~商売~
クィン王国滞在三日目。
セファーナは武器屋組合の不正会計について調べていた。
とはいえ相手も商売だ。
影響は最小限に抑える事も考えている。
「うーん、何かないでしょうか。」
「そんな簡単にいくかよ、もう少し慎重になればいいだろ。」
カリーユの言葉ももっともだ。
とはいえ以前から慎重にはやっている。
「なんにしても情報ですね、行きますか。」
「はいはい、ヘマすんなよ。」
そう言って情報を集めに出発する。
そんな中街である噂を耳にする。
「聞いたか?なんでも武器屋組合のトップが癒着してるって…。」
「本当かは知らないけど、次の武術大会の有力候補だろ?マズイんじゃ…。」
どうやら次の武術大会の有力候補と癒着しているらしい。
聞き耳を立てるとどうやら賄賂で優れる武器を優先的に受け取っているらしい。
今のところは噂にすぎないが、きな臭い話である。
それを調べてみるのもありだと判断し、そっちも調べる事に。
とりあえず武器屋に悟られないように話を聞く事に。
昨日話した武器屋にもう一度行って軽く話してみる事に。
「あの、すみません、少しいいですか。」
「あんたは昨日の…武器を買ってくれる気になったかい?」
セファーナは武器屋組合の事を尋ねてみる。
「んー、俺も詳しくは知らないからな…。」
やはり武器屋は何も知らないのだろうか。
「そういや噂なんだが武器の倉庫から強い武器ばかりがなくなるって聞いたな。」
「それって誰かが買い占めたとかですか?」
上手く訊くセファーナ。
だが返事は意外なものだった。
「いや、それは無理だ、武術大会の二ヶ月前から買い占めは禁止なるからな。」
つまり今は一ヶ月前だ。
買い占めはこの国の法に則り不可能である。
何者かが金に物を言わせて強い武器を確保している、それも何者かと通じて。
「買い占めが出来ないとなれば資金力しかないしな、それが基本だ。」
つまり資金力のある何者かが強い武器を優先的に確保している。
買い占めが禁じられるこの期間なら癒着も疑われるだろう。
「まあこの国の事に興味があっても下手に首を突っ込まない方がいい。」
「そうですね、でもありがとうございました。」
そう言って頭を下げその場をあとにする。
「うーん、強い武器が優先的に消える…。」
「戦士の国なら金持ちぐらい多いだろ、違うか?」
確かに金を持っていそうな戦士は多い。
だが買い占めが禁じられる期間にそんな大金が動くとも考えにくい。
やはり裏で何者かが動いている。
セファーナはそれを確信していた。
とりあえず残りの期間でそれを重点的に調べる事に。
今日も残りの時間でそれについて可能な限り調べる事にする。
そうして情報を可能な限り集め飛空艇に戻る。
飛空艇に戻るとシスシェナが出迎える。
「お帰り、なんか収穫あったかしら。」
「はい、ただ少し複雑っぽくて念入りに調べる必要があるかと。」
セファーナはその事を説明する。
シスシェナは確かに厄介そうだと感じたようだ。
「とりあえず今ある情報を精査しておきますね。」
そう言ってセファーナは部屋に戻っていく。
「あいつもすっかり立ち直ったな。」
「とはいえエルミナス王国はあの地震で滅亡、悲しいもんよね。」
二人もセファーナの事は気にかけていた。
立ち直ったとはいえ尾を引いていないか心配だからだ。
とりあえずは様子を見る事にする。
何かあったときには止めなくてはならないからだ。
「あら、何かあったのかしら。」
いいタイミングでレイネが戻ってくる。
稼ぎの給金もしっかり確保したようだ。
「ふーん、まあ彼女なりに上手くやるわよ、信じなきゃ。」
レイネはセファーナを信じていた。
二人もそれを信じセファーナを信じる。
その後カリーユは勉強という事で部屋に戻っていった。
「さて、始めますよ。」
「はいよ、任せといて。」
セファーナは部屋でフェラナと一緒に情報を精査していた。
フェラナに負けずセファーナもその能力は高い。
それはエルミナス王国の騎士時代にやった事が証拠だ。
今でこそ仲間は知っているが、当時の騎士団の仲間達はそれを知らなかった。
何者かが国の不正を告発した。
そうとしか伝わっていなかったからだ。
そんな事情もあってかセファーナの情報能力は今の仲間しか知らない。
フェラナも最初はその能力の高さに驚いていたのだ。
「今はこんなものですね、もう少し調べないと。」
「とはいえ恐らくは黒、それも真っ黒だね。」
フェラナは確信こそないが、そう言う根拠もあった。
セファーナもそれを信じるに足る理由はある。
とりあえずは今日はここまでにして明日以降に備える。
レイネが買ってきた食材もあるので夕食の献立も考える。
そうして今日の日は暮れていく。
だがこの国は一筋縄ではいかない。
それを予感させるにはじゅうぶんに材料は揃っていた。
武器屋組合と有力候補の癒着。
それを暴くまでが今回の戦いである。
運命の歯車は回り続ける、その正義を刻んで。
 




