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~配属~

翌朝、配属の張り紙が掲示板に貼り出された。

新人騎士達はその張り紙を見に集まっている。


「あっ、あった。」


ゼノンは前線部隊への配属が決まったようだ。


「私は…ありましたね。」


アーベルは遊撃部隊に決まったようだ。

一方のセファーナはアーベルと同じ遊撃部隊に配属されていた。


「アーベルさんと同じ部隊…。」

「なんか縁があるね、これからもよろしく。」

「いいなぁ、でも時間があったら会いに行くからね。」


そうして張り紙を見終わった者から寮の食堂へ移動し食事に移る。

食事は体を鍛えるのに適した献立が多い。

あとは貧血を防ぐために鉄分が少々多めに出される。


セファーナはアルコールに弱い以外は好き嫌いはない。


「はぁ、魚は苦手なんだよね…。」


ゼノンは魚が苦手なようだ、アーベルは豆が苦手らしい。


「豆のサラダですか…これも克服しないといけませんね。」

「好き嫌いなんて意外ですね。」


セファーナが意外そうな顔をする。

するとそこに一人の騎士が現れる。


「なんだ、好き嫌いはよくないぞ?」


その騎士はゼノンと同室のブルームという騎士だった。


「仕方ないだろ、魚は苦手なんだから。」

「俺は好き嫌いはないぞ、はっはっは。」


嫌味ではなく親睦の意味でのからかいなのだろう。

とりあえず悪い人でないのは伝わった。


「でも好き嫌いも克服しないと。」

「そうだぞ、ゼノン、残すのは構わないが無理して食べるのもよくない。」

「意外と言うんだね。」


その言葉にアーベルも驚いていた。

そしてブルームは言う、自分の村の話だ。


「俺の村は貧しくてな、食べられるものはなんでもご馳走だった。」

「ブルーム…。」

「だから食べられるのに食べないのは食の神様に失礼なのさ。」


セファーナもその言葉に感心していた。

するとゼノンが口を開く。


「僕は魚は食べられないんじゃなくて骨が苦手なんだよ、どうにも難しくてさ。」

「なら俺が骨の取り方を教えてやる、構わないな?」


そう言うとゼノンも諦めたようだった。


その後食事を済ませ配属する部隊の制服を受け取りに行く事に。


受け取り先は騎士団本部の服飾室だ。

ここは騎士の制服を手直しもしてくれる。


「失礼します!制服を受け取りに参りました!」


そう言うと一人の女性が制服を手渡してくれる。

彼女の名はメスト、この国の服飾職人で国のお抱えらしい。


「これが…。」

「早速袖を通してみてはいかがですか?」


ゼノンは早速着替える、その服は新緑の色をした前線部隊の制服だ。


メストはセファーナ達にも声をかける。


「そっちの二人の配属を教えて頂けますか?」


セファーナとアーベルは遊撃部隊だと伝える。

そして制服が手渡される、黒い色の制服で遊撃部隊の証だ。

この国では制服の色で配属が分かるようになっている。

そして二人も早速制服に袖を通す、サイズもピッタリだ。


「似合っていますよ、それでは各部隊の隊長に挨拶に行きなさい。」


そうして三人は部屋を出てそれぞれの配属先へ向かう。

道中でゼノンと別れセファーナとアーベルは遊撃部隊の軍舎へと向かう。


「セファーナ・アルトリオ、ただいま到着致しました!」

「同じくアーベル・アヴェルトマ、ただいま到着致しました!」


そこにいたのはリリーシェだった。


「よく来てくれたな、隊長はもうそろそろ戻るはずだ。」


すると一人の騎士が入ってくる。


「ふむ、今年の遊撃部隊の新人は30人か。」


その騎士こそ遊撃部隊の隊長を務めるガルザス・ブーゲンビレアその人だ。

セファーナとアーベル、他の新人騎士達も敬礼をする。


「うむ、そう硬くならなくてもいい、だが敬語はしっかりと使うように。」


そうしてリリーシェが説明を始める。


騎士は基本的には国の警察に当たり罪人などを法務部に引き渡すのが仕事だ。

この国では騎士はやむを得ない場合を除き民に武器は抜けないようになっている。

だが応戦自体は許可されており格闘による護身術も各部隊で習うそうだ。


「あの、罪人は基本的には法によって裁かれるのですよね?」


セファーナはそう質問する。


「そうだ、とはいえ賄賂わいろで無罪になったケースも過去にはあるそうだ。」


それを聞いて騎士達はどよめく。

だがこれは法治国家では珍しくない話なのだ。

裁判官や警察に賄賂わいろを渡し釈放してもらう、それは法の見えない穴なのだ。


「では賄賂わいろの受け取りが確認されたらどうなりますか?」

「もちろんその人物は取り調べの後処遇が決まる。」


法治国家としては至極当然なのだがどこか納得がいかない顔をしていた。

それでもそれは国である以上仕方ないのだと割り切る事にした。


その後もリリーシェは説明を続ける。

一通りの説明が終わり騎士達は職務に移る事になる。

新人騎士は最初は先輩の上官と一緒に仕事をする。


「なお街の巡回は一週間おきに部隊を交代して行う、今週は魔法部隊の仕事なので有事以外は待機、または部隊の仕事か訓練を行うように。」


そう言われとりあえずは待機する事に。

セファーナは訓練をするために外に移動する。


そうして今日は大きな騒動もないまま夕暮れを迎える。

当直の騎士は日替わりなのでその人だけが夜は残る事になる。


寮に戻ったセファーナはゼノンとアーベルと共に食事を済ませる。

その後入浴を済ませ部屋に戻る事に。


部屋ではスコットとケーシーが先に戻っていた。


「セファーナも戻ったのか。」

「明日も訓練だよ、体を休めておかなきゃ。」

「そうですね、では消灯になったら寝るとしますね。」


そうして騎士としての生活が始まった。

だが現実を知る事になるのはこれからなのだ、そうこれからなのである。

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