14話 夜の南門
本日二話目です。
ジャンル別日刊ランキング変わらず6位です(・ω・)ゞ
二日連続で10000PV超えましたっ! 皆さんありがとうございます!
これからもお付き合いのほどよろしくお願いします。m(__)m
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみー」
おばあちゃんにそう返事して、私は自室に戻る。
そしてベッドの上には当然のようにおかれたオンラインギアが。
おじいちゃんとおばあちゃんは既に眠っている。この家で今起きているのは私だけだ。
というわけで。
チャララ~♪
ビックゥッ!
「え、え・・・ってなんだ携帯か」ピッ
「あ、お母さん。何?・・・え、明日も帰れないの? そっか。うん大丈夫だよ。・・・ゲーム? ――うん。すっごい面白かった。・・・・そんなことないよ~。―――でも・・・うん。分かった。―――無理なんてしてないよ。・・・うん、大丈夫。それじゃあね」ピッ
ふー。
ビックリしたぁ。一瞬ばれたかと思った。
いつも私だけ起きてる時間だもんねぇ。はぁ。
じゃ、気を取り直していきますか。
「リンクスタート」
南門の前。
ログアウトした場所と同じだった。インするときは前回いた場所とセーブポイントのどちらかを選べるけど、今回はこっちにした。
外からのほうが町の中の店の位置が把握しやすいからだ。
そう。これからするのは―――買い物だっ
今日の狩りで、短剣は私にあってないということが分かった。もっとリーチの長い武器のほうが良いだろう。でも刃先が長い武器というのも違う気がする。
それで目をつけたのが『槍』。突く武器だから向かないと思ったんだけど、棒の部分がなんかラケットっぽいと思ったのだ。やっぱり慣れてるほうが扱いやすそうだし。
問題は槍が突き系の武器だってことだけど。
【スラッシュランス】レア度3 耐久100%
ATK43 必要Str35
刃の付いた槍、斬撃系のスキルを使用できる。耐久値は低い
これでいい。武器屋で偶然見つけたのだ。槍よりも『鉈』って武器に近いかな?これ使い続けてたらスキルがそんな風に変化するかもねぇ。(フラグ)
お値段は3000Gと高いけど、素材を売れば買えない値段じゃなかった。自分で生産するのは・・・また今度でっ! まだ一日目! 急ぐ必要はないっ。
次に耐久値が低いってことだけど。それは昼に買った【砥石】があれば問題ない。
地味に《研磨》が便利だ。【鍛冶師】なのにやってるのはほとんど《研磨》って・・・。
で、気になるのは予算だけど。
所持金:1435G
うんオッケー。買うのは後一つだけだから大丈夫。
次に向かうのは雑貨屋。何故雑貨屋に装備を撃ってるのか気になるところだけど。
【隼の雫】レア度4
SPEED10%上昇 【首】
隼を模ったネックレス。つけると体が軽くなる。
1200G
うん。これこれ。
お値段は効果の割に安い。どうもこのゲーム。リアルとほぼ同じ感覚でプレイするせいか、Agi上昇系が不人気になりやすいんだよね。体の制御が上手くできないらしい。
私はもうちょっと早くなりたいかなぁーとか思ったりしてるんだけど。やっぱりおかしいのかな?
さて・・・後は。
《槍》を取得しました。SP:5
《速度上昇》を取得しました。SP:15
これでよし。装備も変更して。
新しい装備とスキルをとったことで体が軽くなるのが分かる。
でも・・・。
私は走った。早く、速く。
なんとなく分かった。―――こんなもんじゃない。
もっと・・・もっと行ける。もっと速く―――ダッ
風が鳴った。
遅い。全てが遅い。私の目は、体は、心は、もっと先に行けるって訴えかけている。
―――いつの間にか門についていた。
全力疾走した時間は本当に短い。
もっと走っていたいとも思ったけれど時間はそこまでない。さすがに寝る時間は削る気はないので狩場へと急ぐ。
夜の南門
「良かった。人いないや」
初日だし、徹夜でもする人いるかもと思ったけど、皆夜はパーティ狩りよりもソロを選ぶ傾向にあるみたいで助かった。
今からやることは、ちょっと人には見せられないマナー違反な行為だからね。
おそらく、出来るのもまだ人が集まっていない今日くらいなものだろう。一週間経てば第二陣もやって来て人数も増えるはずだ。その内機械の値段も下がって人はもっと増えていく。
そうすればフィールドはごった返して、こんなバカげたことは・・・きっと最初で最後。
そこにいるのは相変わらずの鹿くん、それに【プーギー】【ビッグボア】の他に夜限定なのか【ホワイトウルフ】と太っちょ二足歩行の【ジャンボラビット】っていうモンスが増えていた。
(いいよ。手の内が分かってる子だけじゃつまらないもんね)
手に持った槍が良く馴染む。
私は・・・今だけ、あの時に帰るんだ。
ザクザクザクザクザクザク
それは、言ってしまえば馬鹿の所業だ。
その場にいるモンス。見えている範囲にいる相手をすべてに一回ずつ攻撃する。
そんなことをすれば当然。
ウォオオオオオ
ギャァアアアアア
ブルァアア
ブォオオオオオオ
全てのモンスが怒りの声を上げ、襲い掛かってくる。
「さあっ、おいでっ! かかってきてよ!」
ウルフの攻撃を斜めに跳んで避け、その先にいたラビットの拳を体を屈めつつ脇をすり抜けるようにして通過する。
鹿の前足を斜めにかわし。猪の突進を――――-「アハッ」―
――宙を、舞った。
空中で体をそらせ、その下を猪が通過する。アリサの体はその時発生した余波で浮き上がり、猪の背を飛び越えた。
その時、もし目撃者がいたならばこういったことだろう。
―――彼女は鳥だ。
それはまるで鳥が青い翼を広げて滑空しているかのように綺麗で、輝いていた。
「さあっ、もっと。もっといっぱい楽しませてよ! みんな!」
獣は選手だ。
そしてアリサはその相手チームのエース。
皆がアリサを止めようと、ゴールをさせまいと壁を生み出す。しかしアリサはその小柄な体躯と運動神経、空間及び状況把握能力を研ぎ澄ませ、その全てを、分析、行動して回避、前進する。
巨大な選手の波を、小さな少女が越えていく。
誰もが彼女を――――荒谷理沙を止められない。
彼女こそが最強で、最速で、全ての頂点だった。
そこにいる彼女はいつも笑顔を振りまき、観客を、そしてフィールドにいる全ての選手の意表をついて―――魅了した
「さあもっと――――――私に試合をさせてっ」
―――――彼女の望んだ『世界』が今、そこにあった。