~失脚~
フィルニール王国滞在三日目。
残りのピースを集めるべくセファーナは行動に出る。
ターゲットは税金の横領をしている財政担当大臣だ。
国がかばっているのなら、かばえない証拠を用意するしかない。
セファーナはカリーユと共に街を歩いていた。
関係ありそうな何かを探すにはどこに行くべきか考える。
「さて、どうしますか?」
「知るかよ、裏の酒場でも行くか?」
そうしていると一人の老人に接触する。
その場に倒れた老人に謝罪し手を貸すセファーナ。
「すみませんね、目が悪いものですから。」
「いえ、こちらこそすみませんでした。」
その老人は視力が弱いらしい。
すると老人はセファーナに思わぬ言葉をかける。
「あの、よければこの老いぼれの話し相手になっていただけませんか?」
「話し相手にですか?それは構いませんが…。」
そのお人好しにカリーユは苦言を言う。
だがセファーナも今さらなのでその話を受ける事に。
「分かりました、それでどこで話しましょうか?」
「裏通りに私の家があります、そこでいいでしょう。」
カリーユは警戒するがセファーナを止めるのは無理そうだと考える。
そうして渋々カリーユも一緒についていく事に。
そうして裏通りにある老人の家に移動する。
その家は思ったよりも小さく中は少し散らかっていた。
「こんな汚い家ですみませんね、とりあえずどうぞ。」
「ええ、お邪魔します。」
そう言って家に入る二人。
家の中を見渡すと昔の仕事に関係するものが見受けられた。
老人は二人にお茶と簡単なお菓子を出してくれた。
周囲を見るその姿も面白そうに見ている。
そんな家の中には政治家との写真もあった。
この老人は元政治家なのだろうか?それを尋ねるセファーナ。
「あの、この写真は…。」
「それですか?昔の写真ですよ、とはいえ私は追い出された身ですがね。」
追い出された、それは何を意味するのか。
図々しい事は承知でセファーナはそれを訊く。
「私は昔、15年前まで財政担当の大臣として国で働いていたんです。」
「それってつまり何者かにハメられた…とかですか?」
その話が気になるセファーナ。
もしかしたらと思い悟られないように話を続ける。
「ある日私は今の財政担当の大臣にお酒に誘われましてね。」
「そのお酒の席で何かあったんですか?」
カリーユも少し気になっていた。
追い出された、つまり何かがあったのは確実だからだ。
「そこでお酒を飲んだあと眠ってしまいましてね、迂闊でした。」
「そのときに何かされたんだな。」
老人はそのときの事を今でも覚えているという。
お金のトラブルの怖さである。
「知らぬ間に借用書に私のサインがされていましてね、大金が私の手に渡りました。」
「それは違法な献金とかそういうものですよね?」
その一部始終を今でも覚えているらしい。
法律で禁止されている外国からの献金を受け取らされたのだ。
それにより失脚、誰も彼の味方をする者はいなかったという。
警察でその事を説明するも証拠不十分で拘留の後釈放されたらしい。
「あれから私はあの男を必死なって調べました、すると出てくるのは黒いものです。」
「それじゃあ警察が今も動いているのは…。」
そう、警察が今の財政担当大臣を調べているのはこの老人の動きである。
そのせいで何度か不審な事が起こっているとも言う。
「私は何者かに狙われています、なので監視が緩む今がチャンスなんです。」
「これは?えっと、財政支出の明細票…。」
老人は黙ってそれをセファーナに渡す。
そして自分は直接は動けないとも言う。
「それを密かに警察に渡してください、そうすればあいつも幕切れです。」
「でもなぜ私に?見知らぬ人間に任せていいんですか?」
老人は優しそうに言う。
信頼出来そうにないなら最初から家になど呼ばないと。
「分かりました、ならこれは確かに預かります。」
「ええ、警察の捜査部長に渡せば話は進むはずですから。」
そう言って老人は周囲を見る。
監視が戻る前にこの家を去るように言われ、二人は家を出て飛空艇に戻る。
老人は監視がいない事を確認し、時計を見る。
そして恨み節を言いつつも、その顔は不吉な笑顔だった。
セファーナも帰り道でその明細票を確認する。
それは過去15年の財政支出の詳細が書かれていた。
明らかに違和感のある金額。
これは本物だと確信する。
そのまま飛空艇に戻る二人。
ピースは恐らくこれで確定だろう。
飛空艇に戻るとシスシェナが迎えてくれる。
「お帰り、どうだった?」
「はい、なんとか手に入りましたよ。」
今回の出会いは偶然とはいえ上手く運びそうである。
「なら仕事しなさい、確実に追い詰めてやるのよ。」
「はい、それでは戻りますね。」
そう言って部屋に戻るセファーナ。
カリーユも部屋に戻って休む事に。
そのタイミングでレイネが戻ってくる。
「あら、その様子だと仕事は上手くやれてるのね。」
「ええ、あたし達もそれを支えるだけよ。」
二人は裏方としてそれを支えている。
頼もしい限りである。
「それじゃ此れはキッチンに運ぶわね、今夜も楽しみだわ。」
そう言ってレイネは食材をキッチンに運ぶ。
そこにヘイロンが出てきてシスシェナを茶化す。
「にしても私達もやるよねぇ、政治家達は震えて寝てるんじゃない。」
「そうね、でも狙うのは政治家だけじゃないわよ。」
それは今までもあった事だ。
特に黒い相手を狙うのがいつもの手段である。
「ま、見せしめってのもいいかもね。」
「あんたも言うわねぇ。」
二人はそんな話をしつつ部屋に戻る。
一方セファーナはフェラナとその明細票を確認していた。
「どうでしょうか。」
「こいつは確実な黒だね、証拠に改竄されたものと正しい支出とある。」
そこには本来の支出があり、そこを改竄したものもある。
つまり二種類があるという事だ。
それにより証拠は決定的であろう。
あとはこれを警察に持っていくだけだ。
それは明日にした上で今日は見張りを立てて休む事に。
悪事は必ず誰かが見ている、それをこれからも証明するのだ。
その仕事は見せしめを出す事で完了するのだから…。
 




