表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/86

~再会~

それから四日が過ぎた。

今街は大統領候補の逮捕で騒然としていた。


左翼の筆頭候補が逮捕されたとあり大統領選にも影を落とす。

それは誰しもが分かっている事だ。


「この大切な時期にやっちまうんだからな、怖い奴だ。」


カリーユはそんな現場を遠目に見ていた。


「あ、見つけましたよ、こんなところにいたんですね。」

「セファーナか、それにしても情報の出処が分からないな。」


それはセファーナだからこそ出来る手口でもあった。

今現在も誰にも教えていないその手口、それは極秘の技術だ。


「とりあえず戻ります…あれ?あれって…。」

「どうした?今更警察に見つかったとか言わないよな。」

「先に戻っていてください、あとから戻りますから。」


そう言ってセファーナは商店街の方に走っていく。

カリーユもこっそり尾行してみる事にした。


「あのっ、もしかして…ビスカスさんですよね…。」

「その声は…もしかしてセファーナかな?」


そこにいたのは懐かしい顔、共に王都まで行った顔だった。


「それにしても大変な事になってしまったね、君だけでも無事でよかった。」


懐かしい再会に心が晴れやかになる、だが簡単な話ではない。


「それにしてもこの国だけじやない、世界各地で謎の逮捕劇、どうなってるのかな?」


セファーナは知った顔であっても嘘を突き通す。

それは二度と引き返せない道へと進んだ因果でもあった。


「何者かが情報を密告しているみたいです、黒羽の使者なんて言われてて。」


それは顔色一つ変えずに言う嘘だった、やったのは自分なのだから。


「でもさ、悪人を消してその先はどうなるんだろうね。」


それはビスカスなりの考えでもあった。

悪人が消えても次が必ずある、決して切れない連鎖だ。


「私も戦争をする国に武器を売ってるよ、それは商売だもん。」

「それは分かってます、そうやって生計を立ててるのも。」


ビスカスは難しい顔で言葉を続ける。


「結局悪人だってそれが利益になるんだよね、世の中には必要悪がある。」


必要悪、それは世界にとって必要なものである。

それも武器商人という立場故に言える言葉なのだろう。


「だから私は悪人に消えてもらったら困るんだよね、それが稼ぎだもん。」


ビスカスの稼ぎは国に武器を卸す事。

それは悪人の存在が必要であるともいう事だ。


「でも私だって平和がいいよ、とはいえそれでも武器は売れるけどね。」

「そうですね、武器とは守るためにだって使えるんです。」


セファーナなりの武器に対する考えだった。

ビスカスもそれに対して優しく微笑む。


「君は優しい人だ、争いを好まない、それは同時に脆さでもある。」

「ビスカスさん…それでも私は…。」


そんな中セファーナはビスカスに相談を持ちかける。


「あの、今剣って在庫がありますか?出来れば私と同じサーベルで。」

「サーベル?確かにあるけど買ってくれるの?」


セファーナが彼女にそれを尋ねた理由は明白だった。


「ならこれをあげるよ、業物らしいんだけど売れない不良在庫だから。」


それはとても美しい銀色の刀身、一目で業物と分かる代物だった。


「それじゃあお金を…。」

「お金はいらないよ、言ったでしょ?不良在庫だって。」


こんな素晴らしいものを無料で譲ってくれるという。

悪い気がするが不良在庫だというのなら甘えておく事にする。


「分かりました…それならいただいておきます。」

「うん、それじゃ私は行かなきゃ、またどこかで会えるといいね。」


そういってビスカスはコートをはためかせ去っていった。


「知り合いか?」

「見てたんですね、人が悪いですよ。」


カリーユは最初から見ていたのだ。


「それでその剣はどうするんだ?お前には自前のものがあるよな。」

「これはあなたにですよ、そのためにもらったんです。」


つまりカリーユのために相談を持ちかけたのだ。

いつまでも市販の安物の剣では格好がつかないためだ。


「僕に…ならもらっておく、いいものは使わなきゃ損だしな。」

「はい、そうしてください。」


カリーユにも業物と分かるらしい。

そのあとは飛空艇に戻る事になった。


「お、お帰り、遅かったわね。」


シスシェナが迎えてくれた。

フェラナは相変わらず部屋でパズルをしているようだ。


「ええ、とりあえずこの国での仕事は終わりです。」

「そんで次はどこへ行くのさ、準備は万全だよ。」

「次はエルスリート皇国に行きます。」


次の目的地は工業の国エルスリート。

独自の技術が発展する工業国家だ。


「はいよ、そんじゃ出発は明日よ、今日は休みなさい。」

「はい、それではお先に。」

「そんじゃな、あんたもさっさと寝ろよ。」


そうして明日の出発に向け休みを取る。

運命は確実に歯車を刻んでいく、その先の正義を刻むために。


もう引き返す事は出来ない、その先に何が待とうとも…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