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13話 願望

評価ブックマークありがとうございました。

昼にもう一話投稿します。

南門前


「そいっ」

ブルァ!


私はさっそく手に入れた武器を試してみた。毎度的にされる鹿くんお疲れ様ですっ。

えーっと。HPは・・・大体7~8%くらい減ってるかな?


「おー、武器変えただけなのに初期の二倍ダメージ」


アリサにとって、それは単純な攻撃力の増加以上の意味があった。

それは―――


ザシュザシュザシュ

ブルッ


連続したダメージ蓄積によって起こる敵の怯み。要は隙ができやすくなったのだ。

これで畳み掛けやすくなった。

余談だけど、エレナの杖はめっちゃキラキラしてました。

他のプレイヤー達の視線が痛かったです。

―――エレナの掲示板、絶賛ネタが増加中



「《スラッシュ》!」


顔面の切り上げ。鹿のHPはそれで二割が削れる。

(よしっ)


スカッ


「あれ?」


これで止めというところでダガーは、鹿の顔面の前を通過して外れてしまった。

鹿が怯んだことで一歩下がったために起こったことだったが、原因はそれだけでなく。

―――ダガーはほかの短剣と比べてもリーチが短い。


「・・・あ」

ガンッ


それは、ゲームが始まってからアリサがはじめて作った明確な隙だった。

胸を蹴り飛ばされたアリサの体は吹っ飛ぶ。


「こふっ」

「アリサッ!」

「・・・『フィリーダイブ』」


ニアの召喚獣(捨て身攻撃)によって一先ず鹿は倒される。が。

私はしばらく倒れたままだった。

というのも。


「うーん。私、もしかして短剣向いてない?」


そんなことを結構真剣に考えていたからだ。

そこにニアの呆れのこもった声がかかる。


「・・・初ダメージでそれを言う?」

「でもリーチが足りない気がするんだよねぇ」

「・・・ダガーはそういう武器。嫌なら初期装備に変えればいい」

「それだとダメージ下がっちゃうよ。うーん。他の武器・・・でも重量は上げたくないし」

「・・・時間はある。アリサSPもかなりあまらせてるし、じっくり考えればいいと思う」

「うん。ありがとう」

「ではもう少し狩ったら落ちましょう。もうすぐ夕食ですし・・・歩く時間が」

「ハッ、それはまずい」

「・・・引きこもりには分からない感覚」


運動不足は体に悪いんだよ。体力や筋力。それと・・・お腹にも。

幸い、まだそっちに肉が行ったことはないけど、油断は禁物だ。


「だったらもう落ちようか。結局おじいちゃんたち来なかったし。日が沈むと外出してもらえないと思うから」

「・・・仕方ない。私はソロでどこまでできるか試してく」

「ではわたくしも落ちますわ。二人とも今日は楽しかったですわよ。ニアの顔も久しぶりに見れましたし」

「・・・最後は余計」

「ふふっ。ではまた明日」

「バイバイ」

「・・・おつー」




『ログアウト』




現実の自室。

「ふー」


頭からオンラインギアをはずして起き上がる。

今朝はいろいろ心配だったので下でインしたが、自室はちゃんと別にある。

まあ16歳の女の子なら当たり前だが。

時計は5時。

ちょっと早いけど、歩くならこれくらいの時間からじゃないとね。

それにしても・・・。

(自分にあった武器・・・か)


押入れを開ける。

そこには使い古されたラクロス用のラケットがあった。

地味に四代目だったりする。


「いつもつい張り切りすぎて、勢いで壊しちゃったんだよね」


壁には新品のラケットもあった。

ついに出番の来なかった五代目。武器といえば、やはりこれだった。

手に良く馴染む。・・・やっぱり剣じゃないね。


動きやすい格好に着替え、下に下りる。


「おばあちゃーん。少し歩いてくるね」

「気をつけるのよー」

「はーい」


歩行時には、出来るだけ右足に負担を掛けないようにして歩くのがコツだ。重心を掛け過ぎると転んじゃうからね。

病院のリハビリは、ずっと運動してきたこともあってサクサク進んだ。

義足を付けてから一週間でバランス保持が出来るようになり、一カ月後には日常生活に支障をきたさないレベルまで回復した。先生も驚いてたなぁ。


「じゃあ、またなー」

「バイバーイ」


公園で二人の男の子が手を振って別れていく。どっちも駆け足で帰って行った。

(走り・・・か)


『あっち』では走れていた。こんなとろとろした歩きじゃなくて、ずっと速く。一歩一歩が大きくて、複雑に。まるであの頃のように・・・。

私の中で、ひとつの願望が芽生えていた。


―――あの頃に戻りたい


必死に考えないように、忘れようとしてた私の望み。

あのゲームの・・・『世界』に入ったことで思うようになってしまった。

もう一度・・・と。


「はぁ」


脱力して、ため息をつく。子供な自分に呆れた。

だってその願いは不可能なことで・・・・・・・・あっ


一つ思いついた。

完全にあの頃通りって訳には行かないけれど。でも。

出来るかもしれない。

おそらくチャンスは・・・今日を逃せばもうないかもしれない。


(・・・おばあちゃん許してくれるかなぁ?)

私は、密かにそれを決行することに決めた。

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