~武器屋~
ジーベル王国から次はクィン王国にやってきた一行。
クィン王国は戦士の国らしく実力主義の社会らしい。
国王が統治こそしているが実力社会故に入れ替わりも多いそうな。
とりあえずはこの国の情報を集める事にした。
「ん、いい天気ですね。」
「相変わらず呑気なもんだな、これだけやってるのに。」
今までに顔は割られていない。
とはいえ油断は出来ないのである。
「とりあえず行きますよ。」
「はいはい、ヘマすんなよ。」
そうして情報収集を開始する。
街を見て回るとどこも武器屋や防具屋ばかりが目につく。
流石は戦士の国、数多の武器屋と防具屋はどれもライバル関係だ。
「どこも武器屋と防具屋ばかりですね。」
「戦士の国だもんな、そりゃそうだろ。」
とはいえ武器は自前でいいものを持っているので買う必要はない。
防具も服の下に仕込める防護服があれば足りる。
そんな中一軒の武器屋に声をかけられる。
「そこの人、少しいいかな。」
「えっと、私ですか?なんでしょう?」
その武器屋はセファーナの武器に興味を示しているようだ。
「あんたが下げてる剣少し見せてくれないか、盗ったりはしないから。」
一応目を離さないようにして剣を見せてみる。
「この剣凄い立派な業物じゃないか、どこで手に入れたんだい?」
「えっと、昔所属してた騎士団で昇級の証としてもらいました。」
その言葉に店主も驚きを隠せない。
「はぁ~、お嬢さんが騎士団にね、それでこんな立派なものをもらったのか。」
「それで返してもらっていいですか。」
そう言って剣を返してもらう。
店主もいいものを見せてもらったとお礼を言う。
セファーナはついでにこの国の事を訊いてみる。
「んー、最近…そういや武器屋組合の会計がちょろまかしてるとか聞いたな。」
「会計がですか?」
どうやら武器屋の組合が不正会計をしているらしい。
今回のターゲットの候補として頭に留めておく。
「来月には新しい国王を決める武術大会でな、武器も売れる時期なんだ。」
「つまり不当に利益を出そうとしている…でしょうか。」
あくまでも今は噂だ。
とはいえ調べる価値はありそうな話だった。
「分かりました、変な事を訊いてすみませんでした。」
「気にすんなって、でも機会があればうちの武器も贔屓にしてくれよな。」
店主も商売上手のようだ。
とりあえずその場をあとにしてその会計の事を調べる事に。
「不正会計な、この国だとそれも税収とかに直結しそうだな。」
「そうですね、とはいえこの国は実力社会、不正があっても不思議ではないです。」
確かにそれは的を射ている。
誰かを出し抜くために卑怯な手を使うのも立派な戦術だからだ。
その武器屋組合の会計が何かを目論み不正会計をしている。
そっちの方向で調査を入れてみる事にする。
とりあえず明日以降の情報収集はそれに決まった。
そうしてセファーナ達は飛空艇に戻る。
飛空艇に戻るとシスシェナが出迎えてくれる。
「おう、お帰り、狙いは決まったかしら。」
「はい、狙いは決まりました。」
ターゲットの事を話すとシスシェナも納得した。
とりあえず慎重になるようにとだけ釘を差しておく。
その後カリーユは勉強のために部屋に戻っていく。
セファーナは部屋に行きフェラナと今後について相談する。
一方でレイネも仕事を見つけて戻ってきた。
「お、そっちも仕事は見つかったのね。」
「ええ、酒場のウエイトレスね。」
レイネは屈強な戦士を相手にしても臆さない強心臓だ。
そんなマイペースな強心臓が世渡り上手な理由なのだろう。
「とりあえずセファーナにも仕事の事は伝えておいてね、それじゃ。」
そう言ってレイネは部屋に戻っていく。
シスシェナもある意味頼もしさを感じていた。
「ふぅ、今分かっている事はこんなものですか。」
「まだ少ないね、明日以降もきちっと集めてくれるね。」
今はまだ情報が少ない。
明日以降その執行に向け情報収集に移る。
「それじゃ何かあったら頼みますね。」
「うん、任せておいて、ヘマはしないよ。」
その言葉に強い信頼が感じ取れる。
フェラナもセファーナを見てきて、その姿に惹かれているのだろう。
それは自分を仲間にしてくれた事への恩返しでもある。
かつて国の悪事を告発し追放されたフェラナ。
それから無気力になりそんな自分の希望の光だったのだ。
フェラナは死ぬまでセファーナについていこう、その覚悟を決めている。
それが恩返しであり自分に出来る正義なのだから。
セファーナが部屋を去ったあとも今ある情報を精査する。
その情報能力はさらに磨かれ今では欠かせないブレインである。
「あたしはもう迷ったりはしない、信じるままに、ね。」
フェラナの決意は堅いのだ。
他の仲間達もそれは同じ、信じるからこそである。
その後は食事を済ませ明日以降に向け英気を養う。
そうしてその正義は強い信念の下に執行される。
運命はすでに止まれないところまできているのだから。
 




