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12話 買い物

ショッピング回です。

評価ブックマークありがとうございます。

今日は一話だけです。

割と長いです。

「そう言えばゲンジさん達はいませんのね」

「・・・それ、私も気になった」


中央に向かって歩いていると、二人に質問を受ける。

まあ大したことじゃないけど。


「ああ。二人は用事あるから。おばあちゃんは普通に買い物だけど、おじいちゃんは近所の仲間とゴルフしに行ったよ。多分夕方まで帰ってこないと思う」

「へー、いいご趣味ですわね。健康的ですわ」


(うーん。あれは趣味とはちょっと違うんだけど、言わなくていいかなぁ)




その頃のゲンジ

「おーい。今日こそ、今日こそわしが勝つかんな」

「ガハハハッ、何を言う。美咲ちゃんにマッサージしてもらうんわ俺に決まっとろうがっ!」

「何を言うか! みさきちゃーん! 絶対勝って見せるかねー」


「あははっ。皆さん怪我だけはしないでくださいね」


美咲さん。このゴルフクラブの会計役兼おもりで、二十代中盤。

優しい笑顔が栄える女性で、ジジイ達が勝手に決めたご褒美係でもある。

尚、現在絶賛婚活中だが、ジジイたちの相手に追われて中々相手が見つからないでいるフリーターでもある。

暇そうにしているところに目を付けられた可哀想な人であった。


「ガハハー!!最近理沙はしてくれんからなっ、楽しみじゃあああ!」




始まりの街中央

ここまで歩いて来て思ったがことがある。

それは・・・・・。

(やっぱり見られてるなぁ)


周囲の多数の視線だ。やはり女の子三人でいると目立つのか、皆ちらちらと見てくる。

私はあの掲示板を思い出してうんざりとした。

でも、まだ直接的な被害はない訳だしちょっと嫌だと思うけどある程度は諦めてスルーしようか。


「さて。何から買おうか?」

「正直、ゲームをはじめてからお店は全然見ていませんでしたので色々見て回りたいですわ」

「・・・それには同意。でも必需品は先に買っておいた方がいい」

「とりあえずニアの意見に賛成かな。お金あると無駄遣いしちゃいそうだし。必要なものだけ先に揃えちゃお」


とりあえず一番欲しいのは砥石だね。

できれば鍛冶セットもそろえたいけど。オリジナル装備とかあこがれる。

二人にそれを言うと快く了承してくれた。じゃあ行こうっ




雑貨屋

普通『道具屋』とかだと思うんだけど、色々なものを取り扱ってるからこの名前なのかな?

この店では主にそれぞれの副職用の道具を置いてあり、外から見ると小さい店だが、中はコンビニレベルの大きさがあった。さすがゲーム。物理法則無視だね。


「わぁー、アイテムがいっぱいありますわねぇ」

「・・・・・。うん」

「・・・アリサ。どんまい」


【携帯鍛冶セット『初級』】10000G


高いよっ!!

なんで、こうっ。欲しいと思った時にはバカみたいな値が着くのかなこのゲームはっ。

しかもこれで『初級』だし。買わせる気あるのだろうか?


「・・・仕方ない。序盤は市販品。これがMMOの常識。むしろ自分で武器を作成できるだけこのゲームは自由度が高いと言える」

「うぅ・・・オリジナルの武器とかまだ先かぁ」


ちなみに砥石はちゃんと買えました。


【研磨セット】500G


【鍛冶セット『初級』】との差が大きい。まあ必需品だもんね。仕方ないね。

ここでは後はお守りなんかも売っていた。


『【防御のお守り】1500G

DEFとMDEF5%上昇    』


『【攻撃のお守り】2000G

ATKとMATK10%上昇   』


例としてはこんな感じかな?他にも特殊能力系なんかがあるみたいだけど、店頭にはならんでない。

そういうのは序盤では手に入らないらしい。

ニアは【攻撃のお守り】を買うかどうかで迷ってるみたいだ。


「・・・杖とどっちにするべきか」

「まあ、まだ武器見てないから後でもいいと思うよ」

「・・・むー」

「ひゃあああああああっ!」

ビクッ


「な、なに!?」

「・・・エレナ?」


他のお客さんもその声にびっくりしてる。とりあえず「すみません」と頭を下げておく。皆笑顔で「大丈夫」と言ってくれたけど、鼻の下伸び切ってるのは何とかなんないかな・・・。

