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15話 夢の終わりと夜明け

評価ブックマークありがとうございます。ユニーク1万人突破しました!

どこまでいけるかわかりませんが、これからもよろしくお願いしますm(__)m

今日も二話投稿です。

―――夢のようだった。

その空間はとても居心地が良くて、自分が帰って来たんだと感じることができた。

毎日毎日走り込んでいた。いっぱい練習して、研究して、また努力して。そうして掴んだあの空間。もう二度と味わえないと思っていた快感を、この世界で手に入れたっ。


「アハッ」


きっと私は、とても情けない顔をしていただろう。

多分笑顔だ。でも、頬を冷たいものが伝うのが分かった。

どうして? 嬉しいはずなのに? ずっと・・・『これ』を望んでいたんじゃないの?


いや、分かってる。違うって。

私は戻りたい。あの時の、あの場所。

片足を失う前までいた。あの『世界』へ。

―――でも。


(あー、覚めちゃった・・・)


目の前にモンスターが見えていた。

夢の時間は本当に短い。一瞬しか、浸らせてくれなかった。


「もうちょっとくらい、眠らせてくれてもいいじゃん。私の馬鹿」


言っても仕方ないので、ごしごしと涙を拭う。

さあ、後片付けを・・・・始めないとね。


ザンッ


鹿の首に赤いエフェクトが発生して、そのHPを刈り取る。

次。


シュン、シュン


向かってくるウルフ二匹をそれぞれ裏と刃でかち上げ割いていく。

やっぱり、所詮はヴァーチャルゲームの世界だ。どれだけ現実の再現をしようと思っても、ゴールもなければボールもない。パスをくれる仲間もいない。それじゃあどうしても『差』が出来てしまう。

彼らはシステムに過ぎないのだ。

慣れてしまえばかわせる。ルールなんてないから体当たりにパンチ、キックもありだ。

私の方も槍で突いて斬っている。


「やっぱり・・・・・全然違う。これじゃないっ」


今度は三体。それも皆アリサに触れることはできずに散っていく。


テロン♪『レベルが上がりました』

テロン♪『《槍》のスキルレベルが5になりました』

『アーツ:《ロングスピア》を得ました』


その表示が酷く滑稽な気がした。

レベルって・・・アーツって何? そんなもの現実にはないよ。

こうして走っている足も偽物で、本当の私は走り出したらすぐ躓いて、転んでしまう。


「《ロングスピア》あああ!」


【ビッグ・ボア】の眉間を、アーツが貫く。クリティカルが決まった。

ブォオオオオオ!


「・・・うるさいっ」

ザンッザンッザンッ


攻撃力が、短剣とは段違いに高い槍による攻撃はビッグボアの防御をやすやすと貫いて、そのHPをゴリゴリ削っていく。

そこに、ジャンボラビットのパンチが飛んでくる。


「人間みたいな動き・・・でも違うっ」

スパッ


回避と共にその首を切り裂く。後は突き刺すだけ。

もはや八つ当たりに近かった。自分の中で押さえきれない感情があふれ出して、何かにぶつけないと壊れてしまいそうだった。


「《ロングスピア》ッ!」


二回目のアーツが、ビッグボアの体を貫き光に変える。

周りにモンスターは・・・いなかった。

いつの間に倒していたのだろう? やはりアリサはノーダメージだった。

ただ、そこには何の感動もなく。

あるのは───その場には何もないという虚無感だけ


「う、うぅ、ひっく・・・ええええぇぇんっ」


我慢できず、私は座り込んで泣き出した。

これが夢から覚める時の私の時間。現実に引き戻された、絶望の瞬間だった。

分かってた。分かってたよっ。


「所詮ここはゲーム。この場所もモンスターだって、全部人が作ってるんだ! キャラクターも、何もかも!」


きっとどこかで期待してたんだ。

「これなら」って。でも結局、私を満たすことは出来なかった。もう一度味わいたかっただけなのに。どうして『同じ』でいてくれないの? 『私』の足は、この世界でないと手に入らないのにっ。


「・・・・止めちゃおっかな」


ふっ、とそんな考えが生まれた。

まだ始めたばかりだし、こんな辛い思いするくらいならやらない方が―――


ギャオオオオ

「え?」


その時、私の傍には、一つの茶色い球あった。


【地の宝玉】


それはビッグボアのレアドロップ。・・・そして。


【オオヅチリザード】Lv15 『エリアボス』


グァアアアアアアアアアアッ!


―――ボスへの挑戦権だった。

ゲームの夜は―――――明けていた。

人は一度満たされるとさらに上を求めるもの。

アリサは一時的に満足したことで、本当に自分が望むものに気が付いてしまったんです。

次話は昼頃公開します。

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