20話 西門
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こんなに読んでもらえるとは思っていなかったので感激です。
これからもよろしくお願いします。m(__)m
西門
そこでは亀やハリネズミといった。殻や背に閉じこもる行動を取る防御系のモブが出現する。
HP総量事態はそれほどでもないが、プレイヤーの攻撃はその背にある『壁』によって阻まれ、ほとんど効かない。
しかし、こちらが攻撃を続けていれば殻に閉じこもり続けてるので、攻撃し続ければいつかは倒せる相手なのだ。
そのため、ここには攻撃を当てる練習。もしくはスキルや職業レベルの向上を目的に訪れるプレイヤーがほとんどで、中には攻撃力はあるが最初のステ振りでスピードに回さなかったため他のモブ相手では攻撃してもヒットしないのでここに来た、というプレイヤーもいた。
最初に大剣や重鎧を選択してしまったプレイヤーがそれにあたる。
そういう者たちはまずはここでレベルを上げ、Agiに少しずつ振ってレベリングしていくのだ。
ゆえに。
『それ』がそこにいるのは明らかに場違いだった。
(えーっと。確か亀が一番硬いんだったっけ?)
アリサはフィールドに出ると、空いてるモブはいないかとキョロキョロ探す。
このフィールドは南と異なり、人気が高いことから人も多い。
そのため、プレイヤーで溢れ、出現モンスの取り合いが起きていた。
サービス開始直後のMMOあるある現象である。
みんな必死にモブを叩いていた。一見場所の空きはなさそうに見える。
「うーん。ちょっと待とうか」
こういう時は焦っても仕方ないのだ。最悪南のビッグボア辺りで実験すれば良いだろう。
と、そこに調度よく、アリサの目の前に亀のモブが出現する。
(あ、ラッキー)
さっそく殴ってみよう。
ズガンッ
ギュゥ
「・・・・・・え?」
亀のHPは8割ぐらい削れていた。大ダメージを受けたことで亀はぴくぴくと痙攣を起こしている。
いわゆるスタン状態だった。
えー・・・。
アリサが行ったのはあくまで通常攻撃である。それで8割削れたということは。
「アーツ打ったら即死だね」
とりあえずその亀には止めを刺しておいた。
(う、うーん。これはさすがに・・・)
周囲を見ると皆必死に攻撃を繰り返していた。
アリサに注意を向けている人はちらちらとはいるがたまに視線を向けてくる位でガン見している人はいない。
(ちょっと自意識過剰だったかな)
ほおが赤くなるのが自分でもわかった。恥ずかしい。
しかし、それも仕方がないことだった。
ここのモブは攻撃をし続ける限りは防御姿勢をとり続けるが、一度止めてしまえば反撃される。そしてここのモブ達はなかなか攻撃してこない代わりにATKを高く設定されていた。
誰も反撃はうけたくないのである。
中には二人で順番に攻撃を繰り返しているところもあるくらいだ。
しかし。
「《縦切り》!」
ズガンッ
大剣を持ったプレイヤーがアーツを放ち、HPが半分近く残っていたはずの亀を光に変える。
このように、初期値をほぼStrに極振りしたプレイヤーなど(※失敗例です)がたまにいるため、アリサが二撃で倒したことはあまり注目されていなかった。
―――通常攻撃であることは除いて。
そうとは知らないアリサは、回復すると周囲を見回し。
(・・・・・あれ?)
