36話 二人のボス戦1
評価ブックマークありがとうございます。
遅れてすみません。_(._.)_
『勝者:アリサ』
その一文を見た私は、グッ、とこぶしを握った。
「勝ったーっ!」
ノンちゃんに一対一で勝った。
手札全見せでの勝利だから次やったらどうなるか分かんないけど、今回は勝ちだ。
と、しばらく喜んでいたんだけど。
・・・・・・。動かない。
ノンちゃんは仰向けの状態で倒れたままだ。
まぁ、十分間は硬直状態になるのはルールで知ってはいるんだけど。
なんか・・・白目向いてない?
「お、おーい。ノンちゃん?」
手をひらひらさせてみるが、反応がない。
え? マジですか?
「の、ノンちゃん!?」
揺すろうとして―――見えない何かに阻まれた。
そういえばデュエルで負けた相手には触れないようになってるんだっけ。どうしよ?
えっと・・・・・あ、一応状態異常で『気絶』になってる。
確かこの状態異常は何か刺激を与えれば起きるんだっけ。基本的にはひっぱたくとかでいいらしいけど・・・・十分待とうか。
武器のメンテでもしてよう。
「あ、アリサ! いた!」
「ノンちゃん!?」
ん?
武器の耐久値を回復していると、複数の声がした。その方向を向けば。
「あ、ロ―ナ。・・・・と、え?」
「アリサっ」
「・・・一日ぶり。何があった?」
「あら、そっちの子は・・・ふふっ」
「おう、元気そうだな。良かった良かった。ガッハッハ」
皆。何で一緒にいるの?
エレナは駆け寄って抱き付いてきた。
「久しぶりですわね、アリサ。あの方から泣いてたと聞いたから心配したんですわよ」
「あ・・・あー」
そういえばそうだったね。
すっかり忘れてた。
「おい、ノンちゃん!? しっかりしろ!」
「駄目だな。てかなんで触れねえんだ」
「触るな、馬鹿ライト! 女の子なんだからねっ」
なんか違うグループも紛れてるみたいだけど。
赤髪と緑髪の男性と、茶髪の女性だ。
多分ノンちゃんの知り合いだろうけど。
ていうか。
「エレナ。ちょっと苦しい」
「あら?」
顔が胸に埋まってます。
まさしくダイナミック。巨乳か・・・羨ましい。
「・・・もげろ」
ニアが怖い。
そういえばみんな大分印象違うね。
耳が尖がってる以外に、目の瞳孔の部分が大きくなって、顔つきが細くなってる。
エルフ効果かな?
おばあちゃんに関しては、なんか全身黒くなってるけど。もしかしてダークエルフ?
で。
「誰?」
「おいアリサ! この顔忘れたのか、じいちゃん悲しいぞっ!」
いや・・・うん。誰かは大体想像ついてたんだけどね。
顔忘れたのかって言われても、その顔見たことないし。
っていうか。
「なんでモフ化してるの、おじいちゃん」
「モフ化? ってなんですの?」
「・・・おそらく獣化でモフモフするからモフ化なのかと。新しい言葉・・」
うん。解説しなくていいから。ノリで言っただけだし。
それにしても。
ゲンジの姿は、初期のアバターからかけ離れたものになっていた。
尻尾が生えて、全身毛むくじゃらで、顔は完全に狼だった。ちなみに色は白。
ちょっと触ってみたい。
「ガッハッハ。どうだっ? 格好いいだろう!」
「あーうん。まぁいいんじゃない。で、どうしてこうなったの?」
「・・・実はクエストを進めているうちに新しく集落が二つ見つかって、そこに獣人の集落があった。攻略法はまとめておいたから、なりたいなら手伝う」
「あー、うん。まぁ・・・・考えとく」
獣人もなんか、見てるのはいいんだけど、自分があの顔になるのかぁと思うと微妙・・・ケモ耳とかだけならいいんだけど。
「・・・その辺の確立は検証してないからわからない。ただ、集落にはケモ耳もいたからなれる可能性はある」
「可能性なんだ・・・」
それからロ―ナから事情を聞くと、どうやら私が逃走した後、追って来たロ―ナと私と合流しようとしていた皆が鉢合わせしたらしい。
さらにノンちゃんの仲間らしい人たちが偶然通りかかって、探してたようだからロ―ナが事情を話して一緒に行動することにしたらしい。
ご迷惑おかけしました。
「で、仲直り?は出来たの?」
「え、あ、うん」
そもそも喧嘩してたわけではないんだけど。
まぁ、事情は伝えられたし。
「久しぶりに勝負したんだ。おかげでいろいろすっきりしたよ」
「へー、そう。じゃ、良かったわね」
「うんっ」
私は晴れやかな気分で笑った。
やっぱり勝負はいいね。特にギリギリで勝った時が一番だよ。
そうしてニコニコしていると。
「・・・アリサ。これ、お土産」
そう言ってニアが手に、ぽんっと何かを置いてきた。
お土産?
『アイテムを譲渡されました』
【マナリング『首』】レア度7
DEF5 MDEF5 必要Vit5
効果:5秒毎にMPを1%回復する
「・・・・え、強くない?」
「・・・杖買ってもらったから、そのお返し。おかげでレベル上げ楽だった」
私はその首輪を両手で持ってみる。
中心に緑色の宝石が付いてて綺麗だ。
「ふぁー。て、え? いいの!? これかなり強いよ!?」
「・・・良い。似た効果のスキル持ってるから、問題ない。それにアリサにもらった杖と同じくらいの値段だから」
「へー。ありがとう。使わせてもらうねっ。ところでレベル上げってどうなったの?」
「・・・ふふ。基礎レベルが・・・なんと16」
「あれ?」
あんまり上がってなくない?
昨日の朝の段階で14だったよね?
