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~現場~

バラハ滞在六日目。

街は外務官僚の逮捕に騒然としていた。


表向きは誠実な人間、だが裏では売国奴のヤク中だった。

今まで隠し通せたのはクスリを抜くための技術も提供されていたからだ。


だがセファーナ達の密告により現場を押さえられ、言い逃れは出来ない。

そうして大量の違法な薬物が押収されたらしい。


余罪についても追求すると警察は追及の手を休めない。

こんな小国にまで腐敗は存在する、それが世界の現実だった。


「今回は現場の確保で幕引きですか。」

「そうですね、違法な薬物を自分だけでなく民にばらまいたとか。」


四葉も純粋だからこそ、そんな腐敗が許せない。

自分の父を告発したのもそんな彼女の純粋さからだ。


セファーナとは別の形の歪んだ正義。

四葉にはそれがあるのだとセファーナは確信していた。


四葉は政治家の娘として育った。

そして目の前で幾度となく汚職や違法な行為を見てきたのだろう。


それが彼女の中に歪んだ正義を芽生えさせてしまった。

セファーナ達の仲間になった理由も、そんな正義にあるのかもしれない。


政治家の子供が見た現実はその心を歪めるにはじゅうぶんだった。

若くしてその心には歪みきった正義が芽生える。


四葉もセファーナに負けないぐらい狂っているのだ。

歪で狂った正義、それは形こそ違えども互いの中にある感情である。


「でも腐敗はなくならないんでしょうね、そのためにも…。」

「そうですね、警察が仕事をしない国こそが荒廃だと言いますから。」


少なくともセファーナ達の密告で国の警察が動く。

それはその国が国として機能している証拠だ。


特定の誰かに肩入れして罪をもみ消す。

そんな国こそが本当の意味での腐敗なのである。


罪を見逃せる特権。

そんなものがある国は犯罪が蔓延る国になるだけである。


それをさせるのは国の内部に巣食う特権を持つ者達。

国が崩壊するというのは外敵によるものではなく、内部からである。


本当の敵は外敵よりも内部に多い。

そんな内部の危険因子を確実に潰さねば国は滅ぶだろう。


セファーナが今まで見た国。

それは母国も含め基本的に隣国を敵国としていた。


隣国に優しい国は隣国によって滅ぶ。

それは今まで読んだ歴史書に幾度となく記述されていたのである。


「大国の庇護下にありつつも隣国は敵、それが本来なんですよね。」

「そうですね、私の国も隣国とは仲が悪かったですから。」


四葉も父の事も含め隣国事情は知っている。

隣国と仲良くしようと言う政治家が国で危険因子とみなされる。


それを政治家の娘として何度も見ているからだ。

隣国に厳しいのは本来あるべき姿である、四葉はそう学んでいる。


セファーナもそう学んだように隣国が国を滅ぼすのである。

二人はそんな正義を隣国と仲良くしようと言う政治家にも執行してきた。


それがセファーナの正義であり、同時に四葉の正義でもある。

二人の中にある正義は形こそ違うが、それは歪な狂気なのだ。


「さて、それじゃ戻りましょうか。」

「ですね、戻りましょう。」


そう言って二人はその現場を見届け飛空艇に戻る。


飛空艇に戻るとシスシェナとカリーユが待っていた。


「お帰り、その様子だと無事に終わったのね。」

「はい、とりあえずは。」


カリーユも四葉を珍しく褒める。

それに嬉しそうにする四葉。


「まあ少しはやるようになったんだよな。」

「はい、カリーユ様の期待に添えるべく。」


四葉は相変わらずカリーユにべた惚れだ。

これが百合というものなのか、そう思う。


「さて、それじゃ次の目的地を聞こうかしら。」

「次はステイシルに行こうと思います。」


次の目的地に決めたのはステイシル。

娯楽の国として知られる国らしい。


「はいよ、なら準備しとくからあんた達は休みなさい。」


そう言ってシスシェナは準備に取りかかる。


「さて、四葉も勉強だ、行くぞ。」

「はいっ、カリーユ様。」


そう言って二人も部屋に戻る。

そのタイミングでヘイロンが姿を見せる。


「あの子どうよ、何か感じた?」

「そうですね、彼女も私と同じ歪なものを感じました。」


セファーナが感じたのは同じ歪で異なる形の正義。

それはヘイロンも分かっていたようだ。


「歪な正義ね、あの子も何かとあるんだろうね。」

「ええ、私達の仲間になりたいっていう理由が分かった気がします。」


そんな四葉を認める二人。

ヘイロンは彼女の事は任せると言い部屋に戻っていった。


そしてそのタイミングでレイネが戻ってくる。


「あら、お仕事は終わったのね。」

「はい、とりあえずは終わりました。」


レイネも裏方としてそれをサポートする。

そうしてこのチームは成り立っているのだ。


「無理はしないのよ、それじゃ私はキッチンにいるから。」


そうしてレイネはキッチンに向かう。

セファーナは部屋に戻りフェラナと共に次のステイシルについてリサーチだ。


「というわけなんです。」

「娯楽の国ステイシル、まあ息抜きにもなりそうだしいいかもね。」


ステイシルの事も簡単に調べる二人。

そうして次の目的地に向けての準備は進む。


その正義は歪な形をした死神の鎌、そういうものなのだから。

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