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~激怒~

フィクサリオ公国を旅立ってから一週間が過ぎていた。

今セファーナ達はエルネラ公国に来ている。


「いい空気ですね、これなら仕事も捗りそうです。」


セファーナはそう言って体を伸ばし力を抜く。

一方のカリーユにも仕事の事を教えるつもりでいた。


「それはそうとさ、あんたどうやってやるつもりよ?」


シスシェナは不思議そうにそれを問う。

そもそも情報がそんな簡単に手に入るのかという疑問があった。


「そこは私にお任せを、しくじったりはしません。」


セファーナの顔は平静ながらも自信があるように見えた。


「まあいいわ、ならあたしは逃走経路確保しとくから好きにしなさい。」


そう言ってシスシェナは別行動を取る。

セファーナとカリーユはとある目的のためある場所へ向かう。


二人がやってきたのは路地裏にある、所謂いわゆる闇酒場である。

ここである目的を果たすためにきた。


「すみません、少しいいですか?人を紹介してもらいたくて。」


セファーナは酒場のマスターに人を斡旋してもらうつもりらしい。


「ならなにか飲み物を頼みな、そうしないと話は聞けないぜ。」


闇酒場では当然のルールだ。

周囲の席で酒を飲むのは裏世界の人間や屈強な戦士達ばかりである。

その目は華奢きゃしゃなセファーナを笑うように見ていた。


「ではミルクをもらえますか?お酒は飲めないので。」


その言葉に周囲の客達から馬鹿にしたような笑いが飛ぶ。


「姉ちゃん、ミルクって馬鹿かよ、それなら家に帰ってママに頼みな。」


それにカリーユがムッとした声で返す。


「セファーナは酒に弱いんだよ、飲めないんだからいいだろ。」

「あん?なんだこのガキは。」


体格のいい男がカリーユに顔を近づける。

そして次に言い放った言葉はその場を凍りつかせる。


「こいつハーフエルフじゃねぇか!それこそお断りってもんだろ!」


周囲もそれにざわつき冷たい視線を飛ばしてくる。


「それでミルクですね?」

「はい、高いもので構いませんよ。」


そんなとき別の男が絡んでくる。

ハーフエルフは差別されて当然、そんな認識が世界には根強く根付いている。


「ならこの薄汚いガキをなんとかしろよ、それとも俺が始末してやろうか?」


その言葉にセファーナは反応する。


「ふぅ、あなた達本当に小物ですね、カリーユに勝てるとでも?」

「あん?俺様がこんなガキに負けるかよ。」

「なら襲いかかって構いませんよ、ただし相手は私ですが。」


セファーナは相手を挑発する、男もそれに煽られ斧を振り下ろしてくる。


「いい気になってんじゃねぇぞ!このクソアマ!」


それはまさに刹那だった。

相手が斧を振り下ろしたときにはすでに背後に回り剣が首元に突き付けられる。


「チェックメイトです、なにか異論はありますか?」


周囲はその一瞬の出来事に凍りついていた。


「あと、私は差別が大嫌いです、もう一度口にしたら今度は…殺りますよ?」


笑顔の中に凄まじい怒りを感じ取った客達。

カリーユも死を覚悟するレベルに恐怖していた。

もちろん単なる脅しであり本気で殺ろうとは微塵も思っていない。


「それで人を紹介してほしいんですが、いいですね。」

「は、はい!どんな人を!」


そうしてセファーナはマスターに言われた場所へ向かう。

そこにセファーナの提示する条件に合う人がいるそうだ。


「ここですね、すみませーん!誰かいますかー!」


すると中から人が出てくる。


「あんた誰?うちになんの用だよ…。」

「あなたをスカウトしにきました、一緒に仕事をしましょう。」


その言葉にその女性は気だるげに答える。


「あんた何様?あたしは働きたくなんかないよ。」

「あなたは情報の解析と処理能力に優れていると聞いたので。」

「その事か、確かにそっちは優秀だけど働くなんてご免被るね。」


それでも引かないセファーナ、さらに言葉を続ける。


「あなたの過去も知っています、だからこそですよ。」

「…どうやって調べたか知らないけどさ、それ脅迫でしょ。」

「いいえ、交渉です、交渉は話術ですから。」


その後もうまい言葉で説得を試みる。

そしてついに折れたようだった。


「はぁ、もう好きにしなよ、一緒に仕事すればいいんでしょ。」

「はい、そうですよ、フェラナ・レイゼルパリスさん。」

「名前は知ってたか、それで何をすればいいのよ。」


仕事については飛空艇で説明をする事に。

フェラナを仲間にし飛空艇に戻る。


飛空艇ではシスシェナも戻っていた。

フェラナに仕事の説明をするセファーナ。


「なるほどね、あたしの過去を知ってそれでまたやれってか。」


フェラナは過去に国の研究機関で内部告発をして追放されている。

その腕を買ったのだ。


「はい、構いませんね?」

「好きにしな、あたしもそれに賛同してやるからさ。」

「それじゃよろしくな、フェラナ、僕はカリーユだ」


そう言って自己紹介を済ませる。

フェラナを仲間にした一行はこの国での仕事に向けて始動する。


それは歪な正義の鎌が振り下ろされる瞬間だ。

ターゲットを見定め歪んだ正義が闇から見つめる事となる。


それは始まりであり本格的に太陽が陰り始めるその瞬間でもあった。

終わりの始まり、発端となる仕事の始まりである…。

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