それから声の聞こえてきた角をそーっと覗いてみると。そこには腰を抜かしたエレナと、視線の先には―――


「・・・うえ」


思わずそんな声を出してしまった。

そこにあったのは、『虫』・・・が入った瓶である。

うねうね動いてて気持ち悪い。


「何これ?」

「・・・【ミド虫】特殊アイテムの一つ。畑にまくと勝手に害虫駆除をしてくれる。副職が【農夫】か【農婦】以外では特に価値のないアイテム」

「そんなのもあるんだ・・・」


私、絶対無理だ。

―――アリサは虫が苦手だった。


「あ、あ、アリサ。も、もうここでの用は済みましたのよね? つ、次に行きましょうっ」

「・・・。うん。そうだね」


震えるお嬢様が涙目ですがってくる姿に私の心は和んだ。

Sとかじゃないと思うんだけど。なんでだろうね? 


「・・・人は邪気のないものには癒されるもの」

「あー、なるほど」


エレナにはぜひともこのまま育ってもらいたいねっ。ぐっ。

周囲にいた男性プレイヤーたちが一斉にメニューを叩いていたのは見なかったことにしよう。そうしよう。

三人は道具屋を出て次に向かった。



次は本命の武器屋である。

「おうっ、いらっしゃい。好きなだけ見てってくれや」


武器屋に入るとガタイのいいおじさんが出迎えてくれた。

ここでは鞘に収まってない、裸の武器がゴロゴロと飾られている。


「錆び付いたりしないのかなぁ?」

「・・・そこは突っ込んじゃいけない」

「そうです。きっと裏にそれ専門の方がいらっしゃるのですわ」

「「それはない」」

「え?」


さすがお嬢様です。とだけ言っておこう。

さて。まずは武器を見ていこうか。短剣は、っと。


『【ショートソード】レア度2 耐久100%

ATK10 必要Str18

店売りの短剣。もろくてすぐに壊れる。

500G                  』


これが一番安いやつ。初期装備の倍の攻撃力があるけど壊れやすいらしい。

使い捨てが基本なのかな?

次の奴は。


『【スモールソード】レア度3 耐久100%

ATK12 必要Str22

店売りの短剣。

800G                  』


説明文が短いです。これが基本ってことかな?

後、ショートとスモールって短いと小さいで何が違うんだろうか?


私のstrは大分高くなっているので少しくらい強力な奴のでも扱えるはずだ。

で、選んだのはこれ。


『【シルバーダガー】レア度4 耐久100%

ATK25 必要Str30

効果:アンデッドダメージ20%上昇

銀製の短剣。刃が少し短い。アンデッド系に有効。

2500G                    』


ちょっと予算オーバーだけどその分は狩りで手に入れた素材を売って賄った。

内訳はこんな感じ。


『【ホーンラビットの角】×1 300G

 【ホーンラビットの皮】×3 50G×3 

 【ホーンラビットの肉】×2 30G×2 

 【オーラディアーの皮】×10 80G×10 

 【オーラディアーの肉】×8 120G×8 

 【ビッグボアの皮】×3   200G×3 

 【ボタンの皮】×2     30G×2

 計2930G               』


中々の収入だ。

特にホーンラビットが意外とお金になってるのに驚きである。角ってレアなのかな?

