~謝罪~
シュリック滞在三日目。
セファーナ達は国防長官の事を調べるべく行動を開始する。
ヘイロンの話では街外れに二年前に退職した政治関係者がいるらしい。
その人に何か話を聞けないかと、今回も記者と偽り接触を試みる。
とはいえここ何度かの事もあり多少は名も知られている。
用心しつつその政治関係者の家へ向かう。
「街外れだとこの先ですね。」
「お世辞にも綺麗とはいえないですけど…。」
目的地はそこまで綺麗な場所ではなかった。
だが確かに言われた先はこの先である。
二人は言われた家を訪れる。
そして家のベルを鳴らす。
すると中から不健康そうな中年男性が出てくる。
セファーナ達は記者だと言い話を聞けないか尋ねる。
その男性はセファーナ達を最近噂になってる記者と知り中へ招き入れる。
知っていての事なのだから、全部吐いてしまおうという事だろう。
「さて、何が聞きたいんですか?」
「えっと、国防長官の事を…。」
男性はおもむろに口を開く。
それは今から三年前の事だという。
「当時他国と揉めていてね、今の国防長官がそれに対し謝罪をしたんです。」
「謝罪ですか?」
どうやら国同士の揉め事があったらしい。
だがその謝罪が思わぬ事態を招いたのだという。
「そうしたら向こうの国はある事ない事をでっち上げ謝罪をさらに求めてきてね。」
「つまりその謝罪で弱みを握られた、とかですか?」
その謝罪によってカモと認定されたのだろう。
謝罪と賠償をその国は次々に要求してきたという。
だが国の事情からそれまで認めるわけにはいかなかった。
認めてしまえば野蛮な国として世界に拡散されてしまうからだ。
それを拒み続けた国防長官は一年後に突然不審な行動をするようになったという。
まるで何者かに何かを握られている、そんな感じがしたそうだ。
「国内でも国防長官への不満は溜まっていった、リコール運動も起きたんです。」
「最初の謝罪がきっかけでそんな大事に…。」
だがリコール運動は数に達せず無効になった。
それでも国民は国防長官への不信感を募らせていったという。
それでも国防長官は頑なに辞めようとはしない。
何か理由でもあるかのように、辞職を拒んでいるという。
「どうして…、何か理由でもあるんでしょうか?」
「私の勝手な推測ですが、恐らく辞めるなと釘を差されたんだと思います。」
つまりその国から辞めるなと脅されている。
その裏にさらなる何かがあるのだと推測する。
「それで私も独自に調べましてね、その調査結果がこれです。」
「これは…、会談の内容の記録ですか?」
どうやら秘書を通じて手に入れたらしい。
秘書も複雑な感情でこれを提供したそうだ。
「これを証拠に彼を追い詰めてください、外部の人間のあなたなら…。」
「分かりました、そういう事ならお任せを。」
そう言ってその会談の記録を受け取る。
偽物ではないかと確認も済ませる。
「外部の力、それをこの国のために使ってくれて感謝します。」
「はい、必ずや目的は達してみせます。」
そうして二人は礼をして家をあとにする。
国防長官の秘密、それはこの記録に集約されていた。
そうしてセファーナと四葉は無事に仕事を終える。
それと同時に国家の闇というものを感じていた。
そうしてそのまま飛空艇に戻る二人。
飛空艇に戻るとシスシェナが待っていた。
「お帰り、情報は得られた?」
「ええ、とりあえずは。」
その言葉にシスシェナも今までを思い出す。
最初の仕事から今まで、長かったと。
「でもまだまだ終わりませんよ、それじゃ私は部屋に戻りますね。」
「それでは私も、カリーユ様に認めてもらいたいですし。」
そう言って二人は部屋に戻る。
そこにヘイロンが出てきて今までを振り返る。
「でも長いよね、私達も不思議な力でも働いてるかのような状態だし。」
「そうね、まるでこの仕事から逃げるのを許さないかのような。」
それでも今さら引き返すつもりはない。
それはこのチーム全員の共通認識である。
「ま、私はどこまでも付き合うぜ、だからこれからも宜しくな。」
「ええ、こっちこそ。」
そう言ってヘイロンは部屋に戻っていく。
それに合わせるかのようにレイネが戻ってくる。
「あら、相変わらずノスタルジーかしら。」
「まあね、あたし達も長くやってるもの。」
レイネもそんな長い今までを振り返る。
それは信じ続けた人生そのものだった。
「でも私達はセファーナを信じるだけ、そう決めたもの。」
「そうね、だからもう何も言わないわ。」
改めてその結束を確認する。
そしてレイネも笑顔で食堂に向かっていった。
シスシェナもそんなこれからを想像しつつ部屋に戻る。
一方セファーナはフェラナと情報を確認していた。
「というわけで。」
「裏に何かがあるのは確定だろうね、そっちも洗わないと。」
そうして国防長官の裏も洗う事に。
逃げられないという事を改めて思い知らせるのだ。
その鎌からは逃げられない、どこにいても。
 




