

「今日お母さん飲んでくるってさ。たぶん酔って帰ってこれないだろうお願いね」

「え゛!?」

「お店の住所聞いといたから、はい」


久しぶりの再会は、とても残念なものになりそうである。



その頃の母。

「ついに休みよぉおおおお!」

「よっしゃかんぱーいっ!」

「今日は飲みまくれぇ!!」


第一回目のオンラインギアの販売が一段落したことで打ち上げの宴会騒ぎをしていた。

隆二(理沙の父親)が店に着くのはそんな騒ぎが末期に差し掛かった時だった。

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