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~巡回~

騎士団に入隊してから一週間が過ぎた。

今週は遊撃隊が街の巡回をする事になっている。


「さて、行こうか。」


リリーシェと共にセファーナとルイーズが巡回に当たる。

とはいえ王都は広いので複数のチームでそれぞれ担当の地区がある。

今回はセファーナ達は下町の巡回を担当する。


そうして三人は下町へと向かう。


下町へ移動すると怒鳴り声が聞こえてきた。

その声のした方へと向かう。


「帰れ!」


その声を発していたのは一人の青年だった。


「あの人は?」


その質問にリリーシェが答える。

どうやら税金の滞納の妨害などの常習犯らしい、

何度忠告しても聞き入れてもらえないそうだ。


リリーシェがおもむろに近づき声をかける。


「おい、そこのお前。」

「あん?またかよ、税金なら払えねぇって言ってるだろ!」

「ほう、その割に元気だな、働けるのに働かないのか?」


その声に青年が声を荒げる。


「んだと…!」

「裏は取れているのでな、酒場で飲む金があるのに税金は払えないと?」


その言葉に青年は黙り込む。

だがそのまま暴論で反論をしてきた。


「ここには貧しい奴や体の弱い奴がいる!誰がそれを守るんだ!」


だがリリーシェも即座に言葉を返す。


「ふむ、それなら尚更働いて薬や食料を買わねばなるまい、それとも金を払わずに万引きでもしているのかな?」


その言葉に青年はさらに声を荒げる。


「ふざけんなよ!そんな事してんのは馬鹿な奴だけだろ!」

「ほう、では先日報告にあった下町の人間の万引きの報告は嘘だと?」

「んなのでっち上げだ!お偉いさんにハメられたに決まってる!」


そこにセファーナが割って入る。


「話を聞いている限り滅茶苦茶ですね、支離滅裂もいいところです。」

「んだと…!」


それにセファーナは一言発する。


「法律、それをあなたは存じていないと?」


それに対して青年も反論する。


「うっせぇ!法律で下町を守ってくれんのかよ!」

「では貧しい人、または体の弱い人に会わせてもらえませんか?」


その言葉に青年は黙り込む。

そしてルイーズが加わる。


「君の言っている事は破綻しているね、国民の義務というものを知っているかな?」

「そんなもん知るかよ!」


その言葉にセファーナは唖然とした。

まさか国に住みながら義務すら果たさないゴロツキがいたのだと。


「とりあえず税金の滞納があと一ヶ月続けば差し押さえになる、いいな?」

「ふざけんな!行くとこもない俺らから生活まで奪うってのか!」


その言葉にセファーナが言う。


「どこまで馬鹿で愚かなんですか?税金を納めれば国の保護は受けられるのに。」

「だから金がねぇって言ってんだろ!」


だがすでに証拠は揃っているのだ。

酒場で飲み明かす無職の老人を確認している。

それなのに税金を払えないわけがないのだ。


「改めて言うぞ?あまりに酷いようならそれこそ刑務所だ。」

「ざけんな!俺が何をしたってんだ!」


青年は悪びれる様子もなくそう言い放った。

だがすでに公務執行妨害罪など余罪も含めいくつもの罪状が付いている。


「今回は帰るとするが一ヶ月後までに税金を払えないのなら、いいな?」


そう言ってリリーシェはセファーナとルイーズと共に引き上げていった。


帰り道でセファーナがリリーシェに訊く。


「あの人は前からあんな感じなのですか?」

「ああ、騎士の職務を妨害し挙句税金を滞納している、財務局も頭を抱えていると聞くな。」

「それは酷いな…。」


リリーシェも困った顔をして話を続ける。


「上もなぜか下町には甘くてな、本来ならとっくに追放されていてもおかしくはないんだ。」

「それなのになぜ…。」

「変な話だな。」


とりあえず話を聞きつつ軍舎に戻る。


戻ってきた後報告を済ませる。

そのあとは訓練を行い日が暮れていった。


寮に戻ったあとその事をゼノンとアーベルにも話していた。


「そんな事が…。」

「変な話ですよね、本当に。」

「何か裏でもあるのかもしれません、少し探るべきかと。」


そうしてセファーナは上官にも内緒で下町を探る事にした。

セファーナは幼い頃から法政を学んでいるためその方面には詳しいのだ。

この国の法を知っておけば彼もきちんと法によって裁ける、そう信じていた。


その日の夜はとりあえず眠りに就き明日こっそりと調べる事に。

だがこれがセファーナの心に影を落とす事になるとは今はまだ知らなかった…。

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