鹿とビッグボアの角は売ってない。加工できそうだし取っておくことにしたのだ。

という訳で武器が強くなりました。

わぁー。


「・・・嬉しそうだね」

「あ、ニア。そっちはどう?」

「・・・今回はやめておく。いいのあったけど素材売っても届かない」

「わたくしはこれにしましたわっ」

「へー、エレナは買ったんだ」


どれどれ・・・・え?


『【マジックワンド】レア度3 耐久100%

 MATK30 ATK5 必要Str15 必要Int35

 特殊加工されている魔法の杖。振ると青紫色の光が出る』


「「・・・・・・・」」

「あら? 二人とも黙ってどうしましたの?」


いや・・・うん。エレナがそれでいいなら別にいいんだ。うん。

隣でニアが「・・・バカがいる」と呟いていたことは気にしないでおこう。




後は防具屋にポーションの専門店なんかがあった。

そして子の防具屋が問題だった。


「おい、押すんじゃねえよ見えねえだろうが」

「てめえ、その場所変われっ」

「邪魔だお前ら」

「見えんっ」


馬鹿ども。(男性プレイヤー達)

防具屋には単純に防具だけでなく様々な衣装も置いてある。

そしてそれらは店の中に限り試着が可能なのだ。そこに女子三名で入っていく私達とそれを目撃したプレイヤー達。結果、女の子の着替えがみたい男性プレイヤーが殺到という状況。なのだが。

ここで残念な報告を一つ。このゲームはR15。つまり『そういうもの』には対応していないのである。

どういうことかというと。


「ニア。このスカートなんてどうでしょう?」


そう言って現れたのは、赤のミニスカートに白のキャミで着飾ったエレナ様。今だけ髪をいじって縦ロールを後ろロールにチェンジしている。

ちなみにキャミの胸元がとてもぱっつんぱっつんいっております。けしからんっ。


「・・・いいんじゃない。太ももけしからん感じで」

「もうっ、そういうのはいいですわ」


ニアは胸から視線を外し、エレナの足を見ながら答えた。そんなに見たくないの?

エレナはニアの返答に軽くすねながらズボンに装備を切り替える。

そう。切り替えるのだ。

変化は一瞬。足のグラフィックがブレて気づいたら別の装備に変わっているのだ。

という訳で。


生々しいのを想像してた方々、ざまぁ。

くっ、と悔しそうにするプレイヤー達を――――と思ったら。


「あの足のむっちり具合。いいな・・・」

「白い脚線美。中々」

「あの服、胸はちきれそうでなんか」

「ゴクリ」


どうしよう。私、いまこいつらよりもエレナを殴りたい。

あのボディは無敵。無敵なのかっ!?


「あ、あの。アリサ? 顔怖いですわよ」

「いいよねぇ~、持ってる人はぁ」


余裕がありそうで。

そのお肉には一体何が詰まってるのかなぁ~。


「もうっ。だったらアリサも《布》スキルをとればいいじゃないですの」

「・・・・・そういう意味じゃないもん」


《布》スキル。それは普通の服を着る際に必要になるスキルだった。

このゲーム。近接職がフル装備をするためにはスキルが一つでは足りないのだ。

鎧を着るために《軽鎧》《鎧》《重鎧》の内から一つと、『内着』と『足部』に《布》スキルが必要になる。足部は一応、靴と連動になるが足鎧の装備が可能だが、内着には必ず《布》が必要になる。

スカートはオール布装備に分類される。いや、プレイヤーが作ればやれるかもしれないけど、現状では出来ない。

そして私は《布》スキルを取っていない。

そのためこのファッションショーには参加していないのだ。

【携帯鍛冶セット】買いたいから出来るだけお金使いたくないし。試着のためだけにスキルスロットとSP使いたくない。

男性プレイヤー達の視線が注がれてはいるけど、そんな期待した目で見ても取らないからねっ。

今とっても惨めな思いするだけだし・・・。きっとニアも――


「ってあれ? そういえばニア・・・・・は?」


いつの間にかいない。と思って探すと・・・あ、いた。

壁に向かって蹲ってるけどどうしたんだろう。


「――めあの乳でかめ堕肉のくせにちやほやされやがってたかだか脂肪の塊の分際でゆさゆさ揺れてうっとうしいだけのくせして調子づきやがって肩こりの原因さっさと腰痛起こして垂れてしま――ブツブツ―――」


怖っ!


