~大国~
クィン王国の一件から数日、一行はワイマール王国にやってきていた。
ここは大国であり国土の大きさは世界でも10本の指に入る。
そんな大国での仕事とあってセファーナも気合を入れていた。
まずは情報収集という事で街に繰り出す事に。
「流石に王都の規模が今までとは違いますね、大きいです。」
「この国の仕事は骨が折れそうだな、それでもやってやるさ。」
改めて気合を入れる二人。
とりあえず街を歩いてみる事に。
この世界は大国の領土の中に小国があるという特殊な感じになっている。
今までに行った国もそんな大国の中の小国である。
そして今回の仕事は大国であるワイマール王国。
簡単には事が運ばない事は覚悟している。
広大な王都を歩くセファーナとカリーユ。
商店なども今までの国とは規模が違う。
そんな中思わぬ噂話を耳にする。
その話に耳を傾けるセファーナ。
「知ってる?5年前の殺人事件の話、あれ犯人は大臣って噂よ。」
「当時はうやむやにされたけど、今になって急浮上か…逆におかしいよな。」
どうやら過去に起こった殺人事件の話らしい。
聞く限りでは大臣が謀略を巡らせ有力貴族を殺害したそうだ。
当時は自殺として片付けられたが、今になって突然浮上したそうだ。
自分達以外にも何者かが動いているのか?
それとも政治における政敵を消そうとする腹の探り合いか。
なんにしても今回のターゲットはその大臣になると思われる。
だが話を聞くともう一人の人間も浮上する。
それは議会の議長が大臣を毛嫌いしているという事だ。
つまり議長が大臣を次の選挙で落とすために裏で動いている。
だがターゲットにするのなら大臣、その方が効率がいいと踏む。
なんにしても両者の裏を探り最終的に相手を決める事に。
本当に執行すべき相手を見極める事が必要になる。
「さて、どっちがより黒いか…ですね。」
「殺人犯の大臣と謀略の議長、両方やるのは骨が折れるしな。」
今回はそんな二人の黒からより黒い方を選ばねばならない。
選挙の公示があるのは二週間後だそうだ。
それまでに仕事を終える必要がある。
セファーナは判断の材料とすべく少しでも有力な情報を探す。
そんな中路地裏に小さな酒場があるのを発見する。
その酒場は情報も売っているらしく、少し訊いてみる事にした。
「あの、情報が欲しいんですが…。」
「姉さん、そいつは注文してからにしてくれよ。」
以前もあった事だが、この手の店では注文しないと話にならない。
だがセファーナはアルコールに極端に弱い。
とはいえジュースを置いているわけもない。
なら選択肢は一つである。
「それじゃあチーズの盛り合わせを、お酒とは一言も言っていませんよね?」
「うぐっ、揚げ足取りやがって…、分かったよ、どんな情報が欲しいんだ。」
大臣と議長の事を尋ねると分かっている限りの情報を教えてくれた。
どうやらより黒に近いのは大臣らしい。
今回の疑惑の浮上も知らないの一点張りだそうだ。
そんなに必死に否定するからには裏がある。
酒場に情報を持ち込む情報屋もその線で睨んでいるらしい。
情報に感謝を述べ、出されたチーズの盛り合わせを完食して店を出る。
「あの姉ちゃんとガキは思ったよりも曲者みたいだな。」
「注文に対して酒じゃなくて料理を頼む辺り言葉の裏をかいてたよな。」
店に入っていた客もそれには感心していた。
マスターもやられたと言わんばかりの顔をしてチーズの皿を片付ける。
とりあえず飛空艇に戻るセファーナとカリーユ。
その情報の精査をして改めて情報を増やす事とする。
飛空艇に戻るとシスシェナが出迎えてくれた。
「お帰り、情報はどうだったかしら。」
「ええ、大体は固まりました、明日以降も集めにかかります。」
今回の仕事は骨が折れる、その覚悟は出来ていた。
だからこそやりがいのある仕事として気合も入るのだ。
セファーナは部屋に戻りフェラナと一緒に今ある情報を確認する。
カリーユは部屋に戻って勉強だ。
するとそのあとに続くようにレイネが戻ってきた。
「あら、セファーナ達は戻ってるのね。」
「ええ、いつものように部屋でやってるわよ。」
レイネも今回は買ってきた食材が豊富だ。
大国だけあって今までの国よりもいいものが安く揃うらしい。
「流石は大国ね、この国なら少しは美味しいご飯にありつけそう。」
「ふふっ、今までよりいいものが安い、大国だからこそよね。」
その後レイネは食材をキッチンへ運ぶ。
シスシェナも飛空艇の簡単なメンテナンスをする事に。
セファーナは今回の仕事の大変さを感じつつ情報を精査する。
「今あるのはこれだけですね。」
「大国だけあって情報量も違うね、相手も大物だ、燃えるじゃないか。」
フェラナも今回の仕事には気合が入る。
二人はこの国での仕事を成功させるために出来る限りをするのである。
そうして日は暮れていき日も落ちる。
明日からはこの大国での大仕事だ。
一つのターニングポイントがこの国になろうとしていた…。




