29話 レムリア鉱山3
評価ブックマークありがとうございます。
鉱山編はまだ続きます。
――鉱山内部横道――
【ロックゴーレム】Lv16
レベルは結構高い。
岩の体は見るからに固そうだ。
しかも。
「完全に塞がっちゃってるよ」
「倒さないと進めないってことね」
まぁ、元からそのつもりだったけどね。
私は槍を構えて走りこむ。
ゴーレムはそれに反応して胴体を向けてきた。
まずは一撃
「《ディフェンスブレ――がっ」
跳びあがると、ゴーレムのパンチが飛んできて、私の体はくの字に曲がる。
このゴーレム。見た目と違って早い。
私は両手をついて着地した。
うえ、今のでHP2割くらい減った。
「アリサッ、大丈夫!?」
「うん。でもちょっとまずいかな」
まずいというのは状況が、である。
まずは地形が悪い。鉱山ということもあり、横幅が狭いためアリサの利点である超スピードによる回避がしにくいのだ。さらにゴーレムが道をふさいでいるため脇からの攻撃や回り込み等は一切できず、正面から立ち向かう必要があるのだ。
正直、それはアリサにとって一番苦手な戦い方だった。
アリサのスタイルは回避を主体としたヒット&アウェイであり、主に横や縦の動きをする。
しかしこの場所は天井も低くジャンプすると、むしろさっきみたいにゴーレムのちょうど殴りやすい位置に跳びことになってしまう。
いくつか手がない訳でもないが。
「どうにかやってみるしかないね」
幸い、ゴーレムは初撃は速いが、それ以外は遅いみたいだ。
今も、少しずつ近寄っては着ているが足取りは遅い。
それが唯一の救いともいえる。
「支援魔法掛けるわ」
「お願いっ」
再び駆け出すと、ゴーレムが腕を引く動作を見せた。
また来るっ。
しかし、回避するような場所はない。
「――《ビルドアップ》」
ロ―ナの支援が飛んできた。
体に力がみなぎるような気がする。ありがたい。
コォオオオオオ
飛んでくるパンチ。私はそれを迎え撃った。
「《縦切り》!」
ガァアアアアアンッ!
ゴーレムの拳と槍の刃が重なった。
《縦切り》は斬撃系のアーツであることから剣系の武器でなければ使えないと思われそうではあるが、実際は戦士の基礎的アーツであり、全てのスキル系統で使用することが出来る。
そしてその副次効果は―――吹き飛ばし。
アーツによって、ゴーレムの体制がやや崩れる。
私は着地して、懐に飛び込んだ。出し惜しみはしない。
「《ブレイク・ランス》!」
文字通りの必殺技を、その無防備な胴体に叩き込んだ。
ドォオオオオオンッ!
バゴッ
ゴーレムの体が崩れた。
HPは数パーセントだけ残っている。
これはアーツの威力がとんでもないのか、それともゴーレムの耐久力が高いのか、判断に迷うところだ。
ゴーレムはHP自体は残っているものの表面が崩れており、中心部に赤い球が見えていた。
もしかして宝玉の類だろうか? もしくは・・・コア?
ちょっと気になる。
―――あれを取るとどうなるのか
コォオオオオオ
ゴーレムの手が伸びてくるが、胴体が崩れかけているため動きがトロい。
それじゃあ捕まらないよ。
ガシッ
手を回避して、コアを掴むことに成功した。
あとはStrにものを言わせて引っこ抜くだけ。
「アリサ!?」
「そいっ」
ポロッ
「外れたっ・・・て、え?」
コアを外すと、ゴーレムの巨体が倒れてきた。
今、アリサの体は宙に浮いているため、当然回避なんてできない。
ドシャァ
「アリサぁアアアア!!」
ロ―ナの声が響き渡る。
それと同時にゴーレムの体は光になり、私はむくりと起き上がった。
「へへっ・・・・アイテムげっとぉ・・」
私は情けない笑顔でそれを掲げた。
【ライフクリスタル】レア度8
生命力の込められた石。ゴーレムの核にもなる。
「もうっ、無茶しないでよ。アリサが死んだら私も死に戻るんだからね」
「ごめんなさぁい」
やっぱり好奇心はほどほどにしないと駄目だよね。
カーン、カーン―――ゴロッ
「「おおおおおおっ」」
それから私たちは、ようやく見つけた採掘ポイントに目を輝かせていた。
掘ると全部が全部鉱石が出るという訳ではないのだが、そこで現れた鉱石が目を引いたのだ。
【紅蓮石】レア度6
炎の力を宿した石。
どっかで聞いたことある奴キターッ
これあれだよね。属性石ってやつ!
