~技術~
ラックベリーの一件から二日後。
セファーナ達はエルスリート皇国に来ていた。
この国は技術が発展しており世界的に珍しい機械の国だ。
「凄いな、工場ばかりじゃないか。」
カリーユもそれに驚いていた。
シスシェナは飛空艇の予備部品を調達するとかで別行動だ。
「さて、今回の仕事を始めますよ。」
そう言ってセファーナはカリーユを連れ街へと歩を進める。
街を散策していると商店では珍しいものも売られているのが目に入る。
今の時代では貴重な銃も売られているのが確認出来る。
セファーナは店を覗き売り物の銃のサンプルを手に取る。
「お嬢ちゃん、銃に興味があるのかい?」
店主は物珍しそうに話しかけてくる。
セファーナもいくつか手に取り握りを確かめる。
「売ってやる事は出来るけど、自己責任だぞ。」
確かに銃は危険な代物だ。
殺傷能力と射程の長さから暗殺や闇討ちに向いているからだ。
「此れはサンプルで弾は抜いてあるけどな。」
カリーユが物珍しそうに見ていた。
セファーナは店主に一番軽くて一撃の威力が高いものを尋ねる。
そして渡されたのは片手用の長銃だった。
確かに威力に優れそれで軽い作りになっている。
「これおいくらですか?」
セファーナは値段を尋ねる。
値段は40000ほど、少し奮発してその銃を購入する。
ついでに弾も余分に150発ほど購入する。
店主は代金を確認し店の奥から持ってきた商品を手渡す。
それを確かに受け取り店をあとにする。
「本当に買ったのかよ、何に使うんだ?」
「剣だけで対処出来ない相手への威嚇と牽制用にです。」
それは何かあったときのための保険という事だろう。
そのまま今回の狙いを探しにいく。
すると意外な噂話が聞こえてきた。
その話に聞き耳を立てるセファーナとカリーユ。
どうやら国の貿易局が銃の不正な輸出を行っているらしい。
その貿易局の職員が今回のターゲットに決まる。
輸出先は東方の独裁国家らしい。
その情報をまずは徹底的に探る事から始める。
外堀を埋めるように情報で逃げ道を塞ぐのだ。
一旦飛空艇に戻りフェラナにその事を相談する。
情報が集まったら声をかけるように言われたので次はそれを手に入れる。
情報があるとしたら恐らくは城になるだろう。
だが今回のターゲットは強敵だと理解している。
街には監視の目も多く簡単にはいかない。
「それでもやらないと…ファイトです、私。」
そう言って自分を鼓舞する。
ついでに滞在中の働き先の求人も決まっていた。
そうして日が落ちる。
明日からは情報集めと仕事が待っている。
カリーユもセファーナの仕事を見て少しずつ覚え始めている。
仕事の効率も少しは上がると思い教育はきちんとする事を決める。
「お、戻ってたのね。」
シスシェナが大量の予備部品を抱えて帰ってきた。
この国はその技術から飛空艇の国とも呼ばれている。
空の移動手段が今の時代は貴重な中、飛空艇の建造もやっているそうだ。
「これだけ部品があれば簡単な処置は自力でやれそうね。」
「ですね、万が一故障したら大変ですし。」
そう言ってシスシェナは部屋に部品を持っていく。
今は仕事優先、セファーナもこの国での仕事に気合を入れる。
その夜セファーナは購入した銃の握りを確認する。
今は弾を入れていないが今後は弾を込めて持ち歩くからだ。
それを確認し夕食を済ませる。
そのあとセファーナはフェラナの部屋に行く。
「分かってる事はこれぐらいだよ、他は今はなし。」
エルミナス王国の事を尋ねるが今以上の情報はない。
だがいつかは戻る日がくる、それまでに必要な情報を揃えるのだ。
「さて、では明日からの仕事に備えますか。」
そのころカリーユは剣を振っていた。
自分の身ぐらいは誰にも頼らずに守れるようになりたい。
その一心だった。
とりあえず今日はもう休む事にする。
シスシェナがその計画を確認し次の移動先の候補も絞り上げる。
そうしてエルスリート皇国での仕事が始まるのである。
その歪んだ正義の行く末は見えない。
それでも歯車は確実に回っている。
世界の敵になりそれでも悪を裁きへと誘い続ける。
その信念は決して曲がらないのである。
その歪な正義の旗印は人々に歓喜と恐怖を与えているのだから。
 




