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~少女~

掃除屋結成の動きから数週間。

リーダーに顔を見せる前に少し息抜きで南の国に来ていた。


四葉とヘイロンとフェラナは別行動なので今回は不在だ。

シスシェナは陽の光が嫌いなので飛空艇で留守番である。


カリーユも賑やかなのは好まないとして単独行動している。

その結果セファーナとレイネだけで南国を満喫する事に。


「結局二人だけになっちゃいましたね。」

「そうね、まあこんなおばさん二人だけど楽しみましょうか。」


そうして露店でアイスを買う二人。

南国のアイスは果物の味が美味しい絶品だ。


二人は日陰のベンチで今までの事を改めて振り返る。

それはここまでの長く、そして辛くも楽しい道だった。


「本当に遠くまで来ちゃいましたね、私達。」

「そうね、もう70年ぐらい、おばさんどころかお婆ちゃんよ。」


だがその年月が嘘のようにみんな若々しい。

それは寿命の長い種族のせいか、それともセファーナの呪いのせいか。


それは分からないが特殊な力が働いているのは確かなのだろう。

仕事を始めるときに見た夢、あれはなんだったのかは分からないままだ。


もしかして未来の自分なのか。

それとも神のような超常的な何かなのか。


「でもそんな今があるのもみんながいてくれたおかげです、感謝してますよ。」

「あら、嬉しいわね、というかしおらしいのね。」


いつになくノスタルジックなセファーナ。

それは過去を振り返ったときに浮かぶ多くの仲間や家族達の顔。


そんな犠牲を乗り越えた先に今の自分があるのだ。

死者は生き返る事はない、だからこそ今を噛み締める。


「私だって何も感じないわけじゃないですからね、当然ですよ。」

「そう、でもあなたはそんな気持ちも隠して鉄の女で在り続けたのね。」


それは本当の気持ちを隠し続けた自分への釘なのだろう。

この先掃除屋のボスとして、さらに強くあらねばならない。


そのためにも今その弱気を全部吐き出してしまいたい。

それも含めての息抜きだったのかもしれない。


「本当の始まりはこれからです、だから私はもう泣いたりはしませんよ。」

「でも無理だけはしないのよ、あなたは昔から抱え込むタイプなんだから。」


それは当たっていた。

やはりレイネは人の内面をよく見ているのだろうと思いお手上げだった。


「あれ?あそこ…。」

「あれ?女の子がナンパされてるのかしら。」


どうやら女の子がナンパされ嫌がっているらしい。

仕方ないので助け舟を出す事にする。


「お嬢さん、少しぐらいいいだろ。」

「い、嫌です…、私は…。」


そこにセファーナが割って入る。

レイネもそれを楽しそうに見ている。


「彼女は私の娘です、手を出すなら少し痛い目を見ますよ。」

「げっ、母親かよ…、それなら諦めるしかないか。」


そう言ってチャラい男達は引き上げていく。

そして少女はセファーナを見る。


「あ、あのっ…。」

「大丈夫ですか?」


少女は怯えていた。

セファーナも警戒は解いているのだが、彼女は震えている。


「えっと、その…、私…。」

「ほら、怖がってるわよ。」


そこにレイネが割って入る。

とはいえ少女はまだ怖がっている。


「はぁ、あなたの家とかはあるんですか?」

「えっと、家はない…です…。」


どうやら孤児のようだ。

だがレイネはそれを嘘だと即座に見抜く。


「嘘はいけないわね、家がないならそんな小綺麗な格好はしてないでしょ?」

「そ、それは…。」


それに対しセファーナが提案する。

今さらながら彼女を誘おうというのだ。


「よければ一緒に来ますか?あなたさえいいならですが。」

「…行きます、私もあなたと一緒に行けば変われますか?」


彼女はどうやらものすごく内向的な性格のようだ。

本人が変わりたいと言うぐらい内気な性格なのだろう。


「変われますよ、あなたが本気でそう願うのなら。」

「それなら行きます、変わるために、変わりたいから。」


とりあえず改めて家の事を訊く。

孤児ではないようだが小綺麗な格好からそれなりのお金はあるのだろう。


「えっと、親と仲が悪いんです…、それで…。」

「分かりました、なら逃げちゃいましょう、行きますよ。」


そう言ってセファーナは彼女の手を取り歩き出す。

レイネもそれを微笑ましそうに見ていた。


「そういえば名前を訊いていませんでしたね、名前を教えてください。」

「えっと…、それは…。」


どうやら言いたくないらしい。

それなら勝手に呼ぼうという事にする。


「ではあなたの名前はリンファ、リンファ・ティアレスです。」

「リンファ…、はい!リンファ…。」


どうやら気に入ったようだ。

本名はあえて訊かない事にして、リンファという名前で通す事に。


「ふふ、それでは行きますよ、リンファ。」

「はい!」


リンファという名前を気に入ったらしい。

そうして二人は飛空艇に戻る。


飛空艇に戻るとシスシェナが今後の相談をしたいと言う。

リンファの事も言い、セファーナ直々に教育する事に。


掃除屋の本格的な始動へ向け動き出すのである。

リンファもそんな一員として迎え入れる。


そうして掃除屋は静かにその旗を揚げる事になる。

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