一か所だけ誰も狙ってないモンスがいることに気付いた。
【モールマジロ】Lv10
見た目はアルマジロ。ただし、下半身は地中に埋まっていた。
良く見れば皆、この【モールマジロ】だけは避けて狙っている。
それは【ビッグボア】と同じく全門前フィールドに一種類ずつ存在する強モブと呼ばれる一体だった。
防御、攻撃共に高く、HPは【ビッグボア】より低く設定されているが。誰も攻撃しないのには一つの理由があった。
―――こいつだけはダメージを受けながら攻撃してくるのだ。
ここにいるプレイヤーは攻撃特化型ばかりだ。中には防御特化もいるが、どちらも強モブの攻撃を受けながら倒すのは難易度が高かった。
いくらかレベルが上がれば狙っていくプレイヤーも出てくるだろうが、現状、『【モールマジロ】には手を出さない』というのがここにいるプレイヤー達の共通認識だった。
それを―――
「そいっ」
もちろんアリサが知るはずがなかった。
アリサは正式版に入ってからはあのスレを発見して以降、公式なもの以外は見ないと決めていたからだ。
ザシュ ムゥゥゥウウウウウ
あ、鳴き声可愛い・・・っは!
全体的に可愛いモンスだったので一瞬思考がそれてしまった。
HPは・・・3割消えてる。やはり【地槍】の攻撃力は他の武器とは比較にならなかった。
流石ボスボーナスである。
【モールマジロ】の攻撃は主に爪を使った横への払いとパンチだった。アリサはそれらを体をひねって回避する。
正直攻撃事態は鹿の蹴りよりも遅かった。
背中側に回り込むと裏拳しながら後を追って来る。
しかし。
空中に跳んでそれを回避すると【モールマジロ】はキョロキョロしてアリサを探す。
(自分の上からの攻撃には対応してないと・・・)
【モールマジロ】は地面から出ている部分だけでも2メートル以上のサイズがあった。故に、接敵する際はいつも見下ろすポジションにいるため、空からの攻撃に対応できないのである。
―――後に攻略掲示板に載せられる内容だった。
「《ディフェンスブレイク》!」
隙だらけとなった頭部に向けて青いオーラを纏った槍が振り落とされる。
ズガッ
ムゥゥゥ
槍が顔面をぶった切ると、そのまま【モールマジロ】は散って光へと変わり、アリサは穴の消えた地面に着地した。
7割ほどあったはずのHPは防御貫通攻撃によって一瞬で吹き飛んでいた。
(・・・・・えぇー)
槍が、あまりにも強すぎだった。
その頃のニア達
「・・・・・」
「ニア。むくれてもレベルは上がりませんわよ」
「・・・わかってる」
【ニア】Lv8
少しずつだがレベルは上がっていた。
しかし、アリサの話を聞く限り、アリサのレベルは実際のものよりも高い。それに追いつこうと思ったらボスを狙う他ないのだが。残念ながらボスに挑戦するほどの余裕は、まだニア達にはなかった。
その時。
「おーいっ、嬢ちゃんたち。こいつ手伝ってくれや! 硬くってよぉ」
「・・・ゲンジイ。硬いって何と――
【パラセクトフライ】Lv8
ギチギチ
「ひぃっ」
それは芋虫を硬くしてトンボと混合させたような見た目の、簡単に言うとキモイ虫モブだった。
南門の奥には森が広がっている。
(・・・・・・)ニヤ
―――これだ
【モールマジロ】と戦いだしたアリサを見た周囲の反応。
「おい、なんか女の子が強モブ狙ってんだけど」
「は? おいおい。誰か止めてやれよ。初心者だろ」
「いや、でも装備整ってるぜ」
「じゃあβの誰かが装備揃えて挑戦か? 場合によっては加勢するか」
【モールマジロ】の攻撃パターンを分析するためによけに徹するアリサを見た時の周囲の反応。
「・・・速くね?」
「いや、おいおいちょっと待て! 今空中でバク転しなかったか!?」
「あ、また跳んだ」
【モールマジロ】を一撃で沈めた時の周囲の反応。
「「「・・・・・」」」
(((あの娘レベルいくつっ!)))
アリサ。公式チートにランクアップ。
なお、ボスボーナス武器はレベル20相当の武器です。現状レベル差があるのでチートに感じますが、レベルが10も差があればMMOなら圧倒して自然です。
SPを10レベル分多くもらっているアリサは狩場変更をするべきですね。




