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~裏側~

シュリック滞在六日目。

街は国防長官の逮捕に騒然としていた。


国防長官は逮捕され取り調べに対し全部吐いたという。

裏側で何があったのか、今まで辞めなかった理由。


それらを全部吐いた上で極刑だろうと受けると言ったそうだ。

本当は解放されたかった、でも裏側を考えると出来なかった。


そんな真相が嘘偽りなく吐き出されたそうだ。

国防長官の苦しみはそんなしたくても出来ない苦しみだったのだろう。


「これでよかったんですよね、彼は…。」

「私達の正義は悪を裁く、それだけとは限らない、でも…。」


それは今までもあった複雑な感情。

その正義に迷いはない、だが何者かに裁いて欲しいと望む悪もいたのだ。


今回の国防長官もそんな悪だった。

誰かに自分を止めて欲しい、そう望む悪人は世の中には少なくない。


人は誰だって自分から悪人になろうなどと思わない。

誰かを守るために悪人になり目を逸らす役割を担う。


そんな悪人も世の中にはいるのだ。

悪の本質はそんな表向きのその奥深くにある。


魔王だから悪人とは限らない。

この世に悪があるとしたら、それは人そのものなのである。


人は誰しも魔王になれる可能性を秘めている。

魔王になるのは簡単であり、勇者になるのも簡単なのだ。


その感情をどちらに向けるか、それにより人は勇者にも魔王にもなれる。

セファーナ達はそんな道を選んできた。


人々に嫌われる陰のヒーロー。

その世界において嫌われながらも、それを慕う人間もいる。


そんな人を魅了する月になっていた。

夜の空に輝く月、太陽にはなれないが確かにその魅力のある月に。


この先そんな月としての道を多くの人に選ばせる。

それは日陰者になるという覚悟を民に求める事でもある。


セファーナの計画しているもの。

それは自分と同じ感情を持つ者達による網の構築なのだ。


「でもこの先、私は人々にそれを選ばせないといけない、だから…。」

「私はセファーナさんについていきます、どこまでも、奈落の底まででも。」


四葉もその覚悟は本物だった。

親を裏切り、その歪んだ正義に取り憑かれた少女。


それは悪を目の前で見続けた事で歪んでしまった心だった。

四葉はとっくに狂っていたのだ、それをセファーナは実感する。


本物の狂気は表面ではなく内面に出るもの。

その感情や思想にこそ狂気は姿を見せるのだ。


「私の思い描く構想、それはこの歪んだ正義を人に教える事、でもあります。」

「ならそれでいいんです、今までの仕事でそれを知っている人もいますから。」


長い年月の間仕事をしてきた、

それにより子供にもそんな話は伝わっている。


自分に憧れる子供達、正義に賛同する大人達。

そんな人達に生き方を示せるのか、セファーナはそれを思う。


この先それを実現するために。

今はそんな感情を振りきって仕事をするのみである。


「さて、では戻りますか。」

「そうですね、戻りましょう。」


そう言って二人は飛空艇に戻る。


飛空艇に戻るとシスシェナが待っていた。


「お帰り、その様子だと無事に終わったみたいね。」

「はい、なんとか。」


今回の報告も簡潔に終わらせる。

そしてシスシェナは次の目的地を訊く。


「次はどこへ行きたい?どこでもいいわよ。」

「なら次はザクセンに行こうと思います。」


次の目的地はザクセン、砂漠の国だ。

今までも暑い国には行っているので、今さらである。


「はいよ、なら準備しとくわ、あんた達も休むのよ。」

「はい、分かりました。」


そう言ってシスシェナは準備に移る。

セファーナ達も今は休む事に。


「それでは私は部屋に戻りますね。」

「ええ、お疲れ様です。」


そう言って四葉は部屋に戻っていく。

そこにヘイロンとカリーユが姿を見せる。


「それにしても長くやってるよな、いつまでこの仕事をやるんだ?」

「私の夢、それを叶えるまでは続けますよ。」


その夢は二人も聞いている。

陰の組織、その構想である。


「なら私達もどこまでもついてくぜ、セファーナと心中してやるさ。」

「ふふっ、ならその心臓、捧げてくださいね。」


そんな事を確認し二人は部屋に戻っていく。

それに合わせるかのようにレイネが戻ってきた。


「あら、仕事は終わったのね。」

「ええ、とりあえずは。」


レイネとも長い付き合いである。

彼女も聖職者でありながら自ら堕ちる事を選んだ身だ。


「だったらこれからもその信念を歪めては駄目よ、いいわね?」

「はい、分かってますよ。」


今まで曲がる事のなかったその信念。

一度は折れかけたその信念も今ではすっかり元通りだ。


「私もあなたを信じてる、だから死なばもろともよ。」

「感謝してますよ、私も、だからこれからも頼みますね。」


そうしてお互いを確認する。

そしてレイネはそのままキッチンへと行ってしまった。


自分は人に恵まれた、それを実感する。

セファーナも部屋に戻りフェラナと共に次の国のリサーチだ。


「というわけです。」

「ザクセンか、あの国は独特な感じがあるからね、変な真似はしないように。」


そうして次の目的地について調べていく。

これからもそんな正義を貫き続けるために。


夢のためにも今はその名前を宣伝するのである。

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