~芸術~
フーバー王国の仕事から数日。
セファーナ達は次の国であるセクスタンス公国に来ていた。
この国は芸術の国であり、それによる独自の法体系が敷かれている。
学校などでも芸術の教育に力を入れているそうだ。
それだけに芸術面で優秀な人間は多くがこの国に集うという。
厳しいながらもこの国が輩出した芸術家は多いという。
「さてっと、仕事始めよっか。」
「証明を書いたとはいえ変な真似を起こすなよ。」
カリーユは厳しい口調で言う。
ヘイロンはそんなカリーユを茶化すように言う。
「そんな固いと老けるぜ?もっとソフトにやろうじゃない。」
「お前はいつでもソフトだろ。」
もっともな返事を返す。
ヘイロンもおちゃらけつつ仕事に向かおうと言い出す。
カリーユは難しい顔をしつつもヘイロンについていく事に。
今回行くのもヘイロンの知り合いの情報屋だ。
向かった先は街にある花屋だった。
店先で花を見ていると花屋の店員が声をかけてくる。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「探しものはツルウメモドキ、ある?」
その言葉に店員の顔色が変わる。
そして笑顔でその言葉に頷く。
「かしこまりました、ではこちらにどうぞ。」
そう言って店員は二人を店の奥へと案内する。
「さて、ヘイロン、今回は何が欲しいのかしら。」
「そうねぇ、そんじゃこの国の偉い人、または国直属の組織の関係者の黒いの。」
その言葉に店員は言葉を続ける。
「それだと少し値が張るわよ、お金はあるのかしら。」
「無問題だよ、それで何かある?」
そう言うと店員は戸棚の隠し引き出しから書類の束を出す。
ヘイロンはカリーユにそれの確認を促す。
「確かに間違いないな、これに書いてあるのは芸術院の画家か?」
「ええ、芸術院の院長で盲目の天才画家と呼ばれる人よ。」
盲目の天才画家。
その言葉だけを聞くと凄い人に感じられる。
「あいつか、前々から胡散臭いって思ってたけど、やっぱ黒いのか。」
「ええ、数年前に突然引退した人で、その理由も失明したかららしいわよ。」
失明による画家の引退。
だがその裏には何かがある、カリーユもヘイロンもそれを感じ取る。
「それでいい?他にもあるけど。」
「いや、こいつでいいよ、代金はなんぼかね?」
情報料を訊くヘイロン。
それに対し金額を提示する花屋。
「この程度でどうかしら?ほんの少し引いてあげるわよ。」
「ならそれでいいよ、ほらお金。」
そう言って代金を現金で渡すヘイロン。
店員はそれを丁寧に数える。
「確かに受け取ったわ、毎度どうも。」
それに対してカリーユが質問を投げかける。
「なあ、前もそうだが情報料って現金じゃないと駄目なのか?」
「ええ、それも一括払いでしか受け付けないわ。」
それはクレームを回避するためのやり取りでもある。
現金のみでそれも一括払い、確実に逃げられないようにする支払い方法だ。
「まあこっちも自信があるからよね、基本的に世の中の情報屋はこのやり方よ。」
「踏み倒させはしないってか、強気なんだな。」
ヘイロンもそれに対し胸を張って言う。
店員も自信ありげだ。
「こっちは信用第一だ、それならちょろまかされてたまるかっての。」
「そうね、ヘイロンの言う通り信用を売りにする仕事だからこそよね。」
カリーユもそれに納得する。
信用第一というのはどんな商売にも共通するからだ。
「さて、そんじゃサンキュね、行くよ。」
「すまなかったな、あとビオラの花を買いたい、いいか?」
カリーユは店員にビオラを頼む。
店員も笑顔でそれを包んでくれた。
花を買ったカリーユはヘイロンと共に飛空艇に戻る。
飛空艇に戻るとシスシェナが迎えてくれた。
「お帰り、ってカリーユあんた花なんか買ってきたの?」
「ああ、たまにはいいだろ?」
シスシェナも珍しそうにそれを見る。
そして仕事の事を尋ねる。
「情報ならあるよ、セファーナが帰ってきたら渡しといて、そんじゃね。」
そう言ってヘイロンは部屋に戻っていった。
「そんでカリーユ、なんでビオラの花なの?」
「ビオラの花言葉は信頼、僕達に相応しいと思わないか?」
思わぬ言葉を言われ驚くシスシェナ。
だがそれもカリーユなりに打ち解けたのだろうと思いほっこりしていた。
「あんたも言うようになったね、そいつはあたしが飾っとくよ。」
「分かった、なら頼む。」
そのタイミングでセファーナも戻ってくる。
「戻りましたよ、あれ?花ですか?」
「僕が買ってきた、花言葉は信頼、ビオラの花だ。」
その言葉にセファーナも笑みがこぼれる。
「あら、素敵ですね、それにしても花言葉なんて知ってたんですね。」
「あ、そうそう、こいつは情報ね、はい。」
そう言って書類の入った紙袋を渡す。
「はい、確かに、では部屋で精査しておきますね。」
そう言って部屋に戻る。
シスシェナは花を飾るべく準備をする事に。
その直後レイネも戻ってくる。
「あら、花なんて誰が買ったの?」
「カリーユよ、花言葉は信頼ですって。」
その言葉にレイネも嬉しそうに言う。
「素敵ね、あの子も成長したのかしら。」
「かもね、それじゃあたしは飾っておくから。」
そう言ってシスシェナは花を持っていく。
レイネは食材をキッチンに運んでいく。
部屋ではセファーナとフェラナが精査を始めていた。
「どうでしょう?」
「これは黒だろうね、とはいえもう少しピースが欲しいかな。」
確定的ではあるがピースはまだ足りない。
残りはセファーナが集める事となった。
そうして日が暮れていく。
明日以降は残りのピースを手に入れる事となる。
その仕事ぶりは世界にどんどん知られていくのである。




