~支配~
カロッサ王国滞在三日目。
セファーナは残りのピースを集めるべく行動を開始する。
この国にはすでに話に聞く他国民が大勢入り込んでいるらしい。
その人達の実情を見れれば何か掴めるだろうと考える。
そうしてセファーナは何かあったときのためにカリーユを近くに潜ませる。
そうした上で街を散策し始める。
「うーん、特に何かあるというわけでは…。」
すると一人のみすぼらしい中年男性とぶつかる。
セファーナは男性に謝り手を貸す。
「大丈夫ですか?」
「ああ、平気だ、これぐらいならね。」
その男性は裕福ではないようだ。
どこか不満気な顔もしている。
「今日も仕事か、なんで他国民のために税金納めなきゃならないんだ。」
「他国民?その話を聞かせてもらう事って出来ますか?」
セファーナは男性が忙しそうなのを承知でそれを尋ねる。
男性は一時間ぐらいならと、話の出来そうな公園へと連れていく。
「えっと、その他国民のためにって…。」
「あいつらは今から二十年ぐらい前かな、母国の戦争から逃げてきたらしい。」
母国で戦争がありそれから逃げた。
言わば難民だろうか、セファーナはもう少し詳しく訊く。
「あいつらはこの国に大挙して押し寄せてね、徐々にこの国に入り込んだんだ。」
「えっと、戦争だから難民…、とは違うんですか?」
すると男性は怒りのこもった口調で言う。
それはその他国民への怒りでもあった。
「俺も調べられる限り調べたよ、そしたらあいつらは兵役から逃げたんだって。」
「兵役から…、つまり戦争なんかしたくないって事でしょうか。」
男性は続ける。
その国の国民性は劣悪で外国に移住し徐々に侵食していくという。
「あいつらはこの国以外にも中に入り込んで少しずつ乗っ取ってるらしい。」
「そんな…、そっちの方が戦争よりずっと恐ろしいですよ。」
男性曰くこの国の政治やメディアの世界にも入り込んでいるという。
そうして少しずつこの国をその民族に染め始めているのだという。
「そいつらのせいでこの国はめちゃくちゃさ、自分達は優遇しまくって。」
「国を内部から破壊する…、戦争も恐ろしいですけど…。」
男性はそんな国に嫌気が差していた。
だが外国に移住するお金などないのだ。
「でも次の国王候補の一人がそいつらを全員追い出すって言っててね、支持されてる。」
「それはいいと思いますけど…、黙っていないんじゃないですか?」
当然その民族がそれを黙っているはずもない。
メディアは連日その新国王候補を痛烈に批判、なんとしても国王にすまいと躍起だ。
「でもそいつらには選挙権はない、国民が馬鹿じゃないなら次の王様だよ。」
「そういえばこの国は国王も選挙なんですね、今までは王家の血筋の…。」
男性曰くこの国では過去から国王は国民が選ぶのだという。
選挙制度が出来る前から国民投票という形だけはあったそうな。
「何にしても今の国王でさえ外交官には参ってるらしい、選挙もその後だろう。」
「なるほど…、大体は分かりました。」
セファーナは話を理解し男性に礼を言う。
そうして男性は仕事に向かっていった。
「さて、そういう事だったんですか。」
「話は聞けたか?」
カリーユが物陰から出てくる。
セファーナはやはり今回の狙いは外交官だと確信していた。
「とりあえず戻ろうぜ、変な奴らに見られても困る。」
「そうですね、では戻りますか。」
そう言って二人は飛空艇に戻る。
飛空艇に戻るとシスシェナが迎えてくれた。
「おう、お帰り、どうだった?」
「ええ、情報は得られました、運がよかったです。」
シスシェナもセファーナの運のよさには感心している。
とりあえずこれでピースは揃ったと言えるだろう。
「それでは私は部屋に戻って仕事の準備をしておきますね。」
「僕も戻るとする、何かあったら呼べ。」
そうして二人は部屋に戻る。
するとヘイロンが出てきて様子を尋ねる。
「特に問題なく進んでるわよ。」
「そっか、まあ今になってドジを踏むとも思えないしね。」
ヘイロンはセファーナを信頼している。
それはこの長い年月で積み上げた信頼なのだ。
「そんじゃ必要なときは言ってよね、ふぁ。」
そう言ってヘイロンは部屋に戻ってしまう。
彼女は常にマイペースな自由人だ。
そのタイミングでレイネが戻ってくる。
「あら、仕事は順調かしら。」
「ええ、流石ってとこよね。」
レイネはいつものように食材を抱えている。
裏方として立派にこのチームを支えてくれているのだ。
「まあ仕事が出来るのもあんたが管理してくれてるおかげよね。」
「ふふっ、栄養とかもきちんと摂っておけば体は健康なものよ。」
レイネは笑顔でそう言う。
シスシェナもそれには感謝していた。
「それじゃ私はこれを持っていくわね。」
そう言ってレイネはキッチンへと向かう。
シスシェナも出来る事をしておこうと部屋に戻る。
一方部屋では仕事の準備が始まっていた。
「あとはこれらを精査するのみですね。」
「だね、あたし達からは逃げられないよ。」
そうして正義は執行されるのである。
あくまでも逮捕に動くのは国、セファーナ達はそれを促すのみだ。
その正義は動かざるをえなくさせる、そんな証拠を突きつけるのである。
 




