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~優風~

掃除屋の結成から約五年。

今やその仕事は世界の政界や財界に知らぬ者はいない状態だ。


政治家や資産家などはいつ自分が狙われるかと怯えている。

だが掃除屋が狙うのはあくまでもその国に害を為す存在のみ。


つまり本当に黒い相手しか狙わないのである。

政治家でも資産家でも、狙われるとしたらその国に不利益をもたらす者。


それを陰から法の裁きへと誘うのが掃除屋として知られる。

要するに売国奴や敵国との友好を語るような人間が狙われるのだ。


今までの掃除屋の狙った相手は総じて売国奴などの敵国と繋がる者だ。

結果それによりそのターゲットは外患誘致や内乱で捕まる。


それは掃除屋の一般的な手口であり信念でもあった。

国にとって不利益になる人間のみを狙え、それが掃除屋の掟である。


そんな中セファーナは久しぶりの仕事でカナル帝国という国に来ていた。

この国では大臣が皇帝をそそのかし、実質的に支配しているという。


国際警察もそれの捜査を進めており、近くこの国に来ると掴んでいる。

それまでに大臣を巣から外に出すのが今回の仕事となる。


「いい風ですね。」

「そうだな、セファーナ様もお変わりなくて何よりだ。」


カリーユも組織としてなのか、様付けをするようになった。

とはいえプライベートでは普段通りだが。


「さて、告発者に会いにいきますか。」

「場所は街の西地区にある空き家だ。」


そうして二人は告発者に会いにいく。

本来は情報を得てからの仕事が基本なのだが、こういうケースもある。


掃除屋の連絡先は一週間で変更される。

だが特定のワードでネット検索をかければそこから告発も可能だ。


今回はそんな告発者に会って仕事の内容を決める事に。

二人は街の西地区にある空き家に足を踏み入れる。


「あなたが告発者のエロナさんですね。」

「はい、えっと掃除屋の…。」


そこにいたのは獣人のメイドだった。

恐らく城で働いていたが、何かあって告発に至ったのだろう。


「それでは証拠として合言葉をお願い出来ますか?」

「えっと、カルボナーラピッツァ、で合ってますよね?」


ちなみに合言葉は告発をした際にランダムで提示される。

それを実際に会って聞いてからが本番だ。


告発した本人だけが知る合言葉、それも掃除屋の慎重さである。

それを確認し仕事の確認に入る。


「えっと、大臣が皇帝を追放すると言っているのを聞いてしまって…。」

「それは本当ですね?」


確認は念入りにする。

それも仕事を進める上で大切な事だ。


「はい、それを録音もしました、これを。」

「どれ、貸してください。」


そう言ってレコーダーを受け取る。

それを再生すると確かに大臣らしき人間の声で言う通りの事を言っていた。


「これで証拠になります…か?」

「ええ、これなら問題ないでしょう。」


そう言うとエロナは胸を撫で下ろす。

この緊迫した空気だ、無理もない。


「ではあなたは一旦ここで待機していてもらえますか。」

「分かりました、何かあったら私の事は見捨てて構いません。」


告発した以上の覚悟だった。

それを承諾しカリーユと共に空き家を出る。


するとセファーナの携帯端末が鳴る。

相手はシスシェナからだった。


「どうしましたか?」

「んー、どうしたっていうかそっちに思わぬお客も来てるみたいよ。」


思わぬ客、それは誰なのだろうか。

セファーナはシスシェナにそれを確認する。


「えっと、クランの人達が皇帝に会いにいくとかで来てるっぽいわ。」

「クラン…、分かりました、情報感謝します、それでは。」


そう言って通話を切る。

セファーナはそれをいい機会だと思った。


「カリーユ、エロナのところで少し待機していてもらえますか?」

「別に構わないが、一人でどこに行くんだ?」


カリーユにさっきの通話の内容を話す。

カリーユもそれには興味があるようだった。


「分かった、それじゃ僕は待機してるから行ってこい。」

「ええ、それでは。」


そう言ってセファーナは一人で街の人混みに消えていく。

カリーユはエロナのいる空き家に戻り待機だ。


「さて、どうやって探しますか。」


この人混みでそれを探すのは困難を極める。

偽名でチェックインした宿に行って訊くかとも考えたが、やめた。


酒場で訊いても情報は難しいだろう。

やはり足で探すしかないと考え、街の中を歩き回る。


そんな中思わぬ話が聞こえてきた。

それは城の門番に皇帝に謁見を申し込んだが、諦めたという少女の話。


その言葉から来ているのは全部で五人だと分かった。

話をしていた人に声をかけ、その五人の特徴を聞き出した。


その中の誰か一人を見つければ目的は達成出来る。

セファーナは再び人混みに消えていった。


「この辺りにはいないようですね…。」


仮にも帝国だ、城下町だけでも広さの規模が違う。

そんな広大な街で探して本当に見つけられるのか。


それでも諦めずに周囲を見渡し人を丁寧に確認する。

するとその中に特徴に一致する一人の少女を発見する。


セファーナは即座に動きその少女に声をかける。

その少女は周囲を警戒しているが、セファーナには近づくなど簡単な事だ。


「ふむ、収穫はなし、どうしたものでしょう。」

「そこの人、少し構いませんか。」


ここから先はセファーナとこの国に来ていたクランとの共闘が始まる。

掃除屋結成から五年、失ってそれでも立ち上がり戦い続ける物語。


その空に吹く優風が掃除屋、そしてセファーナとクランを一気に近づける。

この先も掃除屋は戦い続ける、その信念が果てるその日まで。


この物語はここで一旦幕を引くが、物語は終わらない。

掃除屋の戦い、クランとの邂逅、セファーナの物語はまだ終わらないのだ。


騎士を目指し現実を知った過去。

その空に輝いていた暁は狂想の月へと陰っていった。


夢は現実に飲み込まれた、その現実は光を奪い闇へと変えた。

その闇に輝く月、それは暗闇の中の希望となったのである。


その正義は確かに歪で狂ったものであろう。

だがそれは確かに人を魅了し惹きつけたのである。


夢、現実、未来、それはどこへ向かうのか。

セファーナの見たものは掃除屋の礎となり人々に届くのだろうか。


夢を見た自分、現実に飲み込まれた自分、それはどっちも変わらないのである。

経験から生まれた掃除屋はこの先も、その世界で暗躍するだろう。


クランが太陽だとしたら掃除屋は月なのだから。

物語は続いていく、その未来のずっと先まで…。


暁の光は去りゆく、月に陰るその空を染め上げて…。

この話で物語は幕を閉じます。

ですが登場人物達の物語自体はこの先もずっと続いていきます。


今まで何人がこの小説を見たかは分かりません。

ですが見てくれた全ての人に感謝とお礼を申し上げます。


近いうちに別の新しい小説を執筆予定です。

そちらもよろしければ見ていただけると嬉しいです。


それでは一旦幕を引きます。

今まで読んでくれた全ての人へ、本当に、本当にありがとうございました!!

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