「炎の剣とか作れたりして」
「作れるでしょっ、もっと掘りましょうっ」
私達のテンションは上がっていた。
採掘場では時折トカゲや蝙蝠といったモンスも出てくる(レベル10~13)のだが、どれもゴーレムに比べると大したことはなかった。
しかしちゃんと経験値にはなるようで、私たちのレベルは上がった。
【アリサ】Lv14
【ロ―ナ】Lv10
いつの間にかロ―ナのレベルも随分上がっていたみたいだ。
レベル差も、必要経験値の関係から大分差がなくなってきている。
さらに新しい魔法を覚えたようで。
「――《ホーリーバインド》」
光の鎖がトカゲの体を拘束した。
これは敵一体の行動を10秒間封じるというもの。使用するのにクールタイムがいるが、かなり優秀な魔法である。
10秒もあれば普通のモンスならフルボッコだしね。
そんなこんなで手に入れた鉱石はこんな感じ。
【鉄鉱石】【黄石】【ライトクリスタル】【アクアクリスタル】【雷石】【粘土】【レアメタル】
ここに【紅蓮石】もいくつか手に入ったけど、多かったのは【鉄鉱石】と【黄石】だ。
鉄はわかるんだけど【黄石】って何に使うんだろうね?
説明を見たけど。
【黄石】レア度1
黄色い石
ひどすぎる。
せめてもうちょっと特殊効果とかあげてよ。
他のは属性石と合成用の鉱石だね。
【ライトクリスタル】レア度4
軽いわりに丈夫な石。作ったインゴットを制作時に混ぜることで軽量化できる。
【レアメタル】レア度5
恐ろしく硬い。丈夫な金属。
こんな感じ。レアメタルは混ぜて硬くするんだろうね。ライトクリスタルの方は名前的に勘違いしそうだけど『軽い』ってほうのライトなのね。
そして。面白いものが出てきた。
ガシャン
それは一本の棒。
【太古の杖】レア度10 耐久10%
ATK1 MATK1 MDEF1 必要Str50 Int10
効果:『封印状態』
『封印状態』
『封印状態』
ボロボロの杖。何か強い力を感じる。
伝説武器、キタッ
「でもすぐには使えなさそうね」
「うーん。とりあえず耐久だけは回復してみるけど」
一応、金属製みたいなので『スキップ』を使って、《研磨》を施してみる。すると。
【太古の杖】レア度10 耐久100%
ATK1 MATK1 MDEF1 必要Str50 Int10
効果:『封印状態』
『封印状態』
『封印状態』
錆び付いている杖。何か強い力を感じる。
ちょっと説明文が変わった。けど、ボロが錆に変わっただけだねこれ。
「うーん。これ直すなら《修復》のスキルが必要かな?」
「またスキル取るの?」
「んー、どうしよっか。これは別に急ぐ必要はないし。余裕でてきたらでもいいんだよね」
「気にはなるけど、そうした方がいいわよ。アリサはちょっとスキルにポイント使い過ぎに思えるし」
じゃあ、これはストレージにしまっておこうか。ポイッと。
それから私たちは行き止まりに当たり、引き返すことになった。
次はどっちに行くかという話合いになった結果、何があるか分からない下よりも反対側に繋がっている可能性のある上に行ってみることに。
そこでは。
ギギィ、ギィー
ギャギャ
ギィー
小さな、茶色い生物たちがピッケルを持って壁を掘っていた。
その姿はエルフのように尖がった耳をしており、鼻が長い。全体的に茶色で頭はツルツルだ。
そして目は爬虫類のようにつり目である。
ゴブリン。
それが布や革で作った服を着て、テントを張って過ごしていた。
待ち構えていたのはゴブリンでしたっ。
ドワーフと思った人。おしいっ。