「・・・実は」
その後の語りは・・・なんというかご愁傷さまな内容だった。
南の森でのクエストは、NPCの好感度を一定以上にすると『指南クエスト』なるものが発動するらしい。
指南クエストでは、その職業に合わせた戦闘スタイル、アーツ、術などの特殊技を伝授してくれるそうなのだが。そこには一つ問題があり。
―――出来るようになるまで終わらない。
エレナとニアの二人はインすると引きずられるように訓練場へと連れていかれ、延々と練習を繰り返すという荒行を受けたらしい。
ちなみにゲンジとトメも別の集落で受けたらしい。
何故か速攻で終わったらしいけど。
「あんなに厳しくされたのは初めてでしたわ。でも、おかげでわたくし強くなれた気がしますっ」
拳をギュッと握ってエレナが空を見上げる。
きっとあっちも色々あったんだね。でもお嬢様に悪影響があったんじゃないかすごく心配です。
相手はNPCだし・・・・大丈夫だよね?
「お! ノンちゃんが起きたぞ!」
その声に、私は大きく反応した。
駆け寄ると、ノンちゃんはゆっくりと起き上がる。
硬直時間も過ぎたみたいだ。
「ノンちゃんっ。大丈夫?」
「アリサ・・・NOプログレムデス。悪イトコロハアリマセン」
「そっか。良かった~」
「まったく、心配させんないでくれよな」
「ただの状態異常だけどな」
「今そのツッコミはいらないから」
えーっと。そう言えば黒い鎧着てるこの人たちって、ノンちゃんの仲間だっけ?
完全に存在忘れてたけど。
「ソウデス。ユー、ランスヲクリエイトシテクダサイ」
「え? なんで?」
「ブレイクシマシタ」
「は?」「あ」
ユーと呼ばれた、えっとユーリッヒさん?はそれにポカンと口を開けた。
同じタイミングで私は、さっきの攻防を思い出してハッとする。
そう言えば最後、《ブレイク・ランス》を放って盛大に砕いたような・・・。
「いやいやっ。壊したっ!? 壊したの!? あの槍確か『キーパー』の武器を潰して作った現段階での最高品質だよ!? それをものの数時間で壊したの!?」
「「ごめんなさい(ゴメンナサイ)」」
私達は二人そろって謝った。
まさかそんなに凄い槍だったとは予想外だ。
そういえばあの槍。確かに攻撃力高かったね。あんまり気にしてなかったけどダメージ値で言えば一撃が【ナイト・ゴーレム】のアーツ攻撃よりも強かったような・・・。
「ATK80越えの武器なんてそうそう作れるもんじゃないってのにぃ」
ユーリッヒさんは言いながら頭を抱えた。
うわぁ。凄い落ち込みよう・・・・・ん?
あれ? 今この人なんて言った?
「OH――ユー、sorryデス。ネクストハ大事ニシマスカラ」
「って言いつつ、ノンちゃん昨日も大剣壊してたよね!? それで仕方なく新しいの作ったのに、今度はボス素材で作った最高傑作の槍を一度もモンスターにぶつけることなく壊すなんて!」
「ユ、ユー。ホントー二ソーリーデス。ダカラ―――」
「えーっと・・・」
これどうしようか?
「あのー、一ついい・・・ですか?」
「何? ていうか君は」
「あ、ノンちゃんのリアルフレンドでアリサって言います。それで、これ見てもらってもいいですか?」
言いつつ私は槍のステータスを可視化する。
「「「は!?」」」「ホェ?」
その数値を見て、クロ鎧の三人とノンちゃんは目を真ん丸にする。
あ、この様子だとエリアボスのこと知らないのかな?
やはり私の武器は、かなりおかしいらしい。
ATK110でしかもDEF20に属性とアーツ付き。
現段階では壊れ武器と言われても仕方ない性能である。
「こ、これどこで!?」
「エリアボスの討伐報酬です。多分一回足すのに付き一個は手に入ると思いますよ」
「エリアボス! 正式版での新実装ボスか!? 盲点だった・・・」
「なあ、それってどのくらいの強さか分かるか? 掲示板に乗ってるんだったらスレも教えてくれ」
「やっぱりレイドを組んでの人海戦術で挑むべきかしら? ねぇ、その時パーティはどんな構成だったか教えてもらえる?」
「え? え?」
突然目の色を変えた、今まで黙って見守っていた二人に詰問されて戸惑ってしまう。
で。結論として。
ボスは一人で倒しました。
人数は掛け過ぎるとボスがめちゃくちゃ強くなって一瞬で消されます。
エリアボスには学習型AIがついているので、こちらの攻撃パターンを分析して戦略を立ててきます。
というのを懇切丁寧に説明しました。
ついでに二体目に一撃で殺されたこともしっかり伝えました。
「となると最高でも2パーティくらいに留めた方が良さそうね」
「その前にソロで倒したってのがツッコミどころなような気もするが・・・まぁ、ノンちゃんの友達だしな。うん。話聞く限り攻撃力も高そうだから強力な盾を持ったタンクと大量のポーションが必要か」
「おし、さっそく作戦建てんぞ。ギルメン招集だ」
わー、凄い。もうエリアボス討伐する気でいるよこの人たち。
まぁ、この武器見たらそう感じるのも仕方ないとは思うけどね。
あと、ノンちゃんの友達だし、って括りはどうなの? いや、ノンちゃんがとんでもないのは知ってるけどさ。
三人がさっそくフレンド通信を始める中、私とノンちゃんは視線を合わせ―――キラキラした目を見ました。
えーっと。これ、絶対何かあるよね?
それからノンちゃんがこそこそ近づいて来て。
「(アリサ。ソノボス、二人デ戦ッテミタイデス)」
なんか凄い事言って来たんですけど。




