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~幸運~

エルスリート皇国滞在六日目。

待は貿易局の重役逮捕に騒然としていた。


それと同時に黒羽の使者がこの国にも…と騒がれていた。

だがその顔は誰も知らないのだ。


「こうなるって分かっててやるんだからな。」


カリーユは少し呆れ気味にそう言う。


「それが私の正義ですから。」

「あんたの正義も結局は自己満足、だろ。」


カリーユは辛辣にそう言う。

セファーナもそんな事は分かっている。


だがそれでも自分にはこれが正しいと信じているのだ。


「それより引き上げるぞ、僕達はあくまでも旅人なんだ。」

「そうですね、引き上げますか。」


そうして引き上げようとしたとき何者かに呼び止められる。


「あの、君はもしかしてセファーナじゃないのか?」


その声はどこかで聞いたような声だった。

振り返るとそこにいたのはかつての同僚のケーシーだった。


「やっぱり…元気にしていたかい。」

「ケーシーさん…どうして…エルミナス王国は確かに…。」


ケーシーは元気そうにしていた。

だがなぜ彼がこんなところにいるのか、それを訊くセファーナ。


「実は戦争が始まる一週間前に母国に帰国していてね。」


どうやらケーシーは開戦直前に母国に戻っており、生き延びたという。

ケーシーの母国は北にあるヤードという小国だ。

母親の様子を見に帰国した事が幸いしたらしい。


「でもセファーナも生きていてよかった、まさかまた会えるなんてね。」

「はい…私も…。」


するとカリーユが質問する。


「こいつ誰だよ、知り合いか?」


ケーシーはカリーユを見てセファーナに訊く。


「この子は?子供でも産んだのかな?」

「違いますよ、孤児を世話しているだけです。」


ケーシーもそれに笑顔を浮かべる。


「そうか、やっぱり君は優しいね、昔と変わっていないよ。」

「ケーシーさんだって、昔のままじゃないですか。」


それはあのころと変わらない二人だった。

だがセファーナは内心ではすっかり変わってしまっていた。

それを隠し話を続ける。


「ケーシーさんはなぜこの国に?」

「今は商売をしていてね、それで仕入れにきたのさ。」


エルミナス王国がああなった以上騎士を続けるのも大変だ。

騎士を辞めたわけではないが、商売もしつつ情報を集めているらしい。


「それでセファーナは今は何をしているんだい。」

「今は知り合いと一緒に世界を飛び回ってます。」


カリーユが自慢気に答える。


「いろんな仕事もしてるしな、スキルだけは無駄に増えていく。」

「ははっ、それはいいね、でもそんな知り合いがいるのか。」


セファーナも知り合いの事を自慢気に話す。


「はい、信じるに値する素晴らしい人です。」

「そうか、ならその人達を大切にするんだよ。」


ケーシーは笑顔でそう言った。

セファーナも笑顔でそれに応える。


「さて、僕はそろそろ行かなきゃ、またどこかで会えるといいね、それじゃ。」


そう言ってケーシーは人混みに消えていった。

セファーナもそれに少しホッとしていた。

それを見送った後飛空艇に戻る事に。


「お、お帰り、何かあったの?」


シスシェナがセファーナの顔を見てそう問う。


「昔の同僚に会いました、彼は幸運だったんですね。」


フェラナもそれをセファーナに訊く。


「ふーん、彼氏か何かかな。」


茶化すように意地悪な質問をしてきた。


「違いますよ、そんな関係では…。」


シスシェナとフェラナも知ってて訊いたのだった。

セファーナも少しむくれつつ二人に小さく怒っていた。


「僕は剣でも振ってる、飯の時間になったら呼んでくれ。」


カリーユはそう言って甲板に行ってしまった。

だがセファーナも幸運な出来事に少し胸を撫で下ろしていた。


「こっちも情報は集めてる、必ず戻るんだから。」

「あたし達に今は任せときな、それまでは仕事してればいい。」


二人はそう言ってエルミナス王国の情報を集めてくれている。

セファーナも必ず帰るのだと決意を固める。


「そんで次はどこに行くの?もう決まってる?」


シスシェナが次の目的地について尋ねる。


「次はカティスに行きます、構いませんか。」

「はいよ、カティスね、なら準備とかもしとくわ。」


次の目的地は海洋国家カティス、海に囲まれる島国に決まった。


「それじゃしっかり休んどきなさい、いいわね。」


そう言ってシスシェナは自室へ向かう。

フェラナもエルミナス王国についての情報をまとめるために自室へ戻る。


セファーナも夕食を揃えるべく街に出ていった。

そうして日が暮れていく。


次の目的地に向け体を休めておく一行。

次の目的地であるカティスへと飛び立っていくのである。


もはや運命の歯車は戻る事はない。

自分自身の正義に飲み込まれるその日まで、歯車は刻み続けるのだ。

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