そのまま放置するとニアが怖かったので、私は急いで二人を連れ出した。

男性プレイヤーが残念そうにしていたけど知るかっ。

とにかく私はその場に居たくない一心で店を飛び出した。

それに伴い、二人の装備は元に戻り、初期装備の黒いローブ姿となる。

もう二人を一緒に連れてくるのはやめよう。そう誓った。



ポーション専門店

ここは、まあ普通に買ったね。

ポーションは調子の戻ったニアの勧めで【マジックポーション】を二本ずつ買っておくことにした。

それらはベルトのアイテムポーチにある【初心者ポーション】と入れ替えておく。

こっちの方がまだ使いそうだ。




そして最後。

それは偶然見つけた―――カフェ


「ゲームの中で食事って取れるの?」

「・・・β版では味覚の再現はされていなかったらしい」

「ですが、現にここに開いているということはそれは食事が出来ると言うことなのでしょう?」


うーん。どうなんだろう?

一応このゲーム。痛覚は制限付きではあるけど再現されているから辛さとかなら再現できるのかな?

でも辛いものだけっていうのもいやだな。

まあ入ってみれば分かるだろうけど。―――その前に

バッ


ササッ


私が振り返るとみんなそっぽを向いた。

私達がいる場所は始まりの街の中でも大分外れたところにある。露店もなければ門からも離れていて通路もそんなに広い訳じゃない。

だと言うのに、その場所はプレイヤーで溢れていた。

確か全プレイヤーは正式版とβ合わせてもまだ1万人程度だったはず。―――良く三台も手に入ったなうち。

昼になって南門にも人が流れ始めたと聞いたし、経験値の入りがいい北と西、モンスが一番弱い東には特に人がごった返しているという。(掲示板情報)

そんな中、まったり?プレイの私達を除いて、こんな場所に100人規模の大集団がいるのは何故か?

皆口々に「あれが例の」と言っていることからも、『そういう人達』だというのは明白だった。当然みんな男性プレイヤーである。さっき防具屋にいた人も紛れてるね。

・・・私もそろそろ疲れてきたよ。

人の視線というのは浴び続けてると緊張したり、ストレスになるのだ。

私はまだ慣れてる方だったが・・・、そろそろ放置するにも限界である。

流石にストーキングまでされちゃあねぇ。



「・・あんまりしつこいとGMコールしますよ」


若干ドス声になっていた。

その場にいた男性プレイヤー達によると。その時の私の声は底冷えするほど怖かったらしい。

特に近くで声を聞いた男性はすくみ上ってしばらく動けなかったという。仕方ないね。『掲示板』とか『例の』って聞くと気分が悪くなるのだ。うん。仕方ない。

あっ、カフェではパフェなんかが売ってました。


カフェの内部構造は喫茶店みたいな感じで、私たちはテーブルに座り注文する。

注文を取りに来たウェイトレスさんとは軽く話が出来たのだが。質問なんかをすると。


「それらの質問は受け付けておりませんので」


と返って来た。

NPCのAIはあんまり進歩してないみたい。エリーが特別だったんだね。マジのエリートだったんだ。

―――βでは完全固定会話だったので実際には天と地ほどの差があるのだが、アリサは知らない。


ちなみに味はと言うと。


「・・・五点」

「所詮はヴァーチャルってことね」

「ひどすぎですわ・・・」


触感とかはあるんだけど、味の再現率はめちゃくちゃ低かった。特に舌の肥えてるお嬢様方からしたら食べられたものではないだろう。

次のアップデートでこの辺の進歩を期待します。

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