~正確~
フーバー王国滞在三日目。
残りの情報を集めるべくセファーナは動いていた。
確定的な情報はヘイロンが持ってきた。
だがピースはまだ足りていない。
残りのピースをセファーナが集める事となる。
今までのようにその正確な仕事が要求される。
「さて、始めますか。」
「残りのピースだろ、さっさと行こうぜ。」
そう言って二人は街に出ていく。
今回のターゲットは国の騎士団長だ。
どうやら秘密裏に反逆行為を企てているらしい。
それを阻止しいつものように仕事をするのが今回の仕事だ。
そうして二人はある場所にやってくる。
そこは騎士達がよく入るという酒場だ。
主に料理を頼むそうだが、そこなら何かが掴めるかもしれない。
そう睨みその酒場にやってきた。
酒場に入ると奥の席に数人の騎士が入っていた。
こんな時間から酒場にいるのは不自然だ。
食事の時間にはまだ早いし酒を飲むにしては昼間である。
セファーナは気づかれずに声が聞こえる位置に座り話に聞き耳を立てる。
マスターにサラミの盛り合わせを頼み勘付かれないように話を聞く。
「なあ…本当にいいのか?」
「仕方ないだろ…俺達は団長の部隊なんだ、逆らうわけにも…。」
何やら聞こえてくる。
その会話に耳を傾けつつ何食わぬ顔をする。
「でも流石に国王を暗殺なんて…。」
「俺だって嫌だよ…、でも命令違反は重罪だって知ってるだろ?」
国王の暗殺という言葉に驚きを隠せない。
騎士団長の反逆行為は自分が王になるためにやるつもりなのか。
さらに耳を傾けると騎士団長の不穏な動きも見えてくる。
騎士達もまさか聞かれているとは思っていないようだ。
「裏で賛同者を募ってるし、暗殺用の武器も揃えてる、本気だぜ…。」
「そんなにしてまで王様になりたいのか…、このままじゃマズいだろ…。」
その言葉から騎士団長の本気ぶりが窺い知れる。
それが聞けるだけで情報としてはじゅうぶんだ。
サラミを完食し何食わぬ顔で店をあとにする。
外に出たら裏通りへ行きそれを確認する事に。
「流石に今回の一件は事が大きいみたいですね。」
「未遂で終わらせればいいんだろ、いつになるかだろうな。」
そっちの方はヘイロンの持ってきた情報で確認が取れている。
決行予定は最低でも二週間後。
それまでに逮捕に追い込めれば仕事は成功だ。
二人はその情報を確認し、改めて正確無比な仕事をする事を確認する。
あとは決行予定までに執行するのみである。
情報の精査とあと数日のうちに確実に情報を揃える事を確認する。
そうして二人は飛空艇に戻っていく。
飛空艇に戻ると毎度のようにシスシェナが出迎えてくれる。
「お、お帰り、どうだった?」
「ええ、とりあえずは多少なりとも収穫はありました。」
その事を説明しシスシェナも顔を曇らせる。
「その騎士団長は野心家ねぇ、ある意味立派だわ。」
シスシェナなりの褒め言葉なのだろう。
野心だろうと目的を遂行するための行動力は褒めるに値する。
口先だけでなく実際に行動に移しているのだから。
シスシェナ自身そういう人間にはシンパシーを感じるのだろう。
「とりあえず私は部屋で情報を精査しておきますね。」
そう言ってセファーナは部屋に戻る、カリーユも部屋に戻っていく。
「おや、ボスはお帰りなんだ。」
「まあね、あんたの情報も役立ってるって。」
シスシェナは素直にヘイロンを褒める。
その情報網を使えば大体の情報は手に入るだろう。
「とりあえずあんたはしばらく様子見、それは忘れないのよ。」
「はいはい、裏切ったりしないから安心しといて。」
そう言ってヘイロンは部屋に戻っていく。
そのタイミングでレイネが戻ってくる。
「あら、仕事はもう終わってたかしら。」
レイネはいつものように食材を抱えていた。
今日は主に肉を買ってきたようだ。
「そうね、でもあんたにも世話になってるから。」
「ふふっ、私も汚れちゃったわね、でもそれもいいわ。」
笑顔で言うレイネ。
聖職者をしていた彼女が今や歪な正義を執行する者の仲間なのだ。
神は怒るかもしれない。
それでも彼女の選んだ道はその道である。
「さて、それじゃこれはキッチンに運んでおくわね。」
そう言ってレイネはキッチンに向かう。
シスシェナもそんな彼女の前向きな姿勢には感服するしかなかった。
一方のセファーナは部屋でフェラナと今日集めてきた情報を確認する。
「騎士団長の部隊の騎士が言ってたんだとしたら間違いないだろうね。」
「ええ、ただ裏付けはするべきかと。」
酒場で聞いた情報の裏付けは必要だと考える。
フェラナもそれに同意し明日以降は裏付けを進める事になる。
騎士団長の国王暗殺計画。
それが実行される前に逮捕に追い込むのだ。
フェラナはそんなセファーナの姿に今では心酔しているようにも映る。
フェラナの過去にも関係しているのだろうが、それは信じる目だ。
そうして日は暮れていき明日以降に備えて英気を養う。
その鎌は確実に首を捉えている。
正義は歪な心に宿るもの、そういうものなのかもしれない。




