~再会~
それから四日が過ぎた。
今街は大統領候補の逮捕で騒然としていた。
左翼の筆頭候補が逮捕されたとあり大統領選にも影を落とす。
それは誰しもが分かっている事だ。
「この大切な時期にやっちまうんだからな、怖い奴だ。」
カリーユはそんな現場を遠目に見ていた。
「あ、見つけましたよ、こんなところにいたんですね。」
「セファーナか、それにしても情報の出処が分からないな。」
それはセファーナだからこそ出来る手口でもあった。
今現在も誰にも教えていないその手口、それは極秘の技術だ。
「とりあえず戻ります…あれ?あれって…。」
「どうした?今更警察に見つかったとか言わないよな。」
「先に戻っていてください、あとから戻りますから。」
そう言ってセファーナは商店街の方に走っていく。
カリーユもこっそり尾行してみる事にした。
「あのっ、もしかして…ビスカスさんですよね…。」
「その声は…もしかしてセファーナかな?」
そこにいたのは懐かしい顔、共に王都まで行った顔だった。
「それにしても大変な事になってしまったね、君だけでも無事でよかった。」
懐かしい再会に心が晴れやかになる、だが簡単な話ではない。
「それにしてもこの国だけじやない、世界各地で謎の逮捕劇、どうなってるのかな?」
セファーナは知った顔であっても嘘を突き通す。
それは二度と引き返せない道へと進んだ因果でもあった。
「何者かが情報を密告しているみたいです、黒羽の使者なんて言われてて。」
それは顔色一つ変えずに言う嘘だった、やったのは自分なのだから。
「でもさ、悪人を消してその先はどうなるんだろうね。」
それはビスカスなりの考えでもあった。
悪人が消えても次が必ずある、決して切れない連鎖だ。
「私も戦争をする国に武器を売ってるよ、それは商売だもん。」
「それは分かってます、そうやって生計を立ててるのも。」
ビスカスは難しい顔で言葉を続ける。
「結局悪人だってそれが利益になるんだよね、世の中には必要悪がある。」
必要悪、それは世界にとって必要なものである。
それも武器商人という立場故に言える言葉なのだろう。
「だから私は悪人に消えてもらったら困るんだよね、それが稼ぎだもん。」
ビスカスの稼ぎは国に武器を卸す事。
それは悪人の存在が必要であるともいう事だ。
「でも私だって平和がいいよ、とはいえそれでも武器は売れるけどね。」
「そうですね、武器とは守るためにだって使えるんです。」
セファーナなりの武器に対する考えだった。
ビスカスもそれに対して優しく微笑む。
「君は優しい人だ、争いを好まない、それは同時に脆さでもある。」
「ビスカスさん…それでも私は…。」
そんな中セファーナはビスカスに相談を持ちかける。
「あの、今剣って在庫がありますか?出来れば私と同じサーベルで。」
「サーベル?確かにあるけど買ってくれるの?」
セファーナが彼女にそれを尋ねた理由は明白だった。
「ならこれをあげるよ、業物らしいんだけど売れない不良在庫だから。」
それはとても美しい銀色の刀身、一目で業物と分かる代物だった。
「それじゃあお金を…。」
「お金はいらないよ、言ったでしょ?不良在庫だって。」
こんな素晴らしいものを無料で譲ってくれるという。
悪い気がするが不良在庫だというのなら甘えておく事にする。
「分かりました…それならいただいておきます。」
「うん、それじゃ私は行かなきゃ、またどこかで会えるといいね。」
そういってビスカスはコートをはためかせ去っていった。
「知り合いか?」
「見てたんですね、人が悪いですよ。」
カリーユは最初から見ていたのだ。
「それでその剣はどうするんだ?お前には自前のものがあるよな。」
「これはあなたにですよ、そのためにもらったんです。」
つまりカリーユのために相談を持ちかけたのだ。
いつまでも市販の安物の剣では格好がつかないためだ。
「僕に…ならもらっておく、いいものは使わなきゃ損だしな。」
「はい、そうしてください。」
カリーユにも業物と分かるらしい。
そのあとは飛空艇に戻る事になった。
「お、お帰り、遅かったわね。」
シスシェナが迎えてくれた。
フェラナは相変わらず部屋でパズルをしているようだ。
「ええ、とりあえずこの国での仕事は終わりです。」
「そんで次はどこへ行くのさ、準備は万全だよ。」
「次はエルスリート皇国に行きます。」
次の目的地は工業の国エルスリート。
独自の技術が発展する工業国家だ。
「はいよ、そんじゃ出発は明日よ、今日は休みなさい。」
「はい、それではお先に。」
「そんじゃな、あんたもさっさと寝ろよ。」
そうして明日の出発に向け休みを取る。
運命は確実に歯車を刻んでいく、その先の正義を刻むために。
もう引き返す事は出来ない、その先に何が待とうとも…。
 




