~愛娘~
レムリ王国滞在三日目。
セファーナは官房長官の情報を集めるべく動いていた。
昨日思わぬ形で仲間になった四葉。
彼女は官房長官の娘だと判明している。
だが彼女は家には帰らないと言い張っている。
この際なのでそのまま仲間にしてしまう事で一致した。
「さて、どうしましょうか。」
「なら私が家から何か盗み出しましょうか?」
四葉は平然とそう言う。
彼女が父親をどう思っているのか訊いてみた。
「お父様?あんな人大嫌いです、今ではこの国を売ろうとするクズです。」
「それを知ってたんですね。」
それは娘も知っていたらしい。
だからこそ、そんな娘としてこの国に詫びるために仲間になったのだろうか。
「お父様は逮捕されないといけない、立派な外患誘致をしてますから。」
「外患誘致、それをしてる以上ですか。」
四葉はそれを悲しいとは思わないようだ。
罪はきちんと償わねばならないという認識なのだろうか。
「とりあえず家に行きましょう、この時間は家政婦も留守にする時間です。」
「分かりました、信じますよ。」
そうして二人は官房長官の自宅へ向かう。
街は広いものの時間に余裕はあるという。
「ここですね、では少し待っててください。」
「私は逃走経路を確保しておきますね。」
そう言って四葉は鍵を使い正面から堂々と入っていく。
一方のセファーナは家の周囲を見て回り逃げられる場所を確保する。
家の中では四葉が父が重要なものを隠している場所を調べていた。
そこは見た目は本棚だが、本の裏に隠し扉があるのだ。
娘を溺愛する官房長官はそれを娘にも見せていた。
四葉はこれでも優秀な頭脳を持つので、簡単にそれを解錠する。
そうして中から取り出し確認をする。
それは確かに官房長官が外国と密約を交わした契約書だった。
「これが…お父様は許されてはいけません、持っていきましょう。」
そうしてその契約書を確保する。
他にも様々な密約の証拠が出てくる。
四葉はそれらを可能な限り確保し隠し扉を元に戻す。
すると玄関の方で扉の音がした。
どうやら家政婦が戻ってきたようだ。
部屋の外ではセファーナが逃走経路を確保してくれていた。
四葉はそこから外に出て何もなかったかのように逃走経路を元に戻す。
家政婦は誰かが来ていたのかと思ったが、気のせいだという事でその場を去る。
念のため家政婦はその部屋を調べるものの特に何もないと判断。
そうして何も知らないまま仕事に戻っていく。
「これでどうでしょう。」
「ええ、これなら完璧です、やるじゃないですか。」
今回は自宅とはいえ、見事な手口だった。
四葉は今後もこういう仕事がしたいとセファーナに頼み込む。
「それにはまず勉強からですよ、いいですね。」
「分かりました、何年かかろうとも力になってみせます。」
その目は本気だった。
官房長官の逮捕に娘が行方不明、この国も荒れそうである。
だが四葉はそれでも罪は罪だと言い切る。
父のした事は許されないのだと。
その決意を尊重しセファーナは四葉を仲間にする事を決める。
四葉もそれに目を輝かせていた。
「では飛空艇に戻りますか。」
「ですね、戻りましょう。」
そうして二人は飛空艇に戻る。
飛空艇に戻るとシスシェナが待っていた。
「お帰り、成果はあったかしら。」
「ええ、家から見事に盗み出してやりました。」
四葉はドヤ顔でそう言う。
シスシェナもそれには苦笑いだった。
「とりあえず私はこれを精査しておきます、それでは。」
そう言ってセファーナは部屋に戻る。
シスシェナも四葉を褒めつつも釘を差しておく。
するとそこにカリーユがやってくる。
四葉はカリーユにベタボレのようだ。
「王子様!仕事はこなしましたよ!」
「おい!抱きつくな!」
その光景にシスシェナも茶化してくる。
とはいえ四葉はカリーユにべったりだ。
「はぁ、分かった、分かったから、行くぞ。」
「はいっ、私の王子様。」
シスシェナもその様子には楽しそうに笑っていた。
するとヘイロンが四葉について尋ねる。
「あの子本気みたいね、仲間にするのは決定かね?」
「そうね、まあ裏切る様子もないしね。」
決定の意思を伝えるシスシェナ。
ヘイロンもそれを受け入れそのまま部屋に戻っていく。
そしてそれに合わせるかのようにレイネが戻ってくる。
「あら、仕事は終わったのかしら。」
「ええ、とりあえずはね。」
レイネも四葉の教育係を任されている以上やる気である。
そんなレイネは四葉を心配もしつつ、歓迎もしていた。
「何にしても騒ぎにはなるわよね、官房長官の逮捕と娘の失踪とか。」
「そうねぇ、誘拐とか殺害とか何かと言われるのは確かでしょ。」
それは懸念しているが、今は仕事が先だ。
二人はそれを確認し、四葉を確保する事にする。
「それじゃ私はこれを運ぶわね、彼女は任せて。」
そう言ってキッチンに向かうレイネ。
シスシェナも部屋に戻る。
一方のセファーナは部屋でフェラナと情報の精査をしていた。
「どうですか?」
「これは確定だろうね、自宅から持ち出したのなら間違いないと思う。」
フェラナもそれを確信していた。
あとは実行に移すのみである。
こうして四葉も本気な以上邪険には出来ない。
新たな仲間と共に仕事を今後も続ける事に。
四葉の事は大々的に報じられるのは言うまでもないのである。




