~王位~
レムリ王国の一件から数日。
セファーナ達はヴァンハイト王国にやってきていた。
この国は今は次期国王の継承問題でごたついているらしい。
それと同時に王位継承候補達に黒い噂も流れていた。
そんな継承問題に揺れるヴァンハイト王国でその正義は振り下ろされる。
誰が黒いのか、それはこの国の闇も照らし出す事となる。
「さて、行こうかね。」
「はい、勉強させてもらいますね。」
ヘイロンに様子を見させつつ四葉に勉強をさせる。
四葉に仕事を覚えさせねばならない以上総動員で教育に当たる。
四葉は純粋な子だ。
それにこんな仕事をさせるのは気が引けるが、本人の意志は堅いのである。
「そんじゃ行くぜ。」
「はい、行きましょう。」
そう言って二人は人通りの少ない裏通りへ。
裏通りにあるとある店の前で立ち止まるヘイロン。
「ここですか?」
「そ、入るよ。」
そう言って店の中に入る二人。
ここは表向きはケーキ屋だが、その実態は世界に網を張る情報屋である。
「いらっしゃいませ、何をお求めですか?」
「そうね、ならレアクリームチーズケーキを頼めるかな?」
その言葉にオーナーの顔色が変わる。
そして二人を店の奥へと案内する。
ちなみにレアクリームチーズケーキは裏メニューに本当にある。
ただし情報屋の暗号として使われるため身内だけの味なのだ。
店頭に並ぶのはクリームチーズケーキ、レアではない。
そんな細かな違いを合言葉にするのも情報屋らしさだろう。
「さて、何が欲しいのですか?」
「この国の政治か国の機関の偉い人の特に黒いやつ。」
その注文にオーナーは店の奥の引き出しから書類の束を持ってくる。
一番黒いものはこれらしい。
「えっと、これは第三王子…ですよね?」
「そうですよ、今の国王が病に伏せているのも彼の仕業と言われています。」
どうやら国王が病に伏せているのは第三王子が関係しているらしい。
書類を見る限り毒を盛ったというのが有力らしい。
毒は国の宮廷魔術師から調達したと見て間違いないとある。
今の国王が特に溺愛しているのが第三王子だとも言われる。
それにより国王の座を手に入れるために暗殺を目論んだのだろう。
そうして四人の子供達の王位継承問題が発生したのだ。
「国王が自分を溺愛してて、それを利用して王様になるねぇ。」
「元々第三王子は四人の子供の中でも一番の野心家とも言われていましたから。」
それは納得の一言だった。
第三王子の野心が本当だとしたら、その行動に出ても不思議ではない。
「骨肉の争い、ですか。」
「そういう事です、今の国王もそれを知ってるかは知らないですが。」
なんにしても第三王子が黒だと見て間違いないだろう。
情報屋の情報網である以上確実性は高い。
「それにしても王家というものは何かとドロドロしていますよ。」
「そうだねぇ、スムーズに進む王位継承なんて珍しいっしょ。」
ヘイロンもそんな世界の王位継承を見たからこそ言える事でもある。
継承問題の闇の深さは王位に限った話でもないのだから。
「それでそれを買いますか?」
「はい、買わせていただきます。」
四葉はそれに首を縦に振る。
そしてオーナーは金額を提示する。
「ではこれぐらいで手を打ちますよ。」
「分かった、ならはい。」
提示された金額は23000ほど。
ヘイロンは一括でそれを支払う。
「確かに受け取りました、では健闘をお祈りしますね。」
「はい、感謝します。」
そう言って二人は店を出る。
帰りにオーナーがお土産にレアクリームチーズケーキを渡してくれた。
そうして二人は飛空艇に戻る。
飛空艇に戻るとシスシェナが待っていた。
「お帰り、情報は買えたかしら。」
「はい、ここに。」
袋に入った書類を確認する。
特に問題はないようなのでそれを預け二人は休む事に。
「では私は休ませていただきますね、カリーユ様~♪」
そう言って四葉はカリーユの下へ行ってしまう。
二人もそれに苦笑いだった。
「そんじゃ私も部屋でくつろいでるわ。」
そう言ってヘイロンも部屋に戻る。
そこにセファーナが戻ってきた。
「あ、情報は手に入ったんですね。」
「ああ、はい。」
セファーナはそれを確認する。
「確かに、では私は精査しておきますね。」
そう言ってセファーナも部屋に戻る。
それに合わせてレイネが戻ってくる。
「あら、その様子だと情報は手に入ったのね。」
「ええ、あのお嬢様も本気っぽいしね。」
四葉はそれだけ本気だという事のようだ。
レイネもそれを理解した上で彼女の事を引き受ける。
「彼女の事、しっかり教育してやらないとね。」
「そうね、そっちはみんなでやりましょ。」
主な教育係はレイネとカリーユだ。
だが仕事を覚えさせるには全員でやるのがいいだろう。
「それじゃ私はこれを運んでおくわね。」
そう言ってレイネはキッチンへ。
シスシェナも部屋に戻って何かとしておく事に。
一方部屋ではセファーナとフェラナが情報を確認していた。
「どうでしょうか。」
「これはかなり黒いと思うよ、ターゲットは確定じゃないかな。」
今回のターゲットは第三王子で確定となる。
王族とはいえ特別扱いはされないのである。
そうしてこの国の王位継承問題の闇に踏み込む。
その正義はどこかで見ているのだから。
正義の鎌はその首を常に狙っているのである。
 




